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山中 光茂 院長の独自取材記事

しろひげ在宅診療所

(江戸川区/瑞江駅)

最終更新日:2023/02/10

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所 main

江戸川区を中心に、在宅療養の支援を行っている「しろひげ在宅診療所」。人生の最期の時間を住み慣れた家で幸せに過ごしたいと考える患者とその家族を、経験豊富なスタッフがチーム一丸となって支える診療所だ。山中光茂院長は、群馬大学医学部を卒業後、アフリカを中心とした途上国でさまざまな医療支援プロジェクトに従事。帰国後は三重県松阪市の市長を務めた経歴を持つ。「在宅医療は日替わりの非常勤医師などではなく、かかりつけの医師がお看取りまでを行うのが本来の姿である」というポリシーを掲げ、「患者さん一人ひとりに最期の瞬間までしっかり寄り添う医療」を実現するために尽力している。今回は山中院長に、在宅医療にかける思いや、10月に完成した新社屋について話を聞いた。

(取材日2022年11月2日)

江戸川区を中心に、地域に求められる医療・介護を提供

こちらではどのような医療を提供しているのですか?

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所1

江戸川区を中心に、その地域に不足している医療・介護サービスを展開しています。24時間体制での訪問介護や社会貢献活動も行っていますが、医療法人社団しろひげファミリーの中心となるのは在宅医療。ケアマネジャーやヘルパーといった地域で福祉を担っている方々からの紹介で、毎月新規の患者さんをお引き受けし、多くの患者さんの最期まで寄り添っています。紹介を受ける患者さんの半分以上ががんや難病といった重度の疾患を抱えていますが、病院と同レベルの治療行為やサポートが在宅でできるような体制づくりをしてきました。医療・看護・介護の三本柱で在宅での生活を支えるこの取り組みを、私たちは「江戸川しろひげモデル」と呼んでいます。スタッフ全員での朝礼を行い、患者さんの情報を共有。最期のお看取りまで徹底的に患者さんに寄り添いたいという強い思いをもってそれぞれの現場に携わっています。

今年の10月に新社屋が完成したのですね。

この建物はしろひげファミリーの本部、3階建てなのですが仕切りの壁がないユニークな造りです。3階の院長室を出て、ワークスペースを通りながら階段を伝うと、1階まですべてつながっているんですよ。しろひげ在宅診療所のスタッフは総勢100人を超えました。さまざまな個性を持った方が「しろひげファミリーで働きたい」と集まってくれたんです。公務員から転職して社会貢献部で活躍されている方、海外の医療支援活動に目を向けている方、さらにはデザイナーも仲間に加わりました。仕切りがないので職種間のコミュニケーションも取りやすく、情報共有のクオリティーも自然と上がりました。建物の1階はどなたでもご利用いただけるスペースになっています。

1階で在宅医療や訪問看護の相談もできるのでしょうか?

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所2

もちろんです。中で飲食も可能ですので、休憩場所としてご利用くださっても構いません。医療や介護は「難しい、敷居が高い」と思われがちなもの。私はその敷居を下げ、地域の皆さんに医療や介護をもっと身近に感じてほしいのです。終末期を迎えた大切な家族と、最後の日まで一緒に自宅で過ごしたい。その思いはどなたにでもありますよね。一方で介護に対する不安や、ご自身の生活への影響を心配する気持ちもおありでしょう。気になることがあればお気軽にいらしてください。1階の明るいスペースでお話ししながら、当院の雰囲気や在宅医療の質について知っていただければと思います。

常勤スタッフのプロ意識が、在宅医療の質を保つことへ

医師ほかスタッフ全員が常勤だそうですが、それはなぜですか?

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所3

それぞれの職種が患者さんに対して責任を取れる体制を大切にしているので、スタッフは全員常勤というかたちをとっています。年に一度の「全国在宅医療テスト」にもみんなでチャレンジしていますよ。近年、在宅医療を行う医療機関の数は大幅に増えました。しかし「24時間対応」としながら、夜間は普段担当している医師ではなく非常勤やバイトの医師が対応する診療所も多くなっています。例えば、患者さんやそのご家族によっては、救急搬送をしてほしくない方もいれば、延命治療をしてほしくない方もいらっしゃいます。そうした部分がわかるのは、普段から接している常勤の医師やスタッフだからこそなのです。

在宅医療の質に大きく影響するのですね。

そのとおりです。酸素の管理、薬の調整など、在宅医療は簡単なことではありません。重症度が高いほど「クオリティーの低い医療になるのでは」という不安もおありでしょう。私たちは全員が常勤スタッフとしてプロ意識や一体感を持ち、患者さんの症状や価値観を十分理解することに努めています。常に在宅医療に携わっているため経験値も高く、何を優先すべきかもわかっています。緊急時にもいつもの医師が対応できるのは、患者さんの安心感にもつながると思います。もしその日に主治医が非番であっても、随行看護師を通じて速やかに情報が共有されます。ご安心ください。また個々のご要望に応えられるよう薬剤や医療機器を備え、新人の医師は1ヵ月の研修でその扱い方と在宅診療に対する知識と心構えを身につけられるよう体制を整えています。

先生が診療にあたって大切にされていることは何ですか?

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所4

患者さんの価値観に寄り添うこと、そして謙虚であるということです。こちらの価値観ではなく、患者さんやご家族の価値観を尊重することが大切だと思っています。医療者というのは、医療者の価値観から「こうあるべきだ、こうしたほうが良い」と伝えてしまいがちですが、それが患者さんの希望に沿っているとは限りません。特に医師の言葉というのはとても重いので、患者さんにとっては自分で決めたようでいて、実は医師から誘導されてしまっていることもあります。ですから、医師は安易に言葉を発するのではなく、家族の思いを想像していかなくてはなりません。患者さんが何を望んでいるか、価値観をどこにおいているのか、どんな人生設計を考えておられるのか、その背景や考え方について深く理解することが大切なのです。

江戸川区から全国に広がる「しろひげマインド」

ところで先生はなぜ医師をめざしたのですか?

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所5

小さい頃にテレビで見たエチオピアの難民支援の話が忘れられず、将来はアフリカ支援の仕事に関わりたいと考えていました。外交官をめざし内定は出ていたのですが、よく考えたら外務省は自国のために仕事をする場であり、私自身の夢とは程遠いことに気づいたのです。それで群馬大学に学士入学して医師をめざしました。卒業後はケニア奥地や離島などで医療支援プロジェクトに従事してきました。帰国後、33歳の時に松阪市市長に就任し、7年務めました。その後は医師として、四日市の「いしが在宅ケアクリニック」の石賀丈士先生のもとで在宅医療について学んだのです。さまざまな経験から、それぞれの患者さんやご家族によって課題は異なり、その課題に対してできることをアプローチすることが大切だと学びました。そうした思いが当診療所の原点にあると思います。

在宅での看取りを考えている家族に対して、メッセージをお願いします。

最期の日まで自宅で家族と過ごしたい。けれども自分の生活や仕事もあって、どうしたら良いのかわからない。そんな時は、ぜひ介護サービスを利用してください。これまでとまったく同じとは限りませんが、ご自身の日常生活を保ちながら、終末期を迎えた家族に愛情を注ぐ環境を作ることは可能です。私たちはご家族の介護負担をしっかり引き受けながら、患者さんが最期の一瞬まで笑顔で過ごせるよう努めています。またご家族のお悩みで多く挙がる費用面に関しても、介護保険を利用することで多くの場合解消されるのです。介護力や経済力の面から在宅医療を躊躇されているご家族に、まずはこのことを知ってほしいと思います。

最後に、今後の展望をお聞かせください。

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所6

私たちのすべきことは、これまでも、今も、これからも変わりません。江戸川区を中心としたこのエリアで、求められる医療・介護に力を尽くしていきたいです。24時間365日、いつでも患者さんの想いに応えられる体制を整えてこそ「在宅医療」だと私は考えています。ですが残念ながらそうではない劣悪な在宅医療が存在することも事実です。私たちは行政や地域の介護職種の方と連携し、病院と同等のクオリティーに努め、ご自宅での生活をサポートし続けます。遠方地域や離島から「江戸川しろひげモデル」を学びたいという声も多くあり、当院での経験を生かし開業した医師もいるんですよ。そうして「しろひげマインド」が全国に広がり、在宅医療に真摯に取り組むクリニックが増えればうれしいことですね。

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