通院困難な患者宅を訪問し
慢性期から終末期までをサポート
春日部在宅診療所ウエルネス
(春日部市/春日部駅)
最終更新日:2024/12/26


春日部市内牧を拠点に半径8km圏内の在宅医療を行う「春日部在宅診療所ウエルネス」。笹岡大史院長は慢性期や終末期の高齢者・成人から、障害がある子どもまで多世代の通院負担を軽くして笑顔を増やしたいという思いから日々奔走している。終末期の患者宅では家族も温かい言葉でサポートするなど、心の領域にまで踏み込んで診療する同院。そんなケアを可能にするのが、現場を支えるスタッフと専門分野を有した非常勤医師たちの存在だ。スタッフの働く環境整備やモチベーション向上、キャリア形成にまで配慮する笹岡院長。そこには、在宅医療に係わる人材を支え、ともに新しい在宅医療の文化を創っていきたいという考えもあるそうだ。在宅医療のスタッフとしての働きがいや非常勤医師らの存在感、現場の役割分担などについて語ってもらった。
(取材日2024年9月18日)
目次
スタッフがフレキシブルに働けることで、患者一人ひとりに寄り添った充実した在宅医療の提供につながる
- Q現場スタッフは在宅医療においてどんな役割を果たしていますか?
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A
▲医師・看護師・相談員がチームで患者に寄り添う
大きな病院では専門ごとに役割分担が決まっていることが多いのですが、在宅医療スタッフは非常にマルチタスクです。中でも特に重要なのが、医療やケアの質を維持するための橋渡し役です。患者さんやご家族と密接に関わり、容体が変化したら迅速に医師と連絡を取ります。また患者さんやご家族の精神的サポートも行い、不安やストレスの軽減にも尽力していますね。他にも病院との入退院調整、ケアマネジャーさんとの連携、在宅医療制度を理解した上で適切なアドバイスをすることも役割の一つです。現場のスタッフは培った多様な経験とスキルを生かしながら、多岐にわたる重要な役割を果たしてくれているのです。
- Qこちらの在宅医療の特徴を教えてください。
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A
▲情報を共有することでスタッフ同士も助け合える環境を作る
在宅医療は、患者さんの状態に応じて早朝や夜間に訪問が必要なケースもあります。ですから、非常に柔軟かつ多様に対応できるように体制を整えました。また、スタッフ同士が協力して相互にサポートし合える環境の整備にも尽力しています。患者さんの回復や生活の質が向上することがあれば身近に実感できたり、患者さんから感謝されることがやりがいにつながったりするのはもちろん、女性スタッフが育児と仕事の両立を図れるといった環境も、仕事のモチベーション向上に大きな影響を与えると考えてのことです。スタッフが気持ち良く働けることで、患者さんへ良い診療を届けることができるでしょう。
- Q非常勤の医師も活躍していると聞きました。
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A
▲非常勤医師による診察の様子
非常勤医師も在宅医療において重要な存在で、さまざまな専門分野の医師が貢献してくれています。おかげで、緊急時や特定の治療が必要なケースも含め24時間対応が求められる在宅医療において、多様で専門的な医療を提供できる体制が整っています。当院も非常勤医師の力を借りながら、緩和ケア、循環器内科、小児科、外科、脳神経外科など専門知識を生かしたケアを提供しています。現在は放射線科、血液内科、認知症専門病院での勤務経験のある医師も協力してくれており心強いかぎりです。ちなみに非常勤医師は勤務するペースをある程度コントロールできるので、自分のクリニックや病院勤務と並行して、無理なく在宅医療に携われているでしょう。
- Q在宅医療を提供する際に大事にしていることは何ですか?
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A
▲患者が話しやすい雰囲気づくりを心がける
外来とは異なる部分を意識しています。在宅医療の患者さんは、複数の疾患を抱えていることが多いです。患者さん一人ひとりに寄り添ったケアを提供するためには、高齢者医療や緩和ケアといった多面的な知識と技術、さらにご家族とのコミュニケーションスキルなども必要となります。これらのスキルは外来での経験はもちろん、在宅医療に携わったことで身についたと感じていますね。また円滑な診療につなげるために、スタッフ間でのやりとりはチャットツールを用いて、よりコミュニケーションを取りやすくしました。ちなみに、このツールはスタッフや医師からも好評で、「働きやすくなった」「診療がスムーズになった」と言ってもらえています。
- Q在宅医療に対する今後の展望をお聞かせください。
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A
▲在宅医療の重要性と魅力について語る笹岡院長
これからの医師は、今必要とされている分野を見極めていかなければならないと思います。社会からどんな医療が求められているのか、常にアンテナを張っていくことが大切でしょう。そういう視点で考えると、在宅医療は今後よりニーズが高まっていく分野だと感じています。実際、病院に勤務し緩和ケアを行っていた医師が、患者さんやご家族の生活の質の向上にも貢献したいという思いから在宅医療に転向するケースは少なくありません。また在宅医療に興味を持ってくれる若い医師も増えている印象です。医師になって最初に在宅医療を経験し、知見を広めたいと考える人もいるようですね。一緒に充実した在宅医療につなげるために尽力できたら幸いです。