石井 信和 院長の独自取材記事
整形外科いしいクリニック
(常滑市/西ノ口駅)
最終更新日:2022/12/16

赤茶色の外壁とやわらかな曲線を描く外観が印象的な「整形外科いしいクリニック」。石井信和院長が、整形外科のニーズの高い地元・常滑市の健康寿命を延ばしたいと、2019年4月に開院した。患者の話にじっくり耳を傾け、患者のニーズに最大限寄り添うような院長の姿勢からか、開院間もないにもかかわらず、多くの患者が来院しているという。適切な治療に加えて一人ひとりに合ったリハビリテーションを提供し、患者の健康寿命を最大限延ばしていくことをめざす石井院長に、地域医療への熱い想いを語ってもらった。
(取材日2019年4月25日)
その時その時にやるべきことを積み重ねて開業へ
医師になったきっかけを教えてください。

実はもともと僕はコンピューターに興味があったんです。なので現役の時の大学受験では情報工学部系の学部を受けたのですが、希望した名古屋大学に合格できず、浪人しました。これからは大学を卒業するだけでなく、何か資格を取得すべきだと予備校の友人とも話をしていました。予備校に入り最初の模試が思ったより良かったものですから、せっかくだから頑張って医学部を受けようかなと思い、希望を医学部へ変更したんです。僕の家は親が公務員ということもあり、学費の高い私立ではなく国公立の医学部を狙いました。国公立の医学部は非常に難しく、結局2浪してしまいましたが、何とか合格して医学の道を進むことになったんです。
もともと開業を考えていらっしゃったのでしょうか?
いえ、僕は最初から開業を意識していたわけではなく、その時その時自分がどうすればいいかということを考えて動くうちに開業していた感じです。研修医として最初は、基本的な教育にも力を入れてくれる病院がいいと考え、協立総合病院に就職しました。その後、地元の常滑市民病院が新しく建て替えるにあたり、常勤医師が不足していることを知り、そちらに移りました。整形外科の医師として、その時その場で自分にできることが多いのではないかと思ったんです。その頃の市民病院の整形外科は、地元の患者さんが受診しない状態。そこからがむしゃらに体制を整え、研修医の力も借りながら2年で多くの手術を行えるような状態にしました。そうした経験の中で、入院になる前の予防としての診療をしていきたいと思い、開業を考えるようになりました。
勤務医時代から骨粗しょう症の治療に熱心に取り組んでこられたそうですね。

整形外科の医師として仕事をしていると、入院して右足を手術して退院して、すぐに左の足を骨折して再入院といった人も少なくなかったんです。はじめに勤務をしていた病院では、外来に力を入れていて、術後の患者さんに骨粗しょう症の治療を積極的に行っていました。そういった中で、自分も自然に骨粗しょう症の勉強をしていくと、骨折の治療だけでなく、予防にも力を入れたほうがいいのではないかと思うようになりました。骨折を減らすことで、健康寿命を延ばすことが大切だと考えています。
言葉の裏に隠れた本当のニーズをくみ取る
診察するにあたって心がけていることは?

わかるように説明をすることが何よりも大切だと思っています。それから、患者さんのニーズをくみ取ってそれに対してしっかり応えること。特に初診の方は、しっかりと時間をかけてお話を聞きます。例えば首が悪く、手術をするかしないか悩まれて来院する患者さんがいらっしゃることもあります。その場合、なぜ手術についての相談なのに、手術をしない当院へ来られたのか。その想いをしっかりと把握して対応することが大切だと思います。医療としてどんな治療が一番いいかということは考えてやらなくてはいけないのですが、まずは患者さんの言葉に耳を傾けて、「何を求めて来られているのか」をしっかりと探ることを重視しています。
患者さんの要望に合わせて、詳しいご説明をされているんですね。
耳が遠くてこちらの言っていることが理解がしづらいご高齢の患者さんがいらっしゃることもあります。いろいろ説明しても、耳が聞こえにくく「私はわからないので」とおっしゃる。今日どうやって来たのですかと聞くと、「家族に送ってきてもらった」と。今は隣のドラッグストアで買い物をしながら待っているとおっしゃるので、「じゃあこちらに来てもらって、結果を一緒に聞いてください」とすることもあります。そこから時間をかけて今の状態がどうなっているのか、なぜこういう骨の検査をしようとしたのか、といったお話をご家族にすることも。こうやって、ご高齢の患者さんの診療では、患者さんご本人だけでなくご家族にも症状や治療内容を説明し、納得していただくようにすることが多いですね。治療にはご家族のサポートも大切です。また、ご高齢の方にはご家族が同居されているのか、近くに助けてくれるご家族がいるのかどうかを確認するようにしています。
開院したばかりですが、こちらの患者層はどのような感じですか?

中部国際空港が開港した頃から、どんどん宅地が開発され、若い世代も増えてきました。もちろん、以前からお住まいの高齢の方も多く通ってくださっています。市民病院の頃からの患者さんもたくさん通ってくださっていてありがたいですね。先ほども言ったように、一人ひとりに詳しく検査の結果をご説明することもあって、現在待ち時間が長くなってしまうこともあり、申し訳ない気持ちもあります。ご理解いただいて通ってくださる患者さんには、いつも感謝しています。幅広い年代層のいる地域であり、整形外科の需要はこれから先も大きいと思っています。
適切なトレーニングで骨粗しょう症を予防
こちらではリハビリテーションにも力を入れていらっしゃるとお聞きしました。

リハビリテーションで筋力をつけることはとても大切なんです。もちろん筋力低下だけの問題ではなくてほかに原因があることもあるのですが、膝の場合は筋力低下や肥満が原因の大きなウエイトを占めています。リハビリテーションを頑張って筋力が上がることで、「前の先生に手術するしかないと言われてここへ来たが、これくらい痛みが軽減したなら手術を受けたくない」という方が結構多いんです。もちろんどうしても必要な場合は手術をしなければいけませんが、体の負担を考えても手術を回避できるならそのほうがいいと思います。高齢化が進む現代、若い人の負担を増やしていかないようにするために、僕がやるべきことは、医療費のかかる手術を減らすために予防をしていくことだと考えています。
予防のためには、どういったことをすればいいのでしょうか?
骨折を減らすために骨粗しょう症の治療をしますが、そもそも筋肉をつけて「転倒予防」をすることがその中心になります。転倒予防に大切なのは、高齢者になってから始めるのではなく、40代~60代など若い段階から正しいトレーニング方法を身につけることです。膝なんかは特にそうですけど、生体力学的には大腿四頭筋の筋力が上がることで、体重が内側にかかっていたのが外側にも荷重がかけられるようになって、筋力強化をすることで痛みが減ることが期待できるんです。また、人工関節を入れる治療を希望される方が増えていますが、手術では当然筋肉も切ることになるので、結果、大切な筋力も落ちてしまうんです。手術をするしないにかかわらず、筋力トレーニングは必要だと思っています。
今後の展望をお聞かせください。

今、当院には理学療法士が1人だけなのですが、将来的には3~4人に増やし、スポーツジムのようにパーソナルトレーニングのようなことを始められたらなと思っています。理学療法士によるアドバイスを行ったりチェックを行ったりと、通常の医療のリハビリテーションではカバーできない部分までカバーできるようなパーソナルトレーニングをいつかしたいですね。リハビリテーションを充実させていくことで、転倒予防や骨粗しょう症の予防をし、地域の健康寿命を延ばしたいです。