上田 至亮 院長の独自取材記事
うえだ眼科クリニック
(杉並区/下井草駅)
最終更新日:2025/02/03

下井草駅南口から右方向に、フクロウのイラストのロゴマークが目印の「うえだ眼科クリニック」はある。院内は車いすでも利用できるバリアフリー仕様。トイレには、おむつ替え用のベビーシートも設置されている。上田至亮(うえだ・よしあき)院長は、荻窪病院眼科部長時代から、地域の眼科医療に携わってきた。同院でも子どもの弱視や大人の目の不調、多焦点眼内レンズを用いた日帰り白内障手術など、幅広い目の悩みに対応。不安を抱えて受診する患者に対しては、難しい専門用語の使用をできる限り避け患者が納得するまで丁寧に説明する姿勢で臨む。白内障手術のニーズの高まりを受け、先進の機器を導入。緑内障に関しても先端のレーザー治療を実施している。地域の患者のために意欲的な上田院長に、力を入れる治療や白内障手術について話を聞いた。
(取材日2024年12月3日)
老眼や乱視矯正対応の多焦点眼内レンズでの白内障手術
幅広く診療されている中で、特に力を入れられている治療はありますか?

最も注力しているのは、白内障の日帰り手術です。白内障は目の中でレンズの役割を果たしている水晶体が白く濁って見えづらくなる病気ですが、手術では濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズに置き換えます。眼内レンズにはピントが合いやすい距離が設定されていますが、レンズの種類には単焦点眼内レンズといって、遠方か近方かのどちらか片方にピントを合わせるレンズと、多焦点眼内レンズといって遠方から近方の複数同時にピントを合わせることで、老眼に対応できるレンズがあり、当院ではその両方のタイプを用意しているほか、乱視の矯正にも対応するレンズも取り扱っています。レンズの種類と設定距離については、ご相談の上で選択していただくようにしています。
それぞれの眼内レンズにメリット・デメリットはありますか?
単焦点眼内レンズは、距離を遠方に設定すると手元が見えづらいため手元の作業時に老眼鏡が必要になる一方、手元に設定すると遠方が見えづらくなるため、基本的に日常生活で見たい距離に合った眼鏡が必要です。多焦点眼内レンズは遠・近または遠・中・近にピントを合わせられることが望めるため、眼鏡の使用頻度を減らしたい方には適していますが、ごくまれに少しぼやけて見える、光がにじんで見える、目が疲れるなどの不具合が出るケースもあります。これらの不具合には個人差がありますが、2~3ヵ月経過すると気にならなくなるでしょう。ただし、光の加減が重要な夜間の運転をされる方や、仕事などで細かい色合いを見極めることが必要な方には、これらの心配がない単焦点眼内レンズをお勧めしています。
費用面も気になります。

単焦点眼内レンズの手術は、乱視矯正も含めて健康保険が適用されます。多焦点眼内レンズは、選定療養という方法で使用できるレンズを取り扱っています。自由診療の場合は全額自己負担ですが、選定療養での手術の場合は、基礎的な白内障手術にかかる部分は保険適用、多焦点眼内レンズの代金にかかる差額部分は自己負担です。費用面も含めて説明しますので、安心してまずはご相談いただければと思います。
患者のニーズに合わせ、環境をアップデートしたい
現在はどのような患者さんがいらっしゃいますか?

日常生活で感じるちょっとした違和感から、手術を要する病気まで、何でも相談を受けつけています。当院は視能訓練士を重点的に配置して、斜視や弱視のお子さんの検査や視能訓練に対応していますし、成人では加齢黄斑変性や眼瞼けいれんの治療にも力を入れています。さらに、前職で眼瞼下垂やまぶたの腫瘍を中心に数多くの手術を行ってきましたので、当院でも総合病院とほぼ変わらない内容の手術を行っています。今は小さなお子さんから高齢の方まで、幅広い年齢層の方に来院いただいています。特に白内障の日帰り手術に関しては、希望される患者さんが増え続けていますね。必然的に待機時間も長くなってしまうため、2023年からは手術数を増やして対応しています。より良質な手術の実施をめざすため、デジタル手術支援システムの導入と、白内障手術と同時に行う低侵襲緑内障手術(MIGS)の提供を行っています。
デジタル手術支援システムについて、詳しくお聞かせください。
通常の白内障手術では、手術前の検査データをもとに眼内レンズの度数を予測して設定するため、手術中に度数を判断することはできません。一方でデジタル手術支援システムは、手術前に予測した眼内レンズの設定度数と、手術中にリアルタイムで計測した目の形状の数値をもとに、AIが世界100万症例のデータから適切な眼内レンズ度数の数値を導きます。測定に3〜5分ほど必要で、その分少し手術時間が長くなる場合がありますが、これまで以上に、それぞれの患者さんにとって満足度の高い手術となるよう導入を決めました。
低侵襲緑内障手術について詳しく教えてください。

緑内障は、目の奥にある視神経が加齢やさまざまな原因でダメージを負うことによって削れた結果、その領域に一致した視野が欠ける病気です。通常、毎日の点眼で眼圧を下げるための治療を行います。当院で行っている低侵襲緑内障手術(MIGS)は、眼内ステントという小さな髪の毛の先ほどの金属片を、白内障手術の際に眼内に留置することで、眼圧を下げることをめざす治療です。場合によっては眼内ステントを入れることで点眼の回数や本数を減らすことが望め、点眼の煩わしさを軽減することが期待できます。症状としては初期から中期の方に限ってしか行えず眼圧の数値にも制限がありますが、今注目されている治療です。
低侵襲緑内障手術は白内障手術と同時に行うことができるのですね。
はい。白内障手術を希望される方の中で、緑内障の症状もある患者さんには、低侵襲緑内障手術も同時に受けられることをご説明しています。15分前後の白内障手術の時間にプラス5分程度で行うことができ、術後の待機時間も通常の白内障手術と同じです。日帰り手術として治療を受けられます。
検査と早期発見で、目の健康と充実した人生を支えたい
新たにレーザー機器も導入されたと聞きました。

選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)という、緑内障の治療に用いる機器です。SLTは簡単にいうと、目の中でつくられた水の流れをレーザーで改善を図り、眼圧を下げるための治療法です。これまで緑内障と診断された場合には、点眼薬を使って眼圧を下げるよう治療し、点眼で下がりきらない場合には手術という選択肢しかありませんでした。しかしこのSLTを診断直後や点眼薬の追加を検討する際など、さまざまなタイミングで行うことで、点眼薬を使わずとも眼圧の低下が望めたり、点眼薬の追加もしなくて済むことが期待できたりします。SLTは外来診療での実施が可能で、手術と比べて出血や痛みに配慮でき、感染症のリスクがとても少ない治療法になります。繰り返し実施できるため、緑内障治療の新たな選択肢として近年注目されています。
その他にも、さまざまな検査機器をそろえられていますね。
レーザー機器に加えて、特殊な遺伝性疾患などを検出するための網膜電図(ERG)を導入しました。通常は大学病院や総合病院にしか入っていないものなのですが、当院にはいろいろな患者さんが来られるので、病気の早期発見・早期治療につなげられるようにと取り入れることにしました。医療というのは限られたコストの中で行わなくてはなりません。しかし、先進機器を使うことで、より精密な検査が可能になり、患者さんの選択肢も広がると思います。患者さんを第一に、少しでもより良い医療を届けたいと考え、できるだけ良いと思った治療法や機器を導入しています。
最後に読者へメッセージをお願いします。

目の病気は早期発見が大切ですが、病状が進んでいても見え方に急激な変化がなく、自分では気がつかないケースも少なくありません。そのため、定期的な検診や早めの相談をお勧めします。当院では、一人ひとりの患者さんとしっかり話す時間をつくるために、医療クラーク体制を導入しました。診療中のやりとりや診察所見などを、専門のスタッフが医師の代わりに電子カルテに打ち込みます。クラーク体制を充実させたことで、常に患者さんと向き合ってお話しできるようになり、待ち時間が短縮されたのでより多くの方を診られるようになりました。治療は患者さんと医師の協力で成り立つものですので、見える喜びをより長く保つようつなげ、充実した人生のお役に立てればと考えています。いつでも検査や相談にご来院ください。
自由診療費用の目安
自由診療とは白内障手術/多焦点眼内レンズ:19万8000円~