池田 勝紀 院長の独自取材記事
アイデス・クリニック
(港区/高輪台駅)
最終更新日:2026/05/12
発達障害の子どもとその家族を支援する「アイデス・クリニック」は都営浅草線・高輪台駅より徒歩4分に位置する。院長の池田勝紀先生は、救命救急センターで精神トラブルが原因で搬送される患者を診た経験から、発達障害の早期治療の重要性を実感。子どもの発達支援に転向し研鑽を積んだ後、2018年に同院を開業。「特性のある子どもが世の一隅を照らせれば良いと思います」と優しく語る池田院長に、同院で取り組む支援内容や親へのフォローの重要性について詳しく聞いた。
(取材日2026年4月9日)
グレーゾーンの患者も広く支援していく
2018年の開業からどのような変化がありましたか?

開業当初より患者さんへの支援の幅が広がりました。発達障害は特性がわかりやすく診断がつきやすい場合と、グレーゾーンのため診断がつきにくい場合とがあります。開業当初に比べグレーなお子さんに対する診療の幅が広がった他、併設の児童発達支援・放課後等デイサービス施設を利用しているお子さんに対しても情報を伺いアドバイスするなど患者さんへのより包括的な支援ができるようになりました。さらに併設施設内で毎月1回こども食堂を開催し、お子さんや親御さんに利用してもらっています。そこでは食事だけでなくワークショップも行っています。開業してから強く感じるのは親御さんへのフォローの大切さです。親御さんの中には過労や栄養状態があまりよくない方も多く、精神面と身体面を支える必要があるため、親御さんの面談も行っています。当院は一般内科も診られるため、必要な際には血液検査などを行い身体面のフォローも行っています。
現在どんなことに取り組まれているか教えてください。
主なものが4つあり、1つ目は投薬と栄養・療育の指導、2つ目は日常生活の助言と、子どもの特性と必要な支援を学校に伝えるサポート、3つ目が療育を受けるための手続きの支援という行政への橋渡し、4つ目が併設の児童発達支援・放課後等デイサービス施設での療育活動です。栄養の指導についていうと、栄養の充足は脳の機能向上を支えるため、食事を改善しきちんと栄養を取ることが大切なのです。また腸内環境の改善も脳の機能と関わっているので、善玉菌を増やすために整腸剤やプロバイオティクス配合剤を使用することもあります。お子さんの状態と家族のニーズに合わせ、どういうアプローチを行うかをご家族と話し合って決めています。これらに加えて、今後は就労支援であったり、後見人などの財務的な相談窓口を探すことも含めて、生涯を通したサポートがしていける体制を整えていきたいと考えています。
このクリニックを開業された理由を教えてください

以前、救命救急センターで勤務していた時に、精神的なトラブルが原因で自傷行為に走り搬送される患者さんを多く見ました。発達障害の支援を受けられなかったことでうつ症状などが悪化し、自殺を図る、他傷行為に走る、状況に耐え切れず親が子を刺すという悲惨なケースもあります。発達障害を早期にケアすることで、そのような状況の発生を防ぐことが望めるのです。また社会で発達障害の認知が進み患者が急増したのに対し、医師の数は不足しています。専門の医師にかかるには数ヵ月待ちも珍しくないという現状の中で、お子さんや親御さんが身近に悩みを相談できる医師が必要と感じ、プライマリケアを中心としたこのクリニックを開業しました。子育ては毎日のことなので、気軽に当院を頼っていただきたいと思っています。
失敗しても再チャレンジできるしなやかな強さを
診療で大切にしていることは何ですか?

防御(プロテクト)・排泄(デトックス)・投与(プロバイト)を診療の柱としています。防御・排泄とは、例えば鉛は体内に取り込まれると脳の機能低下につながるのですが、来歴のわからない外国製の玩具などには鉛入りの塗料が使用されていることもあるので、そのようなものを避ける指導などです。また子どもの外部環境を整えることもこれに含まれます。投与とは、栄養指導や薬の処方などを指します。これら3本の柱に加えて、子どもが安全に失敗できる状況をつくってあげることを重視しています。さらに最近特に大切だと感じていることが「聞くこと、理解すること、つくること」です。具体的には患者さんとご家族の話をよく聞き、抱えている問題を理解し、その問題を踏まえた上で患者さんやご家族、スタッフとともに対応策をつくっていくことです。
親御さんはお子さんのどんな様子が気になって来院されますか?
未就学児童だとなかなか言葉が出ない、衝動性が強くじっとしていられないなど、就学後だと朝起きられず不登校になる、成績が伸びない、友人とけんかになってしまうなど来院の理由はさまざまです。気になる状態は様子を見ているうちに良くなる例もありますが、良い変化を待ち続けることは親にとってはストレスです。何となく育てにくい、気になるところがあるなどの段階で来院してもらうのが良いと思います。当院では週に1度心理士が来て外来に同席し助言を行ったり、心理検査を行ってもらい、その結果を受けどのような支援が必要かを考えます。患者さんによっては受験を頑張りたいという理由で、その時期だけ当院の栄養指導を希望されるケースもあります。
治療のゴールを教えてください。

治療を通して「自己肯定感・自己効力感・レジリエンス」と、「愛される力」を身につけていくことが重要です。自己効力感とは「僕ならできるよね?」という思いです。この思いがないと物事へのチャレンジは難しい。自己効力感は挑戦し続ける力となり、仮に失敗しても「今回できなかったけど、次はできる」と思えるのです。レジリエンスは失敗などストレスのある状態から立ち直る力です。人間は失敗せずに生きていくことは不可能です。失敗から立ち直ることは筋力トレーニングと同じである程度の負荷がかかりますが、その負荷から立ち直ることを繰り返せるようになることが重要です。これら3つのことが養われると人に愛される力も伸びていくと思います。時間を守るなどの常識を身につけることも人に愛される要因になりますね。最終的なゴールは、彼らが自分の力を生かせる場に就労できることですね。
それぞれが持つ才能で、世の一隅を照らしていく
診療以外ではどんなことをされていますか

毎週土曜日には併設の施設で、私と私の空手の師匠とで発達障害の子どもを対象に空手を教えています。療育には運動も重要ですし、子どもたちには生き生きと過ごしてもらえればと考えています。この教室を開始して5、6年になりますが、皆お互いに支え合いながら楽しくやっています。他にも啓発活動の一環で、発達障害についての解説動画の作成や、一般の方向けの講演会も行っています。先日の世界自閉症啓発デーでも講演会を行い、そこでも親御さんへのフォローの大切さをお話ししました。
今後の目標と、発達障害を取り巻く理想の環境をお聞かせください。
目標は3つあり、まずは今行っている支援事業を拡充し、支援の幅を広げること、次に発達障害の早期診断のためのバイオマーカーの研究、最後は発達障害の早期治療に際し、現在よりも負荷の少ない治療の研究と実現です。バイオマーカーについては実用まで持っていくことが目標です。また負荷の少ない治療については、現在よりもう少し簡易的なアプローチもできたらと考えてのことです。理想の環境については、発達障害を治す治さないに関わらず特性のある子どもが社会で楽しく生きられることですね。一人ひとりが持っている才能で世の中の一隅を照らせたら良いなと思います。発達障害のある子の中には素晴らしい才能を持った子もいれば、特に才能がなくてもとても優しい子もいます。そのようなそれぞれの能力で社会を照らしてくれるのが願いです。
悩みをお持ちの親御さんへ、メッセージをお願いします。

お子さんが発達障害と診断されても人生が終わるわけではなく、やりようはあるのです。診断のつかないグレーゾーンだからこそできる支援もたくさんあります。ご家族によって異なる「やりよう」をご家族と私たちとでつくっていくことが重要です。最初にお話ししたワークショップでは、当院の卒業生が講師を務めるケースもあります。発達障害のあるお子さんもいろいろな可能性があるのです。またお子さんの人生同様、親御さんの人生も大切です。お父さん、お母さんも人生を楽しめるようになるために、私たちスタッフ一同でお手伝いをさせていただきます。もやもやすることがあればとにかく気軽に相談してみてください。

