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伊藤 英樹 院長の独自取材記事

神経内科クリニック

(豊中市/岡町駅)

最終更新日:2019/08/28

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大阪国際空港の一部を抱え、新大阪・尼崎など大阪中心部のベッドタウンでもある豊中市。1950年代に造られた千里ニュータウンが市内の一角を占め、医療面でも高齢化対策が求められるこの地域で、2008年に開設されたのが「神経内科クリニック」だ。高齢者に多い神経内科の難病に特化し、在宅医療が中心のため、看取りの役割を果たすことも少なくない。だからこそ、苦しみを和らげるための緩和治療や、コミュニケーションを重視する診療方針を貫いてきた。患者の人生が最後まで充実したものであるようにと、診療を支える医療スタッフも日々の研鑽を欠かさない。院長を務める伊藤英樹先生の「難病イコール不幸とは思わないでほしい」という言葉が印象に残るインタビューとなった。
(取材日2019年2月18日)

診療開始前の段階で、時間をかけて話を聞く

訪問診療中心のクリニックは、まだまだ少ないですね。

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当院は神経内科の難病に特化しており、さらに訪問診療が中心なので、確かにあまりないかもしれません。毎週火曜日だけ外来診療も実施していますが、予約制になっています。クリニックでは検査できる内容も限られてしまうため、外来の患者さんについては診察の結果を踏まえて大きな病院を紹介し、診断を確定してもらう場合が多いです。逆に、当院で継続して治療している患者さんは、大きな病院で診断を受け、病名もわかっている方が多いです。家の近くで治療を受けたい、外出がつらいので訪問診療を受けたいという患者さんやご家族から相談を受けたり、病院から紹介されたりという形です。

中年までの世代にはなじみの薄い診療科目と思われますが、どのような訴えの患者さんが多いのでしょうか?

神経内科の難病は患者さん自体が少ないので、現役世代の方にはピンとこない方も少なくないでしょうね。症状としては歩きにくい、手足を動かしにくい、体に力が入らない、しびれがあるなどの訴えで、年齢的には70代以上の方が中心です。病名でいえば、パーキンソン病やALS(筋委縮性側索硬化症)、認知症などの治療の難しい病気ですね。在宅の患者さんは、神経難病が全体の5割弱、認知症が4割くらい、あとは脳梗塞などの脳血管疾患、がんの末期で在宅診療を受けたいという患者さんなどがそれぞれ数パーセントくらいです。 

診療の流れを教えてください。

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まずは患者さん本人またはご家族から、お電話をいただきます。受付の担当者がお話を伺った後、医師や保健師、看護師など適切な相手につなぎます。その結果、どういう治療が必要になりそうか、訪問診療が必要か、外来通院でも大丈夫そうかなどを判断し、ご説明します。当院は訪問診療が中心になりますので、お電話の段階でも可能な限り時間をかけ、担当の保健師が生活背景、環境などを伺うようにしています。診察が開始した後の日常的な体調の相談はできる限り医師が対応するようにしています。訪問時の体制は少なくとも医師と看護師1人ずつ、診療にかかる時間は20分から1時間くらいですね。在宅の患者さんに対しては、疾患ごとの治療と併せて、気管カニューレ、胃ろう、経鼻経管の管理、在宅酸素療法や人工呼吸器の管理、膀胱留置のカテーテルの管理なども行います。当院のスタッフ構成は、現在は医師4人、保健師1人、看護師5人です。

医学生時代の経験が今の診療スタンスにつながっている

診療方針について教えてください。

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患者さんやご家族とのコミュニケーションを十分にしたいと考え、そのために医師1人あたり1日の訪問件数は7軒程度に抑えています。一般的な訪問診療よりも少ないと思いますが、1家庭あたりの時間を十分に取れるようにという方針です。難病の患者さんは医療的処置が多くなる上に、介護するご家族の疲労も時間を追うごとに大きくなるものです。患者さんだけでなく家庭生活全体を見て、ご自宅で十分な介護は無理なのではないかと判断したときには、入院や施設入所をお勧めすることもあります。訪問診療は患者さんの生活が見えるので、患者さんとご家族の生活が成り立っているのかを常に念頭に置いています。立ち入ったことと感じる方もいるかもしれませんが、難病の方はまず介護が必要で、その上で初めて医療ができるので、生活が成り立たなければ医療もできないんです。

スタッフの研修も頻繁に行われているようですね。

院内研修は少なくとも月に1回、院外研修も年に2~3回以上、症例研究やカンファレンスにも力を入れています。内容は、神経難病に対する知識を得ること、患者さんやご家族の意思確認の方法を学ぶなどですね。訪問診療をしていると、患者さんとご家族の意思が違うことに気づく場面も多いのですが、基本はまず患者さん本人の意思を確認し、ご家族とどう調整していくかという順番になります。どういう医療を受けたいか、最期はどこで迎えるかというテーマになりますので、コミュニケーションが重要になります。地域医療の観点からも、医師不足となりつつある中、スタッフのスキルを上げることで在宅診療のレベルを上げていきたいという考えもあります。

ところで、先生が神経内科の在宅医療を専門に選んだのはなぜですか?

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僕は大阪で生まれ福岡で育って、福岡の産業医科大学に進みました。医学生時代、近隣にALSの方が住んでいて、大学に介護ボランティア募集の話があったので半年ほど通ったことがありました。この時に在宅介護の現場と現実を目の当たりにしたんですね。吸引処置や気管切開後のケア、ガーゼの交換の要望など、言葉が話せなくなった患者さんが合図してくれて、コミュニケーションをとるんです。すごく大変で貴重な経験でしたが、振り返ってみると、この時の経験が今の仕事につながっていると思います。医師となってからは、企業に勤める人々の健康管理を担う医師として働きました。その後、当院理事長との出会いもあり、自分のめざす医療と近いと在宅医療に魅力を感じました。在宅医療に向けた経験を積むため、豊中市内の病院で勤務した後に、入職することになりました。

難病は必ずしも不幸ではなく、発見や喜びもある

印象に残っているご経験を教えてください。

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高齢の患者さんが多い訪問診療なので、ご自宅での看取りはよくあるのですが、若くして亡くなられた方はやはり印象が強いです。うちの子どもたちと同じ年頃のお子さんのいる難病の患者さんを、最後は呼吸器をつけて、ご家族が見守る中で看取ったこともあります。この患者さんは、お子さんに病名を伝えないでほしいという意志が固く、僕もスタッフもお気持ちを尊重し、当然ですが約束を守りました。医師としてというより一人の人間として、患者さんの思いを果たすために役に立てただろうかと、今も考えることがあります。看取りというのは、ご家族も医療者もどんなに力を尽くしても、絶対に後悔が残るものと思います。だからこそ環境を整えて、少しでも苦しくないように、大切な人たちに見守られながらその時を迎えてもらえるように、力を尽くしていきたいです。

お忙しい中、休日はどのように過ごされていますか。

若い頃から、自分自身が強くないと人に優しくなれないと考えてきたので、強くありたいと思っているんです。それと運動不足の解消を兼ねて、子どもが通っている空手教室で、僕も週に何回か練習をしています。空手を始めて精神的に強くなったかはわかりませんが、肉体的には変わりましたね。筋力がついたので、患者さんの体を持ち上げる際などに役立っています。メンタルの切り替えは運動が一番いいかなと思いますね。

最後に、読者にメッセージをお願いします。

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神経内科の難病は、診断時から緩和治療が始まるといわれるほど厳しいものが多いだけに、患者さんもご家族もショックを受ける方が少なくありません。将来が不安になり、不幸になると思われがちですが、難病イコール不幸ではないと知っていただきたいです。心の持ち方で乗り切れるよという話ではなく、病気になることでこれまでと違ういろいろな人と関わり、新たな発見や生きる喜びが得られるのを見てきたからなんです。家族や友人など周囲との信頼関係が深まったり、仕事に対する向き合い方が変わったりすることもあるでしょう。この地域には、本当に心優しいスタッフばかりなので、親身になって話を聞いてケアしてくれる人が多いです。医師たちも、できるだけ痛くないように、苦しまないように、安心して温かい気持ちで過ごせるように工夫しています。まだ十分とはいえませんが、利用可能な支援もありますので、ご相談いただきたいと思います。

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