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高山 治利 院長の独自取材記事

おだやか診療所

(大田区/西馬込駅)

最終更新日:2024/10/28

高山治利院長 おだやか診療所 main

在宅医療専門の「おだやか診療所」。大田区上池台にあり、周辺の大田区と目黒区の対象地域において、通院が困難な患者の訪問診療や往診を行っている。2023年8月からは高山治利先生が院長に就任し、日本内科学会総合内科専門医として全身の内科疾患を診療。整形外科の医師や看護師などのチームで、日常の健康管理から看取りまで幅広く対応する。「患者さんやご家族とは人と人として向き合えたら。配慮や心がけを欠かさず、名医とまでは言いませんが『良医』でいたいと思っています」と謙虚にほほ笑む高山院長に、同院での診療や在宅医療にかける思いについて聞いた。

(取材日2023年9月19日)

病気だけでなく人を診る、ハートフルな在宅医療を

最初に、先生のご経歴を教えていただけますか?

高山治利院長 おだやか診療所1

2011年に関西医科大学を卒業後、板橋中央総合病院で2年の初期研修を修了しました。その時に、全身を診る総合内科にやりがいを感じ、3年目に厚生中央病院の総合内科に入局しました。職歴としては、厚生中央病院での約10年が一番長いですね。ここでは内科全般の診療の傍ら、呼吸器内科疾患も数多く担当しました。「おだやか診療所」の院長になったのは2023年8月からです。病院勤務時代には訪問診療に行くことは少なかったですが、入院患者さんの今後の選択に関わる機会は多くありました。入院期間が長くなり自宅に戻れないご高齢の患者さんもいれば、一方で介護サービスを導入されたり、ご家族の介護で何とか自宅に戻れたりする方も。また療養型病院で過ごす選択になる方もいましたね。こうした経験が地域での在宅医療に生かせるのではと考えていたところ、声をかけてもらったんです。

こちらではどのような診療をされているのでしょうか?

当院は在宅医療専門のクリニックで、通院が困難な方のご自宅に医師や看護師が伺う訪問診療を行っています。患者さんは認知症の方が一番多く、次に体にまひがある、足腰が悪いといった身体機能の面で通院が難しい方が多いです。それから、がんなどの終末期医療で緩和治療を必要とされる方や、少人数ですがうつ病などの精神疾患をお持ちの方もおられますね。日常的な健康管理から看取りまで、患者さんやご家族のご要望をお聞きしながら対応しています。内科・老年内科・緩和ケア内科・老年精神科を標榜していますが、「この疾患は受け入れない」ということはほぼありません。病状やご自宅の環境、ご家族の事情なども考慮したサポートをしますので、何でもご相談ください。予期せぬ状態の悪化があったときなどは24時間365日往診にも対応しています。

在宅医療において、先生のこれまでの経験が生きていると感じることがあれば教えてください。

高山治利院長 おだやか診療所2

おなかが痛い、膝や腰が痛む、不安感がある、何となく調子が悪いなど、患者さんが訴える症状は本当にさまざまなので、柔軟に対応できるのは総合内科の経験が長いからだと思っています。それから、患者さんお一人に時間をかけ、関係を深めながら診療を進められるところも、私には向いているなと感じています。というのも、病院勤務時代はどうしても一人の患者さんに接する時間は限られていました。お一人お一人の背景まで把握して「人として診る」というよりは、その場で「病気や症状を診る」側面が大きくなっていたと思います。一方で、現在は時間をかけてご本人やご家族とたくさん会話をすることができますし、患者さんの背景を含めて「人として診る」ができていると感じています。いわゆる「全人的医療」に、医療人としてやりがいを持って取り組んでいます。

医師と患者である前に人と人。フラットな関係を大切に

特に初診には時間をかけられるそうですね。

高山治利院長 おだやか診療所3

はい。最初の訪問では患者さんやご家族のことをより深く知りたいので、最低でも1時間取っていただくようにお願いしています。既往歴や薬歴の確認はもちろん、医療の話以外にも、患者さんのこれまでの人生について詳しく教えていただきたいんです。やってきたお仕事や、家族構成、生活リズムなど……。生活環境を拝見した上で、どういった価値観やお考えをお持ちの方なのかを知ることで、適切な医療を提供できると考えています。患者さんにお話を聞いたら、次はご家族に聞く番。患者さんの暮らしはご家族との関係性の中で営まれていますので、私たちはそのリズムを崩さないよう、輪に入れていただくイメージでサポートします。初診はご家庭のリズムを知るための時間でもあるんです。

診療で大切にしていることや、心がけていることは何ですか?

お住まいの環境に他人が入ってくることに抵抗感がある方も当然いらっしゃいますから、まずは受け入れていただけるように、傾聴して共感することです。そして話しやすい人であろうと心がけています。医師と患者というよりも人と人として、同じ目線で関わり合いたいんです。ですから診療中は、雑談もたくさんしますね。生活でのお困り事や、趣味の話も。雑談から見えてくることもありますし、医療の話ばかりだと患者さんも緊張するでしょうから。あとは細かいですが、白衣も着ないようにしているんですよ。実は一時期、Tシャツで訪問していたこともありますが、さすがにくだけすぎかと思ってやめました(笑)。聴診器も明るい印象の水色を選んで、極力首から下げないようにしています。少しでも親近感を持ってもらえたらと思ってのことです。本当はマスクを外して、顔を合わせてお話しできるのが理想ですが、今のご時世だとまだ難しいのは少し残念ですね。

「人と人として向き合うこと」を大切にされているのですね。

高山治利院長 おだやか診療所4

そうですね。私がそういう姿勢でいると心を開いてくれる方もいますし、時間をかけて関わるうちに良い関係性を築けたらと、日々模索しています。これは決して患者さんとの関係性に限った話ではなく、どんな人間関係でも「人と人として向き合うこと」が大切ではないでしょうか。職種や立場などに関わらずフラットな関係性を築くことで、本音で話せるのだと思います。実は友人や同僚と接するときに、日々の診療での経験が生きていることもあって、医師としてだけでなく、人間としても成長させていただいているなと感じます。

在宅医療を必要とする人に、もっと気軽に頼ってほしい

看取りの対応については、いかがでしょうか?

高山治利院長 おだやか診療所5

これからお看取りに入る状況になると、ご本人の苦痛を緩和することはもちろんのこと、ご家族の心情ですとか、何かお困りのことがないかなど、常に心がけるようにしています。私やスタッフが訪問日以外にも折を見てお電話させていただいて、「気になることはありませんか?」と声かけをすることもあります。私たちも次の訪問日までの状況の変化が気になりますし、ご家族のケアも含めて、お力になりたいと思っているんです。

在宅医療は看護師やスタッフとの連携も大切だと思いますが、診療体制を教えてください。

私のほかに、非常勤で整形外科の医師が1人、看護師が2人、医療事務が1人、ソーシャルワーカーと医療相談員が兼任で1人、計6人のスタッフが協力し合い、日々の診療にあたっています。20~40代の若く元気なスタッフが集まっていて、事務所では冗談を言って笑い合うような、和気あいあいとしたチームです。クリニックは「おだやか診療所」という名前ですが、「にぎやか診療所」のほうが似合っているかもしれませんね(笑)。当院が開業した4年前から勤めている医療事務のスタッフは、私よりも患者さんを熟知していますし、お話し好きな看護師もいて、皆ハートのある温かい人ばかり。そんなチームの雰囲気が伝わるのか、患者さんやご家族の中には私たちにフランクに接してくださる方も多くてうれしいですね。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

高山治利院長 おだやか診療所6

私が急性期病院に勤めていた時、介護をしていたご家族が体力の限界で倒れて運ばれてくるのを何度か見ました。頑張りすぎてしまう人が少なくないということは、在宅医療の存在は、まだまだ一般的には認知度が低いのではないでしょうか。「費用面が心配」「こんなことで頼ってはいけないのではないか」などと悩んで、抱え込んでしまう方もいらっしゃいますが、頼って良いんですよとお伝えしたいです。「どんな人が利用しているのか」など、素朴な質問でも構いませんので、当院に直接でも、かかりつけ医やケアマネジャー、地域医療包括センターを通してでも、気軽にお問い合わせください。その結果、「やっぱりいいや」となっても、もちろん大丈夫です。真摯に対応させていただきます。

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