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山中 光茂 院長の独自取材記事

しろひげ在宅診療所

(江戸川区/瑞江駅)

最終更新日:2024/03/12

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所 main

東瑞江の一角、瑞江駅西通りから少し入った所にあるガラス張りのスタイリッシュな外観が印象的な「しろひげ在宅診療所」。ここは江戸川区を中心に自宅で療養している患者とその家族を、経験豊富なスタッフがチーム一丸となって支えている在宅医療専門の診療所だ。山中光茂院長は、群馬大学医学部を卒業後、アフリカを中心とした途上国でさまざまな医療支援プロジェクトに従事。帰国後は三重県松阪市市長を務めた経歴を持つ。「在宅医療はかかりつけの医師が看取りまでを行うのが本来の姿である」というポリシーを掲げ、「患者一人ひとりに最期の瞬間までしっかり寄り添う医療」を実現すべく尽力している。そんな山中院長に、在宅医療への思いや診療所の特徴について聞いた。

(取材日2024年1月31日)

江戸川区を中心に地域に求められる医療・介護を提供

こちらではどのような医療を提供しているのですか。

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所1

江戸川区を中心に、地域に不足している医療・介護サービスを展開しています。24時間体制の訪問介護や社会貢献活動も行っていますが、医療法人社団しろひげファミリーの中心となるのは在宅医療。ケアマネジャーやヘルパーなど地域で福祉を担っている方からの紹介で、毎月新規の患者さんをお引き受けし、多くの患者さんの最期まで寄り添っています。患者さんの半分以上ががんや難病といった重度の疾患を抱えていますが、病院と同レベルの治療やサポートが在宅でできる体制づくりをしてきました。医療・看護・介護の三本柱で在宅での生活を支えるこの取り組みを、私たちは「江戸川しろひげモデル」と呼んでいます。スタッフ全員がお看取りまで徹底的に患者さんに寄り添いたいという強い思いを持ってそれぞれの現場に携わっています。

新社屋が完成したとのことですが、どのような変化が生まれましたか。

ここはしろひげファミリーの本部で、3階建てですが仕切りの壁がないユニークな造りです。1階はコミュニケーションスペースとなっていて、毎朝スタッフ全員でミーティングを行い患者さんについての情報を共有しています。医師、看護師、介護士、管理栄養士などスタッフのいる2階、3階は階段を伝うとすべてつながっていますので、必要な時にすぐに打ち合わせができ、情報共有のクオリティーが上がったと思います。今、スタッフは総勢180人を超えました。公務員から転職して活躍されている方や海外の医療支援活動に目を向けている方、さらにはデザイナーなどさまざまな個性を持った方が「しろひげファミリーで働きたい」と集まってくれました。

1階は地域の方にも開放しているのですね。

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所2

はい。昼間の時間帯であればどなたでも入っていただけます。中で飲食もできますので休憩場所としてご利用いただいても構いません。各種セミナーなど地域のイベント会場としてご利用いただくこともできます。もちろん、在宅医療や訪問看護の相談などもしていただけます。医療や介護は「敷居が高い」と思われがちですが、私はその敷居を下げ、地域の皆さんに医療や介護をもっと身近に感じてほしいのです。終末期を迎えた大切な家族と、最期の日まで一緒に自宅で過ごしたい。そんな思いの一方で介護に対する不安や、ご自身の生活への影響を心配する気持ちもおありでしょう。気になることがあればお気軽にいらしてください。

常勤スタッフのプロ意識が医療の質の向上に

スタッフ全員が常勤だそうですが、それはなぜですか?

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所3

それぞれの職種が患者さんに対して責任を取れる体制を重視しているので、スタッフは全員常勤にしています。近年、在宅医療を行う医療機関は大幅に増えましたが「24時間対応」としながらも夜間は非常勤やアルバイトの医師が対応する所も多くなっています。ただ、例えば患者さんやそのご家族によっては、救急搬送や延命治療をしてほしくない方もいらっしゃいます。そうした部分がわかるのは、普段から接している常勤の医師やスタッフだからこそなのです。また、重症度が高いと「医療の質は担保されているのか」という不安を感じられることもあると思います。私たちは全員が常勤スタッフとしてプロ意識や一体感を持ち、患者さんの症状や価値観を十分理解することに努めています。常に在宅医療に携わっているため経験値も高く、何を優先すべきかもわかっています。緊急時にもいつもの医師が対応できるのは、患者さんの安心感にもつながると思います。

診療の際に大切にしていることは何ですか?

患者さんの価値観に寄り添うことと謙虚であることです。こちらの価値観ではなく、患者さんやご家族の価値観を尊重することが大切だと思っています。医療者は「こうあるべきだ、こうしたほうが良い」と伝えてしまいがちですが、それが患者さんの希望に沿っているとは限りません。特に医師の言葉というのはとても重いので、患者さんにとっては自分で決めたようでいて、実は医師から誘導されてしまっている場合もあります。ですから、医師は安易に言葉を発するのではなく、患者さんやご家族の思いを想像しなくてはなりません。患者さんの望みや価値観、人生設計などその方の背景や考え方を深く理解することが大切なのです。

法人としては、社会貢献活動にも尽力されているそうですね。

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所4

江戸川区に根づいてこの地域に暮らすさまざまな方の生活を支えることが、医療法人社団しろひげファミリーとしての大きな目標です。当院の患者さんの中にも、うつ病など精神疾患をお持ちで社会に出ていけない方もおられます。そういった方々に対して私たちができることを少しずつやっていこうと考えました。当法人では、2023年2月に江戸川区と連携して、ひきこもり状態にある方が安心して過ごせる場所を作り、交流や就労体験により社会とのつながりと自立を支援する活動をしており、私も携わっています。また、お体の具合が心配でお出かけできないという方も、「あの場所に行ってみたい、思い出づくりをしたい」などと考えておられると思います。そんな方々のご希望をかなえられるよう、当院でも医師や介護士などが同行して思い出づくりのお手伝いをしています。

江戸川区から全国に広がる「しろひげマインド」

ところで先生はなぜ医師をめざしたのですか?

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所5

小さい頃にテレビで見たエチオピアの難民支援の話が忘れられず、将来はアフリカ支援の仕事に関わりたいと考えていました。外交官をめざし内定は出ていたのですが、よく考えたら外務省は自国のために仕事をする場であり、私自身の夢とは程遠いことに気づいたのです。それで群馬大学に学士入学して医師をめざしました。卒業後はケニア奥地や離島などで医療支援プロジェクトに従事しました。帰国後、33歳の時に松阪市市長に就任し、7年務めました。その後は医師として、四日市の「いしが在宅ケアクリニック」の石賀丈士先生のもとで在宅医療について学んだのです。さまざまな経験から、それぞれの患者さんやご家族によって課題は異なり、その課題に対してできることを行うことが大切だと学びました。そうした思いが当診療所の原点にあると思います。

在宅で看取りを考えているご家族に対してメッセージをお願いいたします。

最期の日まで自宅で一緒に過ごしたい。けれども自分の生活や仕事もあって、どうしたら良いかわからない。そんな時は、ぜひ介護サービスを利用してください。これまでとまったく同じとは限りませんが、ご自身の日常生活を保ちながら、終末期を迎えた家族に愛情を注ぐ環境をつくることは可能です。私たちはご家族の介護負担をしっかり引き受けながら、患者さんが最期の一瞬まで笑顔で過ごせるよう努めています。また費用面の不安もさまざまな制度を利用することで解消されます。介護力や経済力の面から在宅医療を躊躇されているご家族に、まずはこのことを知ってほしいと思います。

最後に今後の展望をお聞かせください。

山中光茂院長 しろひげ在宅診療所6

私たちのすべきことはこれからも変わりません。江戸川区を中心としたこのエリアで、求められる医療・介護に力を尽くしていきたいです。24時間365日、いつでも患者さんの想いに応えられる体制を整えてこそ「在宅医療」だと私は考えています。私たちは行政や地域の介護職種の方と連携し、病院と同等のクオリティーでご自宅での生活のサポートに努めます。遠方から「江戸川しろひげモデル」を学びたいという声も多くあり、当院での経験を生かし開業した医師もいます。そうして「しろひげマインド」が全国に広がり、在宅医療に真摯に取り組むクリニックが増えればうれしいですね。

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