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山中 光茂 院長の独自取材記事

しろひげ在宅診療所

(江戸川区/瑞江駅)

最終更新日:2019/08/28

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白いひげを蓄えたアライグマのシンボルキャラクターが印象的な「しろひげ在宅診療所」。ここは、患者やその家族が在宅で幸せに過ごせる医療の提供、最期の一瞬までしっかり寄り添う在宅医療の実践をめざして、山中光茂院長が2018年10月に開業した在宅療養支援診療所だ。山中院長は群馬大学医学部を卒業後、アフリカを中心にさまざまな医療支援プロジェクトに従事、帰国後は三重県松阪市長を務めたという異色の経歴を持つ。「在宅医療は日替わりの非常勤医師などではなく、かかりつけの医師がお看取りまで行うのが本来の姿だと思います。ご本人やご家族の価値観を尊重しながら徹底的に寄り添う医療を提供していきたいですね」と話す山中院長。そのめざす在宅医療の姿について話を聞いた。
(取材日2018年11月22日)

本人と家族の価値観を尊重し当たり前の幸せを創出

開業して約1ヵ月半が過ぎましたが、反響はいかがですか。

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おかげさまで現在、約250人の患者さんを在宅で診療しています。お一人の患者さんには約30分から1時間くらいかけてゆっくりとお話ししながら診療を行っています。24時間体制ですので夜間に連絡を受けるのも大前提です。当診療所では、病気を治すということより、一人ひとりの心に寄り添うことを第一に考え、最期のお看取りまで責任を持って行う在宅医療をめざしています。今、医師は私を含め常勤が3人、看護師6人という診療体制ですが、スタッフ全員、これまで最期のお看取りまで徹底的に患者さんに寄り添うことを中心に在宅医療や訪問看護に従事してきた経験があり、その強い思いを持って在宅医療にあたっています。

普段大切にしていることはどんなことですか。

医療者の価値観ではなく、ご本人やご家族の価値観を尊重することです。医療者は医療者の価値観からこうあるべきだと伝えますが、それが患者さんの希望に沿っているとは限りません。患者さんたちが何を望んでいるか、価値観をどこに置いているか、どんな人生設計を考えておられるのか、その背景や考え方について対話しながら深く理解するようにしています。また、さまざまな選択枝の中から何が最適なのか、一緒に考えていくようにしています。例えばがん治療の際、医師が勧める化学療法を受けたら、がんマーカーの数値が変わるかもしれません。ですが、その副作用で体調が悪くなり食事もできなくなってしまうこともあります。どちらが良いのかは患者さんの価値観によって異なります。医療者にはプライドもあるのでしょう。ですが在宅医療においては医療者のプライドはまったく不要なものだと思っています。

重い疾患でも在宅での診療が可能なのでしょうか。

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はい。病院でできることのほとんどは在宅でもできますので、重い疾患でも在宅医療を受けることができます。当診療所では重い疾患の方が多いですね。がん終末期の方も多く、緩和ケアや疼痛管理、酸素療法などを行っています。認知症や神経難病、精神疾患なども診療しています。ただ、当診療所の在宅医療では、病気を治すことよりも、幸せな在宅での時間をどのように作り出すかを重視しています。もちろん肺炎になれば治療しますし、褥瘡が起きたら治療します。ですが、患者さんの病状は、加齢に伴って起きてくるごく自然なものと捉えています。やがて迎える最期の時までの時間を幸せに過ごせるよう、一人ひとりの心に寄り添っていくことを重視しています。

最期の一瞬まで徹底的に患者と家族に寄り添う在宅医療

在宅診療のエリアについて教えてください。

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診療所の所在地から半径16キロと規定されていますので、江戸川区全域、浦安市全域、葛飾区、墨田区、江東区、市川市の一部となります。在宅医療では、各地域の中核病院、ケアマネジャー、訪問看護、介護施設、薬局、ヘルパー、訪問リハビリテーションなど、地域のさまざまな職種とのネットワークがとても重要になります。移動しているときも、常に各方面の方々と連絡を取り合って情報共有しています。中でもヘルパーさんは一番重要な存在だと思います。一人暮らしで要介護の方は、食事や入浴などヘルパーさんの力が必要になりますから。在宅医療の依頼はケアマネジャーや介護施設などからの紹介も多いですね。

自宅で看取りたいという希望は多いのでしょうか。

厚生労働省の調査によれば、自宅で最期を迎えたいと考えている人は約6割弱ですが、実際に自宅で看取られた人は全国平均で約12%程度です。当診療所では、施設から病院に搬送される場合を除いてご自宅で看取りを行っています。ご家族の方は皆さん、「自宅で看取れて良かった」と笑顔で家族写真を撮られることも多いですね。最期を迎える時は、人生最後のプロセスですから、なるべく苦しむことなく自然な死を迎えられるように配慮しています。代謝・排泄ができないのに無理に点滴を続ければ体がむくんだり、腹水がたまったりします。人間に限らず動物は枯れて死んでいくものだと思います。ですので、無理な点滴などはせず、ごく自然な流れの中でお看取りをしています。ご家族の方には、死期が近づいた頃から随時このようなことも含めていろいろお話ししています。

看取りの他にも、診療でこだわられていることはありますか。

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鼻や口へのチューブや胃ろうで栄養補給している患者さんも、チューブなどをはずして口から栄養を取れる状態を促すことです。医師側は誤嚥性肺炎を恐れて経管栄養法を行いますが、経管栄養法にはマイナス面もあります。たしかに口から飲食すると誤嚥性肺炎のリスクが考えられます。ですが、口から飲食することはとても人間らしい行為ですし、その人の活気にもつながると考えています。ご家族の方もその姿を見るのはうれしいことでしょう。嚥下力があるのに経管栄養法を続けていると嚥下能力が低下してしまいます。ですので、訪問医療では、口から飲食できる喜びをより感じていただけるよう、嚥下機能の回復、向上を図っています。その点では訪問歯科との連携も重要ですね。

他者の価値観を尊重し他者の痛みに寄り添うことが信条

そもそも医師をめざしたのはどんなきっかけがあったのですか。

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小さい頃にテレビで見たエチオピアの難民支援の話が忘れられず、将来はアフリカ支援の仕事に関わりたいと考えていました。そのためには外交官になるのがいいのではと思い、外交官内定は出ていたのですが、よく考えたら外務省は自国のために仕事をする場であり、私自身の夢とはほど遠いことに気づいたのです。それで群馬大学に学士入学して医師をめざしました。卒業後はケニア奥地や離島などで医療支援プロジェクトに従事してきました。帰国後、33歳のときに松阪市市長に就任し、7年務めました。政治活動は40歳までと決めていましたので、その後は本来の医師としての役割を果たしたいと思い、四日市で自宅での看取り率向上に力を入れていた「いしが在宅ケアクリニック」の石賀丈士先生のもとで在宅医療について学んだのです。

ところでプライベートはどのようにお過ごしですか。趣味などがあれば教えてください。

特に趣味という趣味はないんですよ。人と関わっていくことが好きで、そのご縁を大切にしながら、今できることを全力で行っているだけです。仕事が好きなんでしょうか(笑)。ただ、途上国の支援活動は続けています。今は途上国の子どもたちに移動映画館で映画を届ける活動をしているNPO法人の活動に協力しています。途上国の子どもたちへの生活支援も大切ですが、映画は、生きる目的や夢、心への栄養、世界のいろいろな価値観を与えてくれるものです。その映画を子どもたちに届けようという活動趣旨に共感し、プロデューサーという形で関わっています。

では最後に今後の展望をお願いいたします。

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他者の価値観や他者の痛み、苦しみに寄り添うということが私の人生のモットーですので、これからも医療者の傲慢な価値観ではなく、患者さんやご家族の方々の価値観を尊重しながら、お一人お一人の心に寄り添った在宅医療を提供していきたいと思います。在宅医療は、地域の介護施設や病院などから紹介いただくことも多いですので、今後もさらに密な連携をとっていきたいですね。ご高齢の方やご家族のことで困っていることがあればお気軽にご相談ください。

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