山村 恭一 副院長の独自取材記事
いつもジェネラルクリニック
(相模原市南区/古淵駅)
最終更新日:2025/04/25

JR横浜線・古淵駅徒歩2分の医療ビルにある「いつもジェネラルクリニック」。内科、外科、皮膚科、小児科、救急科などを掲げ、患者ファーストで休診日を設けず平日夜や土日祝も診療にあたる。金児民(きむ・あみん)院長が大切にする「ヒューマンラブ」の理念に共感し、2018年より診療に携わってきたのが山村恭一先生。これまで救急・集中治療の現場で研鑽を積んできたエキスパートだ。2024年4月に同院常勤医となり、2025年2月には副院長に就任し、その理念のさらなる実現に力を注ぐ。「重篤な患者さんを診療してきた現場とは一番遠いといえるクリニックの診療に、最初は戸惑いも感じました。しかし、今は大きなやりがいを感じて自然体で診療に従事できています」と話す山村副院長に話を聞いた。
(取材日2025年3月17日)
「いつも」気軽に立ち寄れて、受診しやすいように
まず先生のご経歴と、クリニックとの関わりを教えてください。

これまで都立多摩総合医療センターや千葉大学医学部附属病院、都立小児総合医療センターなどの医療現場を中心に、小児から成人までの重症患者さんたちの診療経験を積み上げ、日本救急医学会救急科専門医の資格も取得しました。その傍らで、初期研修時の先輩だった金児民(きむ・あみん)院長からお声がけいただき、当院の立ち上げ当初から非常勤で診療に携わりました。2024年春からは軸足をこちらに移し、常勤医として週3日以上は外来を担っています。また、救急科専門医としての腕や能力を極力維持するため、週に1度総合病院のERで日当直勤務を継続し、救急医療にも携わっています。
診療体制が特徴的ですね。
クリニック名に「いつも」とあるとおり、休診日や昼休みを設けず、土日祝日も診療しています。月・水は21時までとし、夕方以降に具合が悪くなりがちなお子さんや、会社帰りの方も気軽に受診していただける体制です。安定的に二診制、三診制を取れていますが、それには継続的に十分なスキルや熱意を持つ医師・スタッフが多数集まることが不可欠。この体制こそ実現が難しいと思いますが、金院長の理念に賛同し、その求心力と人柄に惹かれて集まったチームメンバーが、実現し続けています。そんな環境で、私も大きなやりがいを持って業務にあたっています。
これまでのご経験とこちらでの診療では、異なる部分も大きいのでは?

私がいた救命救急センターとクリニックとでは、同じ医療でも、一番遠い対局的な現場といっても過言ではないです。頭でわかっていても、当初はギャップにかなり驚きました。救急医師時代は、私たちの処置で命の危機にある人を助けるんだという、ある意味わかりやすい使命感がありました。しかしクリニックを受診するのは多くが処置や特別な治療を行う必要がほとんどない病状の方。磨いた能力を発揮する場面もほぼなく、自分が何をすべきか戸惑いましたが、患者さんに向き合っていくうちにやるべきことが見えてきました。当たり前ですが、意味なくクリニックを受診される方はいません。何に困っていて、どんな情報を与えてあげるのが良いか、例えば病気の原因や薬が必要な理由をわかりやすくお伝えすることで、患者さんの安心感はぐっと上がると思います。「薬を出して終わり」ではなく、ご自身の体や病状を理解してお帰りいただくのが裏テーマです。
自然体で、人としてより患者の日常に寄り添う診療を
これまでとは違うやりがいを見出されているのですね。

ふと思い出した救急医師時代の話ですが、救急搬送された患者さんは、私たちが蘇生処置や集中治療室での治療で何日もつきっきりになるわけです。しかし状態が安定し病棟に移動したり退院されたりした後は、実際にお会いしても「どなただったかな?」と思うことが日常茶飯事でした。検査データの記憶は鮮明なのに、肝心なお顔を覚えていないんです。それは、患者さんという“人”ではなく、“病気”を相手にする日々の連続だった証拠であり、関係を築く余裕がなかったということでしょう。多くの重症患者さんに対応する現場ではある程度仕方ないですが、少し虚しさを感じていました。実は、他科のドクターが患者さんとしっかり関係構築されている姿を見て憧れたことも。ですが、今はまさにその関係性を実感しながら診療にあたれています。もちろん救急医師として、リスクの先にある状況を目の当たりにしてきた過去の経験も生かすよう努めています。
小児診療の経験もお持ちと伺いました。
医師になりたての頃は、漠然と小児科を専門にしようと思っていたこともあったんです。それで縁あって、都立小児総合医療センター救急科でも経験を積む機会に恵まれました。専門性の高い小児救急医師たちに師事し、その方々からの指導・トレーニングを享受できたのは、今振り返ってもかけがえのない経験です。当院は子どもの患者さんの比率がとても高く、主訴は風邪やアレルギー疾患、軽度の外傷が大多数ですが、その中にあるリスクを見逃さず必要な医療へつなげることが大切です。もちろん、私は小児科医師ではないので、専門性を要する方は適切な医療機関へ紹介しますが、今後もプライマリケアに従事する医師として、お子さんたちの診療に力を注いでいきたいです。ある意味で、医師を志した当初の夢もかなっている形ですね。
患者さんと接する際に心がけていることを教えてください。

本格的にクリニック診療に携わってまだ1年程度で、偉そうには言えません。しかし、この1年を経て何となく考えているのは、自然体を大切にしたいということです。最初は、「患者さんから好かれたほうが良いかな」とか、評価を気にしすぎるがあまり、少し無理をして自分を演じていたところもありました。しかし、今はそんな場当たり的な好印象を狙っても意味はないと感じています。優しさや愛情は最大限持ちながら、医師としてきちんとお伝えすべき病状や治療の見通しを丁寧に伝えるからこそ、患者さんから信用されるのではないでしょうか。
ピンチを救うヒーローのような姿に憧れ救命救急の道へ
医師を志したきっかけと、救急の道に進まれた理由は何ですか?

父が外科医師、母が看護師という家庭で、幼い頃からそのハードワークを見て育ちました。医師になれと言われたことはないですが、自然と志していましたね。数年間祖父の在宅介護に携わった経験もきっかけの一つ。看護師の母の存在もあり、自宅でハイレベルな看護が実践されていました。私は医師になりましたが、医療の根源は看護だとも思っており、看護師という職業へのリスペクトは強いです。救急の分野に飛び込んだのは、初期研修の経験からです。病棟で急変があると、救急科医師たちがすぐ駆けつけ、蘇生処置にあたります。初期研修医の私は何もできず困惑する中、的確に処置を進める先生たちの姿がヒーローのように見え、単純にかっこいいと思いました。そこから救急医師を志すようになりました。実はその時の医師の一人は、当院の前副院長で現在は千葉院院長の望月健太朗先生でした。振り返ると不思議な縁や運命を感じます。
休日はどのように気分転換されていますか?
若い頃ならあり得ないですが、年を取ったのか、神社仏閣を巡るなど、癒やしを求めて静かな時間を過ごすことが増えました。図書館で読書や、資格試験の勉強をすることもあります。医学部入学以来、医学知識の習得に時間を取られてきたあまり、一般常識が抜け落ちているところがあると感じます。それを補うためにも、教養を身につける一環で資格試験を受け始め、先日はFP(ファイナンシャル・プランナー)試験に合格しました。救急医師時代には過酷な生活リズムで心身ともに酷使してきましたが、今は意識してケアにも努めています。
今後の展望や、読者へのメッセージをお聞かせください。

当院にはすでに急性期疾患の患者さんが多く来られていますが、そこから一歩先の、本格的な救急医療を実践していこうと、歩みを進める構想があります。実現したら役割を果たせるよう、引き続き腕を磨き続けたいです。また個人的な話ですが、休日に祖母を連れていろんなクリニックを受診する時、患者さんの立場になると医師に話しかけづらかったり、威圧的に感じたりすることがありました。そうすると当然、受診しづらくなります。当院ではそうした部分をなくしていき、とにかく何でも相談できる場所として気軽に足を運んでいただきたいですね。患者数がとても多いので、時には十分なお時間を確保できない場合もあり心苦しいですが、フレンドリーなスタッフたちといつでもお待ちしています。