河野 琢磨 院長の独自取材記事
こうの歯科
(徳島市/徳島駅)
最終更新日:2024/07/01
徳島県徳島市、住吉島川のほとりに立つ白と青が爽やかな建物が「こうの歯科」だ。院長の河野琢磨先生は「誰にも痛い思いや悲しい思いをしてほしくない」という願いのもと、予防歯科の大切さを患者たちへ訴え続けている。その強い思いが生まれるきっかけになったのは、幼少期の忘れられない体験なのだという。決して諦めることのない誠実な姿勢が印象的な河野院長。そんな内に秘めた情熱からは意外とも思える、ほがらかで謙虚な人柄も、地域の患者から慕われる理由だろう。河野院長の診療にかける熱い思いについてじっくりと話を聞いた。
(取材日2024年6月10日)
「痛い思いをさせないために」。予防歯科に尽力
先生は現在、予防歯科に力を注いでいらっしゃるとお聞きしました。
歯科の疾患は痛くなる前に予防する、ということが一番ではないかと思います。どうすればこれが伝わるんだろう、次につなげていけるんだろうということはずっと考えています。ただ、以前であれば「子どもの歯が悪いようなので診てください」と、歯の異変に気づいてから来院される保護者の方も多かったのですが、今は何もなくても予防のために来てくださる方が増えたように感じます。1歳6ヵ月健診や3歳児健診などの保健指導で「予防するために動いていきましょう」と啓発する場が多くなったり、僕らも歯科医師会などで呼びかけをしていることもあり、その成果もあるのかもしれません。痛みなく生活をして、健康的に食事を取れるということ。その一助になれれば幸せですね。
子どもの頃から予防の意識を持つことは大切なことなのですね。
そうですね。まだ歯磨きの時間を設けていないという小学校もあるようですが、非常に危機感を覚えます。小学生のうちからたとえ10分ほどでも歯磨きの時間を取り、そのルーティンをつくってあげることが子どもたちの生活には大事だと思うんです。昼食後に歯磨きをしないことが習慣になって、中学校、高校、大学と、それが普通になっていけば、いずれは虫歯、歯周病へとつながっていくでしょう。少しの行動でそれを予防していけるのではないかと思いますが、できていない学校があるのは歯がゆいです。現在、日本歯科医師会が勧める歯磨きの仕方ではフッ素入りのジェル歯磨き剤を使い、ゆすぐのは1~2回弱程度。口の中のフッ素濃度をできるだけ残しましょう、とされています。それを小学校でも提示していただき、さらにクリニックへ来てくれる子どもたちにもそれを伝えていく、というように今は啓発しています。
予防方法は年齢によっても異なるのでしょうか。
生まれたての赤ちゃんと高齢の方では治療がまったく異なるのと同じように、例えば0歳のお子さんと2歳のお子さんでも予防のために気をつけることはまったく違います。ライフステージに即した予防や治療の方法を常に考えていく必要があるんですね。さらには患者さんそれぞれの生活やバックグラウンドまでを見ながら考えていけると、より治療もスムーズになっていくので、そこまで深く話を聞いていくことも大事だと思っています。今後はより詳しく生活習慣の指導などもできるよう、勉強を重ねているところです。
何があっても諦めない姿勢を貫く
先生が診療の中で大切にしているのは、どのようなことでしょうか。
患者さんの話をよく聞くことです。例えば、患者さん本人が本当に痛いのはどの歯なのかわからなくなってしまうことがよくあります。体を正中で分けた場合、同じ側にある歯では上下どちらに症状があるのかわからないことは多いですし、特に前後の歯にいたっては本当にわかりにくい。でもそこでよく話を聞いていくと「こんな食べ物を食べた時に痛かったな」とか「噛んだ時は痛いけど、しみたりはしないな」とか、そういった細かいところから、ひもといていけるんです。そこから詳しく診察していくことで良質な治療につながると思います。ただ、歯科医院を怖がっている患者さんはなかなか話してくれないので、そこはコミュニケーション能力を最大限に生かして、少しでも話しやすくなるよう努力します。患者さんの話が一番のヒントですから。
診療の中で難しいと感じることはありますか。
今はインターネットでたくさんの情報を引き出せるので、いろいろなことを調べてからいらっしゃる患者さんがいるんですね。それを頭から信じて来る方もいますので、間違いだった場合、それを伝えるのは本当に難しいものなんです。「これはこの症状に全部あてはまるからこうだろう」と思っている患者さんを頭ごなしに否定したとしても、絶対に受け入れてもらえない。なので「その疑いもあるので、こういう検査をしてチェックしてみましょう」などとうまく伝えないと、なかなか正しいほうへ誘導できないことがあります。また歯周病の場合、腫れるとか血が出るとか、何か症状があれば皆さんいらっしゃいます。ただ、歯周病は糖尿病などと同じ慢性疾患に該当するものなので、症状がなく進行する場合もかなり多いです。ですので、エックス線画像や細菌に関するデータなどをしっかり見てもらい、一から百まできちんと説明することで理解してもらうようにしています。
コミュニケーションをはじめとして、先生は根気強く物事に取り組まれる方だという印象を受けました。
診療において話を聞くこともそうですが、もしも僕が諦めたら患者さんの歯も歯茎も駄目になってしまいます。例えば、他の歯科医院から来られるセカンドオピニオンの患者さんや、さらにサードオピニオン、フォースオピニオンといった方も歯科ではまれではありません。そういう方は本当に悩んで悩んで来られるわけです。そんな時も患者さんの話をしっかり聞いて、考え得る可能性を最大限に引き出そうとします。また、根管治療という歯の細い根っこの治療がありますが、外から見えない部分なので実は途中で諦めてしまえばそこで終えることもできるんです。でも諦めずに、とことん治療を続けると根の最後まで除去をめざせることがあります。とにかく何事も諦めずにやってみる。どうしても駄目なこともありますが、その場合はきちんと伝えて他の方法へ導いていけるといいと思います。僕が諦めたら、それですべて終わりですから。
夢中になれる力を歯科医師の仕事へ
先生が歯科医師をめざされたきっかけについて教えていただけますか。
子どもの頃、飼っていた猫の顔がだんだんと崩れていって死んでしまったことがあったんです。獣医さんには「歯周病が原因じゃないか」と言われましたが、僕の父は歯科医師ですから「歯周病でこんなふうになることはない」と。子ども心に「何が本当なのかを知りたい」と思ったのがきっかけでした。それまではイルカの調教師になりたいと思ったり、獣医さんになろうと思っていたりした時期もありましたが、父と同じ歯科医師をめざすようになりました。「もし歯周病で本当に大変なことになるのなら、人間もそうならないようにしないといけないんじゃないかな」と考えたわけです。猫が死んだ原因は今でもわかりませんが、猫と同じようになる人をつくりたくなかったんですね。
それはとても心に残る体験だったのですね。先生はどのようなお子さんだったのでしょうか。
ちょっと変わっていると言われていました。自分ではどこが変わっているのかわかりませんでしたが、周囲とは少しずれている子だったと思います。1テンポ遅いというか。友達からよく「変わってる」「変わってる」と言われていましたね。物事に没頭するタイプだったからかもしれません。大人になって「最近やっとまともになったな」と言われますが、今でも集中すると周りが見えなくなるので、妻にも「猪突猛進」とよく言われています。
最後に、読者へメッセージをお願いいたします。
あちこちの歯科医院を回って当院にたどり着くという方もいらっしゃるので、これからも「諦めない」というスタンスを曲げずに続けていきたいと思っています。皆さんにはまずは治療することにならないよう、ぜひ予防に力を入れてもらって定期的にメンテナンスを受けていただきたいです。口はすべての入り口です。きちんとコントロールしてもらうことで、悲しい思いをする人がいなくなってほしい。「お口の健康が体全体の健康へつながる」ということを意識した生活を、皆さんに送っていただくことが僕の一番の願いです。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/31万9000円~、セラミッククラウン/6万6000円~