有馬 慶太郎 院長の独自取材記事
茗荷谷キッズクリニック
(文京区/茗荷谷駅)
最終更新日:2025/12/02
茗荷谷駅から徒歩1分のビル地下にある「茗荷谷キッズクリニック」。有馬慶太郎院長は、医学生時代に聞いた「一人の赤ちゃんを救えればその子の100年の人生と、さらにその子どもへとつなげていける」というメッセージに共感して小児科を選んだという。初期研修で小児がんを数多く診療し、抗がん剤治療や移植医療に携わった。その中で「心臓を診られないと子どもたちの全身管理はできない」と思い至り、循環器の研鑽を積んだ後に、2018年に同院の院長に就任。現在は循環器疾患から耳鼻咽喉科領域、発達の相談まで「小児科分野の困り事は何でも受け入れられる場所」をめざして診療している。穏やかで優しい語り口の有馬院長に、地域医療に携わる思いを聞いた。
(取材日2025年10月28日)
一般小児科疾患から小児循環器疾患、アレルギーに対応
茗荷谷で診療を始められた経緯をお聞かせください。

いつかは地域医療に携わりたいと思っていたところ、以前の職場の後輩に勧められた縁もあってこの地で診療することになりました。ここは茗荷谷駅から徒歩1分という立地の良さに加え、近隣の医療機関との連携も取りやすい環境であることが良いポイントだと感じたんです。開院から8年がたちましたが、現在も変わらず、「ここに来て良かった」と思っていただけるクリニックをめざしています。クリニックはビルの地下にありますが、ベビーカーでそのまま入れる、スロープのある入り口も裏手に用意し、キッズコーナーではアニメが見られるようにするなど、お子さんと親御さんが通いやすい環境づくりにも力を入れています。
医師を志し、小児科の道を選んだきっかけは何ですか?
高校生の時、夕食を食べながら何となくテレビを見ていたら、チェルノブイリ原発事故の後、子どもの甲状腺がんが増えていて、日本の医師が現地で調査やフォローアップを続けているという報道があったんです。海外で活躍している医師の姿が純粋にかっこいいなと思い、当時は漠然と医師という仕事に憧れを持ちました。大学入学後、小児科の講義で「子どもの命を救えたらその子の100年の人生、さらにその次の子どもへとつなげていける」という話を聞いて、一人のお子さんを助けることで日本の未来を担う宝を育てることができる、そのやりがいの大きさに惹かれて小児科を専門に選びました。
開業までのご経験について教えてください。

初期研修を受けた聖路加国際病院では小児がんを多く診て、抗がん剤治療や移植医療に携わりました。その中で、一つの専門に特化した知識だけではなく、もっと多くの知識を身につけないと子どもたちの全身管理はできないと痛感していました。最終的に心不全で亡くなってしまう子も多かったため、「心臓を診られないといけない」という考えも強くなっていたんです。それから、日本赤十字社医療センターで小児循環器の専門性を高め、診療経験を積みました。加えて、日本小児科学会小児科専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医の資格も取得し、開業後の今は幅広い小児疾患に対応しています。
超音波検査機器を活用し、迅速に適切な治療へつなげる
具体的に、どのような症状や相談に対応されていますか?

一般小児科、小児循環器内科、アレルギー科の疾患はもちろん、皮膚疾患、中耳炎や鼻の吸引、舌下免疫療法といった耳鼻咽喉科分野、発達の相談まで幅広く対応しています。小児科分野の困り事は何でも受け入れられる場所でありたいと考え、感染症や予防接種、健診、消化器疾患なども日常的に診ています。最近は発達に特性のあるお子さんの相談が増えていて、お話を伺いながらアドバイスをして、必要に応じて児童精神科の先生につなげるなど、患者さんの希望に合わせて橋渡しをする役目も担っています。どんな病気でも、ここでできる範囲のことはすべて対応しますし、より専門的な治療が必要な場合は基幹病院へ紹介します。病院勤務時代に診ていたお子さんが、引き続きこちらに来てくださることもあり、地域に根差した診療を続けています。
小児循環器の専門家として、特に力を入れている診療についてお聞かせください。
先天性の心疾患がある、心雑音を指摘された、不整脈があるといったお子さんも診ることができます。小児循環器の専門家を探して、インターネットで検索して近隣の区から越境して来られる親御さんもいらっしゃいます。例えば、心臓に合併症が起こる場合がある川崎病などの疑いで来られる方もいます。当院には診察室に超音波検査機器を備えており、その場で心臓を詳しく診ることも可能です。あまり導入されているクリニックは多くないですが、超音波検査機器は早期発見・早期治療につなげるための「第3の手」として活用したいという思いで導入しました。心臓の病気は、診断が遅れると重篤になる可能性もあります。病院ではそれで苦しむ子をたくさん見てきたので、当院では「早く診断をつけて迅速に適切な医療につなぐ」ということを徹底しています。
診察の時に大事にしていることは何ですか?

治療や検査がどのようなものなのか、きちんとご理解いただけるように十分に話すことを大切にしています。「自分ならこう言ってもらえたら納得できるな」というのをイメージして、しっかりと見立てを伝えた上で検査や治療に進むように意識しています。理解できる年齢のお子さんにはご本人にも説明し、納得してもらってから注射や検査を行うように心がけています。また、重症度の見極めも重要で、今の症状が院内で対応できる範囲なのか、すぐに高次医療機関につなげたほうがいいのか、その判断を正確に行うことも大事にしています。
子どもたちの成長を見守れることが一番の醍醐味
スタッフの皆さんとの連携や、クリニックの雰囲気づくりについても聞かせてください。

スタッフがお互いにストレスなく働けるよう、思ったことや感じたことは包み隠さずに話せる環境づくりを大切にしています。医師とスタッフの間に壁はなくて、「先生、こういうふうにしたほうがいいんじゃないですか?」とフラットに会話できる関係性が築けていますね。子ども好きなスタッフばかりで、開院当時から働いてくれている人もいて、気心が知れているんです。
小児科医師として喜びを感じるのはどんな時でしょうか?
小児科の醍醐味は、やはり子どもの成長を長く見守れることですね。開院から8年たち、最初に来た赤ちゃんたちが小学校に上がっていて、大きくなったなと感じます。医師になって21年、初期研修の時に診ていた赤ちゃんは今ちょうど成人を迎えるタイミングで、成人まで見届けられた、責任を果たせたという思いがあります。まだ継続診療が必要な方は成人の診療科に引き継ぎをしていますが、基本的には自分が診られる範囲であれば最後まで診て、完治をめざすところまでしたいという考え方です。以前勤めていた病院から診ている患者さんには、先日、受験の悩み相談を受けたんですよ。一時はとても苦しんでいた子どもたちが大きくなって、笑顔を見せてくれたら、これ以上うれしいことはありません。
読者へのメッセージをお願いします。

小児科は、できるだけハードルは低く、間口を広くして、些細な症状でも心配事があれば相談に来ていただきやすい雰囲気や環境をつくっておくことが何より重要だと思っています。お子さん本人や親御さんが納得できるような説明を第一に、安心して継続して通っていただけるよう努めていますので、お気軽にご相談ください。もしもお子さんのことで気になることがあったら、取りあえずご来院ください。迅速に判断して適切な治療につなげますので、「どこで診てもらったら良いのかな」「こんなことで相談したら悪いかな」と思わずに、「何でも相談窓口」として当院をご活用いただけたらと思います。

