日下部 浩 院長の独自取材記事
仙川整形外科
(調布市/仙川駅)
最終更新日:2026/04/06
京王線仙川駅から徒歩3分、甲州街道を渡ってすぐにあるのが「仙川整形外科」だ。2018年の開業から5年が経過しても院内は清潔感があり、椅子やソファーも真新しさを残している。院長の日下部浩(くさかべ・ひろし)先生は、大学病院や小児専門病院、リハビリテーション専門病院などで経験を積み、運動器に問題が生じた患者の状況を少しでも改善したいと日々の診療にあたってきた。中でも小児整形外科領域では先天性内反足の治療に取り組み、アイオワ大学に留学した経験を持つ。「整形外科学、あるいはリハビリテーション学というツールを用いて、患者さんのサポートをしたいのです」という日下部先生。リハビリテーションや小児整形外科を中心とした同院の整形外科医療への思いを聞いた。
(取材日2023年10月19日)
設備を整え患者に優しい環境で医療の提供を
クリニックにはどのような患者さんがいらっしゃいますか?

赤ちゃんからお年寄りまで幅広い年代の方がいらっしゃいます。症状としては、膝や股関節、肩の痛みといった変形性関節症と思われる方が多いですね。当院では手術によらない治療にも取り組んでいるため、手術を行いたくないと考える方も来院します。他には、小児の整形外科治療を求める患者さんも少なくありません。当院のように、小児整形外科を専門で行っているクリニックは珍しいでしょう。小児の場合、通常の整形外科では診られないケースもあり、他院からご紹介いただくこともあります。特に赤ちゃんの疾患は、股関節が外れたり両脚が内側に向いてしまう内反足など先天性の疾患が多いため、より専門性が必要です。そうした専門的な治療を求める方が多く来院しています。
クリニックの内装にも患者さんへの配慮があるとお聞きしました。
できるだけ診療所らしくない雰囲気と患者さんに優しい環境を心がけて内装のデザインを行いました。バリアフリーにしたのはもちろん、通路や待合コーナーの床をじゅうたん張りにしたこともこだわりの一つです。小さいお子さんの診察では、素足で歩いてもらって、立った時の手や足などの位置や歩き方を見極めます。高齢の方であれば転倒することも少なくありません。そうしたときにできるだけ患者さんの安全を確保し、骨折などのリスクを減らせるように、じゅうたん張りにしました。少しでも患者さんに優しい環境にしたいと思っています。
リハビリ室を広く取っていらっしゃいますが、運動療法に力をいれていらっしゃるのでしょうか。

そうですね、当院では物理療法よりも運動療法に力を入れています。それで物理療法の機器が少ないので、広く感じるのかもしれません(笑)。なぜ運動療法に力を入れているかというと、体への負担が少ないからです。例えば、肩が痛い、いわゆる五十肩の方は、可動域が悪いため麻酔をかけて動かすことをめざすという方法もありますが、できるだけリハビリでゆっくりやわらかくしていくことをめざす方法を選んでいます。リハビリの効能はさまざまな論文で書かれていますが、私がリハビリに着目したのは新人医師の頃でした。当時、リハビリテーション医学の分野で多くの実績を残す病院で勤務しており、見識高い先生方の治療を間近で勉強できたのです。その時からリハビリの可能性を実感していますので、今もそれを重視しています。
内反足、乳児の股関節脱臼など、専門的な治療にも注力
力を入れている治療について教えてください。

先天性内反足の治療です。国立小児病院(現・国立成育医療研究センター)に勤務していた90年代後半頃、先天性内反足の治療は手術が主流でした。しかし結果が良好ではなく、他に何か治療法がないかと模索している時、たまたま日本でアイオワ大学の先生による講習があったのです。手術ではなくギプスで矯正を行う方法を見て、この治療を極めたいと思いアイオワ大学に留学しました。現在では、先天性内反足の治療法としてギプスを使用すること自体は珍しくありません。しかし、留学先で重い症例なども学んだ経験から、手術を勧められているような難しい症例でも治療を行える自信がつきました。
先天性内反足のお子さんをお持ちの方に、何かアドバイスはありますか?
先天性内反足は著しい変形なので、生まれた瞬間にわかります。ところが小児整形外科を専門にしている医療機関や医師が少ないので、治療がままならないうちに成長し手遅れと思ってしまう親御さんもいらっしゃいます。ですが、それは誤解です。たとえ成人していても、ギプス矯正による治療で改善していくことは十分期待できます。先天性内反足の患者さんは1000人に1人ほどといわれておりますが、当院は比較的多くの患者さんを診てきました。矯正は再発する可能性もありますが、再び治療を行うことも可能です。成長したからといって諦めず、当院にご相談に来てください。
診察の際には、どのようなことを心がけていますか?
大人も子どももご本人がどう改善したいかが大事なので、患者さん本人から症状や改善したいことをお聞きするようにしています。また、スタッフの対応にも注意を払います。例えば、治療時に「嫌だね」と声をかけると、大人の患者さんへは寄り添う一言になるかもしれませんが、子どもは純粋なので「私は嫌なことをされている」と解釈してしまうのです。子どもへ声かけを行う際には「頑張ってるね」や「いいことをしているんだよ」と伝えます。すると、子どもも治療に前向きに取り組んでくれるようになるのです。そうした細かい配慮が小児医療では重要になると思います。
診断にはエコーを使用することもあると伺いました。

はい。より精密に患者さんの状態を判断できるよう、エコーを用いて診断を行っています。特に乳児のエコー検査は重要です。赤ちゃんは抱き方や向き癖などによって股関節を脱臼してしまうことがあります。股関節脱臼は治療が遅くなるほど障害が残る可能性が高まりますが、7ヵ月ごろまでの赤ちゃんの関節や腱はレントゲンでは見ることができないため、エコーをする必要があるのです。国や市町村によっては乳児健診にエコーを取り入れていたり、脱臼の可能性がないか足の開きなどをチェックしますが、残念ながらどうしても見逃されてしまうことがあるのが現状です。赤ちゃんは足をM字にして寝るのが最も好ましい状態であることを知っていただき、もし左右のバランスが違うことが気になったら、ぜひ一度ご相談ください。
整形外科のかかりつけ医として、地域医療に貢献したい
ところで先生はなぜ整形外科の医師になられたのでしょう。

医学部の卒業が近づいてきた時、まずは外科系を希望していました。手術など、自分の手を使って患者さんの状況を改善させるための手助けができるからです。その中で整形外科は、首から下すべてと診療範囲が広いことにやりがいを感じ専攻しました。小児整形外科を専門にしたのは、小児医療を専門とする国立小児病院(現・国立成育医療研究センター)での経験からです。大人と違い小児は苦しみを訴えることが少ない反面、症状がとても悪いことが多い。本当に手助けが必要なのは子どもたちだと痛感しました。その経験がなければ小児整形外科を専門にしていなかったかもしれませんね。
プライベートタイムはどのようにお過ごしですか?
休日は勉強会などに出席することが多いのですが、それ以外は学生時代に音楽をやっていた仲間と集まって演奏しています。ライブハウスなどではなく練習スタジオで音を出すだけですが(笑)。演奏曲はメンバーの皆さんの好みで、ロック、カントリーなどが多いかな。楽器は学生時代からベースです。最近はあまり時間が取れず仲間と会う機会も多くないですが、家での練習はこつこつと続けています。
今後力を入れたい治療や取り組みたいことなど、将来の展望をお聞かせください。

リハビリ室を最大限使って、多くの患者さんに対応できる体制にしていきたいと思っています。今後は、理学療法士などの増員も計画中です。取り組みの第一歩として、非常勤の医師に週2日、火曜と金曜に来てもらっています。ゆくゆくは非常勤の医師の勤務日も増やし、より多くの患者さんに対応する予定です。医師が変わると不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、当院ではどの医師でも変わらずに対応できるカルテ運用を行っています。患者さんの基本情報から今現在の様子まで、診察の度に詳細に記録する方法です。ですので、どうぞ安心して治療を受けていただければと思います。

