篠田 健一 院長の独自取材記事
しのだ整形外科
(大阪市大正区/大正駅)
最終更新日:2025/05/08

安心できる住環境に欠かせない地域医療の一翼を担えればと「しのだ整形外科」開業に至った篠田健一院長。大正区役所の隣に立つ団地1階に昨年オープンした医療モール「ちしまメディカルパーク」内で2018年2月から診療を行っている。各クリニックだけでなくコミュニティー広場も併設したこの施設では、健康講座や各種イベントが定期的に開催され、地域のふれあいの場としての役割も担っているようだ。総合病院において整形外科部長も務めてきた篠田院長は、新生児から90歳代まで幅広く診療し多くの手術を手がけてきた。豊富な経験と実績、四半世紀を医療に捧げてきた篠田院長に、診療への思いやこだわり、今後の展望など話を聞いた。
(取材日2018年10月15日)
若い世帯にも高齢世帯にも選ばれる街づくりを担う
医師をめざされたのはなぜですか?

子どもの頃に読んでいた、手術の腕は一流だけど医師免許を持っていない主人公を通して「医療とは?」を問う漫画に影響を受けたことがきっかけで、全身を診ていく医科に関心を持つようになりました。実家は祖父の代から続く歯科医院でしたので迷いもありましたが、高校生の時に思いきって医師になりたいと父に打ち明けたんですね。すると父が、やりがいも将来性もある世界だからと快く賛成してくれ、背中を押してくれたので、関西医科大学に進学し、医師の道へと踏み出すことができました。
これまでの経緯について教えてください。
大学を卒業後医局に入局して研修期間を経た後は、複数の系列病院で勤務しました。私は専門家として1つのパーツを突き詰めて診るよりもオールマイティーな医師に魅力を感じ、あらゆる症状の診療に携わってきました。高齢の方の転倒による骨折では手術でしか対応できないケースも多く、勤務医時代の25年間は毎年多くの手術を担当していました。また、分娩も行う病院では、先天性股関節脱臼や手足の数が少ない症例を早くに見つけて専門機関へ紹介する、新生児健診も担ってきました。そうした経験は開業後も新生児や小児の診療に役立っています。歩行障害や足の形がおかしいと心配して来られるお母さんもいらっしゃいますのでね。
なぜこの地を選ばれたのでしょうか?

開業を考え始めた頃、たまたまここに医療モール計画があると聞いて気になって見に来たとき、住民の方にどんな科を望んでおられるかなどいろいろ尋ねてみました。みんな親切な方ばかりで、これまでの勤務地とも似た庶民的な親しみやすさがあると感じましたので、この地でお役に立てるよう尽力したいと思ったのです。現在、患者さんの層は60代以上の方が約7割で加齢に伴っての症状、特に膝・肩・腰に悩みを抱えての来院がほとんどです。スポーツではジョギングによる足の裏の痛みや、アキレス腱の炎症が多いですね。そして驚いたのは大正区はバレーボールが盛んな地域で、肩や膝を痛めて通って来られる方が結構おられるということです。ママさんバレーだけでなく男性の社会人チームもあり、大会に向けたハードな練習で無理をしてしまうようですね。
専門用語を控え、わかりやすい説明で患者に伝える
開業されて9ヵ月ですが、院内の様子はどのような感じですか?

医療機関にはシーンとした静かなイメージがあると思うのですが、当院のリハビリテーションフロアは基本的に笑いがあり、いつもにぎやかですよ。おしゃべりは通院の楽しみの一つなのだなあと、いつも感じさせられます。それに定期的に通われる患者さん同士、すっかり仲良くなられたようで今では一緒に遊びに行かれるなど院外でも交流されているようですね。また、スタッフはみんな地元住まいですので患者さんとも話が合いますし、知り合いの方が来院されることもあるようです。先日の強風に見舞われた台風の後はその話題一色で、地区ごとの被害状況や家の状況などを気遣う地元ならではのつながりが感じられました。患者さんのことをよく知ってくれていてフレンドリーで親しみやすいスタッフたちは、私にとっても頼りになる存在です。
診療において気をつけておられることを教えてください。
正しい医療を提供することが大前提ですが、そのことを患者さんが理解されていなければ、自分の受けている治療で良いのか不安になられると思うのです。ですから専門用語を控えたわかりやすい説明でお伝えすることを大切にしています。ただし一度に容量多く話すのはよくありません。あまり知らない分野についてたくさん聞かされても、かえってわからなくなってしまうからです。以前、入院して手術を受けられた患者さんに、回復後半年もたってから「結局、私はどこが悪かったんですか?」と尋ねられたことがあります。手術前からじっくり丁寧に説明していたのですが(笑)。それからは事細かにというより省略しながら絞り込んでお伝えすることを心がけています。もちろん詳しく説明してほしいタイプの人には専門的なこともお話ししています。
それぞれに配慮されていることが伺えます。

この整形外科という分野は「痛み」という形で症状が出てくるので、治療による変化が患者さんにとってわかりやすい科です。しかし、時間をかけて良くなることが望めるものだと、実感を得にくいこともあります。その場合、例えば「腰が痛くて動けない」と来院された患者さんであれば、まずどれくらい歩けるのかを聞いてカルテに記入しておきます。そして数ヵ月後に同じ質問をして、その時との違いをお伝えすると患者さんにも実感していただけるので、つくづく伝え方って大事だなと思わされますね。
通いやすい配慮にあふれた全年齢層のためのクリニック
クリニックの特徴など教えてください。

開業にあたり設備はできるだけ種類豊富に備えたのですが、機械による治療を中心にするかスタッフによる施術をメインにするかは迷いがありました。ですが、ふたを開けてみると人対人で会話もできる施術のほうが圧倒的に需要があったのです。その結果を受けてスタッフによる施術を現在3人体制にして、より多くの患者さんの希望にお応えできるよう努めています。また、当院では低周波・中周波での治療を行うことで、幅広い患者さんの治療のニーズにお応えするようしております。あと、足の筋肉を鍛えたいというご要望からエアロバイクは2台に増やし、体幹を鍛えるためのツイストチェアーも備えました。
学生時代のことや、休日の過ごし方など教えてください。
大学時代は空手部でしたが、もともとスポーツよりもスペースシャトルや宇宙開発などに関心があったので、中学・高校は天文部でした。今の楽しみはおいしい物を食べに行くことで、最近では自宅周辺にオープンして気になっていたジビエ料理のお店にも足を運び、家族と味わってきました。悩みはおいしい料理にはカロリーが高いものが多いということですね。代謝は良いほうなのですが、それ以上に食べてしまうので、体を動かす必要を感じるとジムで運動しています。患者さんでも膝に負担がかかる懸念がある場合は食事コントロールを促さないといけないのですが、いかんせん私自身節制が苦手なほうなので強くは言えないのです(笑)。
読者へのメッセージや、今後の展望について聞かせてください。

当院では健康維持の手助けとして十分なケアが行き届くよう、リハビリ施設を充実させています。また、小児やスポーツ障害、高齢の方が多く抱える症状まで幅広い診療を提供していますので「たいしたことないかも」とご自身でしまい込まずに、まずは受診してみてください。そして、この医療モールも上手に活用してほしいです。お年寄りの方ですと広いスペースを何周か歩くだけでも良い運動になりますし、テーブルや椅子、雑誌も備えられたコーナーは休憩スポットとしてご利用いただけます。快適な空間にある施設内に当院を構えましたので「通いやすくて頼りになるクリニック」として地域に浸透していきたいですね。