中島 淳太 院長の独自取材記事
新星おなかのクリニック
(札幌市北区/麻生駅)
最終更新日:2025/05/08

北海道中央バス・屯田5条7丁目バス停そば、白と紺のコントラストが印象的な外観の「新星おなかのクリニック」。クリニック名のとおり、おなかの痛みや不調といった消化器内科を扱うクリニックである。院長の中島淳太先生は、長年地域の基幹病院でがん患者を多く診てきた経験から、「予防医療」の重要性を痛感。地域の身近なかかりつけ医となり、住民に予防の重要性を啓発することを目的の一つとして開業を決意した。その目的を果たすことの難しさを感じながらも、根気良く患者に訴えているという中島院長に、予防医療への思いを聞いた。
(取材日2025年3月12日)
地域の総合病院での経験から「予防医療」を最重要視
医師になろうと思ったきっかけや専門を選んだ理由を教えてください。

子どもの頃は体が弱くて、小児喘息の持病があったり、しょっちゅう風邪をひいたりして頻繁に病院に通っていたんです。そんな中、私が「医者になりたい」なんて言ったらしく、それを聞いた親もその気になりました。私のほうは成長するに従い、他の学部に行きたい、他の職業に就きたいと考えることもあったのですが、親がそれを許してくれない感じになっていて(笑)。それで何とか医学部に受かって、いろいろな病気について勉強する中で、病気ってすべて「診断」から始まるなんて、と治療の前に魅力を感じるようになりました。内視鏡が得意なのもあって、内科の中でも消化器内科を選んだんです。
開業に至った経緯についてはいかがですか?
大学院で研究を続けたり、複数の総合病院で専門的な医療に携わったりと、さまざまな経験を積んできました。ステージの進んだがんの患者さんを多く診てきて、抗がん剤治療や分子標的薬での治療などに携わってきました。治療の選択肢も増え、いろんな薬も出てきてはいますが、やっぱり残念な結果になってしまう人が少なくないわけですよね。そういったことを目の当たりにしていると、どうやって治療するかを考えるより、がんにならないのが一番良いと強く感じるようになり、予防医療を提供したいと考えたんです。例えば胃がんならピロリ菌を除菌したり、肝臓がんなら肝炎を治療したり。最初から病気にならないような状態をめざす、あるいは早期発見して早く適切な治療をスタートさせる。そういうことをしたいなと考え、開業に至りました。
内装へのこだわりやクリニック名について伺っても良いですか?

ここはもともと別のクリニックがあって、閉業されていたところを縁あってお声がけいただき、新たに開業しました。その際に改装したんですが、まず考えたのは動線。患者さんの動線とスタッフの動線を分け、お互いがスムーズに移動できるよう配慮しました。クリニックにしてはかなり広めのスペースが確保されていたため、感染症専用の診療室も用意しました。このおかげで、新型コロナウイルス感染症の流行当初から患者さんを受け入れる体制を整えることができました。あと、内装でこだわったのは色ですね。患者さんに少しでも明るい気持ちになってもらいたくて、内装にオレンジ色を多用しました。クリニック名は、以前あったクリニック名から「星」の1字をもらい、どういった病気を診る所かわかりやすいよう「おなかの」としたのですが、実際は泌尿器科や婦人科の疾患の方なども多く来られるので、かえって患者さんを混乱させてしまったかもしれません(笑)。
安全性へ配慮し、患者の苦痛を抑えた内視鏡検査に注力
流行当初は新型コロナウイルス感染症を診る所が少なかったので、患者さんは喜ばれたのではないですか?

少しでも貢献できたならうれしいですね。対応できる患者さん数はその分少し減ってしまいましたが、通常の診療も並行して続けてはいました。当初、新型コロナウイルス感染症という病気がどういったものかわからず、世間の偏見もあったので、スタッフに結構つらい思いをさせたと思います。防護服を着て都度消毒するなど、一人ひとりの診療にも時間がかかりました。対応できる人数には限りがあるので制限はさせてはもらったものの、それなりの人数を診ていたと記憶しています。仮にまた同じような事態になっても、対応できる体制にあると思います。
開業の理由でもある「予防医療」について、もう少しお聞かせください。
どれだけ医学が進歩しても限界はあります。そういった意味で、病気にならないのが一番なのは明らかなのですが、日本ってなぜか予防医療に積極的に取り組む風土にはありません。現在日本は医療費高騰が社会的に問題となり、高額療養費制度の見直しが検討されるなど、安心して治療を受けられるかも怪しい状況です。では、どうすればいいか。病気にならなければ良いという話になるかと思います。具体的に提供している予防医療はワクチンや検診、啓発活動。また、当院では生活習慣病の方も多く診ています。生活習慣病の管理は心筋梗塞や脳梗塞などの予防につながることもあるので、それも予防医療に含まれるでしょう。
内視鏡検査にもこだわっているのですね。

勤務医時代から内視鏡検査には多く携わってきました。胃内視鏡は嘔吐反射のないよう経鼻で行いますが、麻酔は使いません。麻酔薬は循環動態や呼吸動態に影響するもので、絶対的な安全を保証するということは不可能なので、私のほうではやらないことにしたんです。希望される方には、万一トラブルが起こった場合にも対応できるような大きな病院を紹介しています。大腸内視鏡に関しては、おなかの張りを抑えられるよう空気ではなく、空気よりも体内に吸収しやすい二酸化炭素を使っています。コストはかかるのですが、患者さんの苦痛の軽減につなげられます。ただし当院では見落としのないよう検査は時間をかけて丁寧に行うので、「時間がかかる」という意味で、つらいと感じる患者さんもおられるかもしれません。
根気良く予防医療の重要性を訴えながら診療にあたる
予防医療についての考え方をより深く教えてください。

さきほどもお伝えしたかもしれませんが、予防医療の重要性はなかなか伝わらないですね、とは常々思います。勤務医時代、進行がんの患者さんで、大量の腹水などで苦労されている方を多く診てきました。治療を施しても結局残念な結果になった方も多くおられて。そういう結果になるととても苦しくてつらい気持ちになります。患者さんも医療側も双方つらい思いをしないためにも、もっと積極的に予防に取り組んでいく必要があると思うんです。苦しい思いをする人を一人でも減らすためには、予防しかありません。治療法がどんどん開発されて以前より治療に期待が持てるようになった部分もあるのですが、それでもやはり、進行した胃がん、膵臓がんをはじめとした消化器がんというのは治療しにくいんです。
クリニックの設備面についても教えてください。
最近のことにはなるのですが、ピロリ菌のPCR検査を追加導入しました。ピロリ菌についての検査法は、抗生剤に耐性のあるピロリ菌に感染している人が増えてきている中、診断率と除菌率の向上をめざして入れています。PCR検査の導入によって若年者に多い抗生剤耐性のピロリ菌の除菌も積極的に行えるようになり、この検査の導入によって効かない薬の投与を避けられたり、除菌の期間も短縮することが期待できます。気になる方はぜひ当院へご相談にお越しいただけたらと思います。
診療の際に気をつけていることを教えてください。

とにかく患者さんの訴えをできる限りじっくり聞くということを心がけています。ちょっとした話の中で、一番、大事なことをボソッと言われたりすることもあるんです。その話をもうちょっと詳しく聞かせてもらったら実はそこに病気が隠れていた、など重大な話をサラッとされることがありますから。「おなかが痛い」とだけ聞いて、「薬出しとくね」で終わらせてはいけないと思っています。世間話の中に思いもよらない病気が見つかることも少なくありません。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
進行がんの治療には難渋することも多いため、患者さんも医療側も双方つらい思いをしないためにも、もっと積極的に予防に取り組んでいく必要があると思っています。少しでも皆さんのお役に立てるよう、予防医療を中心にやっています。予防医療に興味のある方はもちろん、興味のない方も、気になることがあれば、お気軽にご相談ください。