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笹岡 大史 院長の独自取材記事

春日部在宅診療所ウエルネス

(春日部市/春日部駅)

最終更新日:2020/04/01

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東武伊勢崎線の春日部駅西口から車で20分。春日部市の内牧地区にある「春日部在宅診療所ウエルネス」は、在宅療養する患者を支援する医療機関だ。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医でもある笹岡大史(ささおか・たいし)院長が、定期的に患者の自宅や高齢者施設を訪問し診療を行っている。大学病院の循環器内科部長として急性期医療以外にも介護施設長も経験し、介護に関する本も執筆している。どんな人でも笑顔で生活をするためには医療の力だけでは不可能と語り、多職種参加型のセミナーを主宰している。「どんな業界でも30年で環境は変わる。セカンドキャリアを考えない医療職は適切な医療が提供できない」と語る笹岡院長に、在宅医療の内容やこれからの抱負など、さまざまな話を聞いた。
(取材日2020年1月9日)

幸せに生き切るための在宅療養の文化をつくる

まずは診療所の開院からこれまでを伺います。

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当院は、社会福祉法人が運営する介護付き有料老人ホームに併設された在宅療養支援診療所です。開院当初はこの地域に在宅医療を行う医院も少なく、訪問看護ステーションも在宅医療の医師と連携していないなど、地域包括ケアの体制づくりが不十分なエリアでした。そのような状況からスタートし、地元のケアマネジャーさん等の支援を得ながら次第に体制を整えつつ、訪問件数を増やして現在に至っています。今では、患者さんを他の事業所に紹介する立場にもなっています。関わっている介護施設では、稼働率が良くなり、入院日数が激減し、介護度の高い方が入居できるようになっています。介護施設と在宅診療所で良い連携ができると離職率も下がり、経営状態も良くなると考えます。まだ課題はありますが、少しずつ良い方向へ向かっている実感があり、診療所経営には終わりがないと思います。

院長のご経歴についてもお聞きします。

私は北里大学医学部を卒業した後、医局の関連病院で研鑽を積み北里大学メディカルセンターで臨床准教授を務めました。その間、心臓カテーテル治療やペースメーカー埋め込みのような専門性の高い技術が必要な治療にも携わってきました。東京医科歯科大学では、遺伝子の基礎研究をし論文を発表しています。循環器内科部長に就任後には、慶應義塾大学で経営や介護・医療制度の学びを深め、介護施設からお誘いを受けて施設長に就任しました。そこは若いスタッフが訪問リハビリテーションに注力している施設で、意義ある世界があることの認識を新たにしました。介護施設では救急搬送を激減させ看取りまで行い、その後、精神科病院で内科勤務し、精神科での認知症治療の課題も経験しました。そして、これまでの多様な経験を生かすために、2018年4月に当院を開業しました。

小児科を含めた外来診察も行いながら、どのように在宅医療に取り組まれていますか?

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ほとんどが在宅診療ですが、午前中に予約外来を行ってから訪問診療に出かける日もあります。併設の有料老人ホームや特別養護老人ホームの患者さんも診療しています。在宅医療は高齢者だけではなく、非常勤で小児科外来を10年以上経験しているので、医師会の小児科当番医や、医療的ケア児の予防接種、医療材料の物品管理も行っています。また、若年の神経疾患やがんなど通院困難になった方も対象にしています。車いすの患者さんを毎週のように病院まで付き添いするご家族も大変です。在宅診療に移行すると、通院時間や待ち時間もなくなり、体調不良の時の往診も受けられ、ご家族の負担は非常に軽くなると思います。

終末期医療も本人と家族の「想い」をくみ取りながら

在宅医療を行う診療所の診療を受けるにはどのようにすればいいのでしょうか?

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病院やケアマネジャー、訪問看護ステーション、地域包括支援センターなどから、当院に連絡をいただければ速やかに調整が進みます。患者さんやご家族から直接相談もあります。介護保険の申請が必要な患者さんは、訪問診療後に主治医意見書を作成します。通院歴もない高齢者で加齢による衰弱から、部屋の掃除もできなくなり、十分な栄養管理もできず、救急車で搬送される一歩手前で相談があることも多くなっています。高齢者医療では「待ちの医療」では後手後手になり、訪問して状態の改善を図る「攻めの医療」が求められているのです。

スタッフについても伺いたいと思います。

当院の理念は「忠恕(ちゅうじょ)」、つまり思いやりや良心に忠実であるという姿勢です。この理念に共感するスタッフが残ってくれて、訪問看護師や介護施設長経験者など多彩なキャリアを持つメンバーで運営をしています。スタッフそれぞれが患者さんとの距離感が近く感じられ、じっくりと向き合う医療に関わりつつ、家庭も大切にできることが働きがいになっています。私自身のことを話しますと、親元を離れ高知県の明徳義塾に中学校から入学し、人間学を教えられたのが人生のベースになっています。医療の知識や経験はあって当たり前ですから、その中で人間的な成長をしていかなければ、人を相手にする医療介護の分野では役立てないという思いもあって「忠恕」を理念に掲げています。

在宅医療の中には終末期治療もあります。どのような診療姿勢で臨まれているのでしょうか?

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これまで人工呼吸器などの救命処置を必要とする医療も数多く経験しました。しかし、すべての患者さんに救命処置が必要ではありません。終末期医療は、患者さん、ご家族とじっくりと向き合いながら対話を積み重ねながら進めます。多くの方が家に帰りたいが、在宅医療を行う医師を紹介されることなく病院で最期を迎えることが多い時代です。ご本人の意識がしっかりして、食事も食べられている段階で、在宅医療にバトンタッチすることが大切だと思います。その時期が来れば静かにご家族に囲まれながら旅立っていく。「人は歳とともに弱り、いずれ旅立つものだ」という生き様にご家族が寄り添うことも、限りある命を知るために大切なことではないでしょうか。医療は病気を治すことと誤解をされますが、治せない病気や障害と向き合いながら、安心して人生を歩めるように伴走することも大切な使命です。

体だけでなく、心の領域にまで踏み込んでサポート

訪問診療で対応しておられる「緩和ケア内科」の内容は?

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がんなどの終末期の肉体的な痛みを取り除くことが医療の主体なのですが、患者さんには精神的、社会的なことから、スピリチュアルな苦痛が大きく関わっています。その部分に適切な医療を提供していこうというのが、本来の緩和ケア内科です。薬を使った疼痛管理はしますが、医師の人間的な包容力が大切だということを患者さんから教わることが多いです。例えば、愛妻を亡くした患者さんの喪失感や不安感のような背景因子は素通りで、食事を食べないとか、薬を飲まないなど、わがままでどうしようもないといった、その場の現象論に目を奪われてしまいがちです。心の部分がすごく疎かになっている。ですから心の部分も、しっかりとサポートしていこうというのが当院の方針で、毎月、人間学を学ぶ職員勉強会を行っています。

在宅診療における、働きがいについてもお聞きしたいと思います。

忙しくても、これまでのキャリアを生かせて、皆さんのお役に立てているというのが最高の喜びです。医師のキャリアにおいて治療や救命主体で、すべての人間がお世話になる終末期医療に関わらないことは、一番大切なことを、やり残したような思いになることがあります。そこが医師としての腕の見せどころでもあり、上手な先生が診ると患者さんは本当に満足そうな表情で旅立っていかれる。亡くなる数日前に気持ちが良いと言われた方がいます。医療には看取り方というものがあり、教科書を読むだけで実践できるものではありません。ご家族もそういう最期を望んでいらっしゃいます。私自身が最高だとは思っていませんが、患者さんに教わりながら経験を積み上げていきたいですし、常にベストサポートができる医師でありたいと思っています。

今後の抱負をお願いします。

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在宅医療の文化をつくることが私たちの使命だと思います。社会の変化に伴って医療も変わっていかなければなりません。これから、医師も患者さんから選ばれる時代になっていきます。現在の超高齢社会の中で、当院は薬を処方するだけではなく、いろんな相談を持ちかけてもらって、納得・安心できる環境の中で、地域の笑顔を増やすことのできる医療を提供していきたいと思っています。

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