青山 裕美 先生の独自取材記事
宮前平医院 歯科
(川崎市宮前区/宮前平駅)
最終更新日:2024/06/07
宮前平駅前の整形外科医院に併設された「宮前平医院 歯科」。建物の奥が歯科スペースになっていることから、歯科医院の患者はもちろん、「整形外科の治療のついでに歯の治療も」という患者も多い。歯科医院が怖いと感じている人がリラックスして治療を続けられるように、さまざまな工夫を凝らして日々の診療を行う青山裕美先生は、勤務医時代の訪問歯科診療の経験を生かしながら、丁寧に相手に寄り添う診療を実践。一方で、得意とする口腔外科の知識と技術による歯周外科治療や顎関節症の治療など、幅の広い治療を提供している。穏やかな笑顔が印象的な青山先生に、同院での診療内容や新たな取り組みについて聞いた。
(取材日2023年6月1日/修正日2024年5月22日)
むし歯や入れ歯治療から歯周外科治療まで幅広く対応
どのような患者さんがいらしていますか?
当院の患者さんはご近所の方が中心で、最近は、新型コロナウイルス感染症流行の影響でしばらく歯科治療を控えていた人や、定期検診をそろそろ復活しようかなという人も増えてきました。ご相談内容としては、むし歯や歯周病、歯肉が腫れている、痛みがある、親知らずなどに関することが多いですね。ほかには、顎の関節の痛み、口が開けにくい、音がするなど顎関節症を疑う症状を訴える人もいらっしゃいます。ここは父が開業している整形外科医院で、そこに併設する形で歯科医院を開業したので、例えば、外出中に転倒しけがをして、かつ前歯が当たってグラグラしている人を、整形外科で手当てをしてからこちらでお口の中を縫ったり、歯を固定する治療を一度に行ったりすることもできます。
力を入れて取り組んでいる治療はありますか?
現在力を入れているのは歯周治療です。新型コロナウイルスの感染拡大以降、免疫力の低下を気にする人が増えていますが、免疫力の維持や向上のためには歯周ポケットをきれいにすることが重要になってきます。当院では、定期検診で以前との変化や、きれいな状態を維持できているかなどをチェックした上で、クリーニングと歯磨き指導を行っています。歯磨き指導は歯ブラシや歯間ブラシのほか、普通の歯ブラシでは届きにくい所には、小さな毛束のタフト歯間ブラシを使用するなど、患者さんの口腔内の状態に必要な道具や使い方をお伝えしています。むし歯や歯周治療はいつか卒業する日が来ますが、その日までにどれくらいきれいに磨けるようになっているか、ご自身でどれくらい良い状態を維持できるかわかっていただくため、毎回口腔内を写真で記録しお見せしています。最初の状態が悪い人ほど、変化を実感していただければと思っています。
歯周外科治療にも対応されているそうですね。
歯を支えている骨の周囲に炎症が起こっている場合は、もととなる組織を除去して閉じる手術や、自費診療にはなりますが、骨を支える土台となる部分に材料を入れて特殊な膜を乗せて歯周組織の再生を図る治療を行います。歯石は通常歯の周りにつきますが、歯周ポケットが深くなると下のほうまで付着してしまっています。当院では2回目のお掃除で器具を使って深いポケットの中の組織を除去し、それでも経過が悪い人は麻酔をして歯肉を切開し中が見える状態でレーザーをあてていきます。あとは歯ブラシや歯間ブラシを使った家でのお手入れになりますが、良い状態を維持するためには、適切に歯磨きをしていただくなど患者さんの協力が不可欠になります。
歯科が怖い人もリラックスして治療できる環境を整える
むし歯や入れ歯治療についてはいかがでしょうか?
入れ歯は、とめ金をかけている歯がなくなってしまうと新しく作り直さなければならないため、お口の中の状態に合ったよく噛める物を使っていただきたいです。自己流で使っている人も多いですが、正しい使い方をすることも、今使っている入れ歯をできるだけ長持ちさせるコツかなと思います。そして、入れっ放しではなく定期検診を受け、メンテナンスをしましょう。むし歯については、穴が開いている、詰め物が取れたということで来る人がいらっしゃいますが、ご自分でデンタルフロスを通していて、ここを通すとよく毛羽立つとか、よく物が挟まるということがあれば、早めにご相談ください。むし歯は早く見つけることが大切です。
治療方針である「痛くない」「怖くない」「安心できる」の3つはどのように取り組んでいますか?
「痛くない」は治療全般もそうですが、特に気を使っているのは麻酔の注射ですね。機材を使うことで麻酔の注入速度がいつも同じ速度で保たれているので、麻酔されていることを気づかないかもしれません。「怖くない」は、主に雰囲気づくりですね。普通のお部屋のような診療室にしていて、待っている間ものんびりできる環境をつくっています。治療用の椅子は、海外の自動車メーカーの車のシートと同じ革が張ってあって座り心地がいいんですよ。「安心できる」については感染防止対策の一つとして、バキューム装置で歯の削りかすが拡散する前に吸い取っています。治療後は口腔外バキュームを5分間作動し、周囲の空気をきれいにしてから次の方の準備をしています。
患者さんと接する際に心がけていることはありますか?
患者さんがだんだん高齢になってくると、ついつい手を貸したくなることがあるのですが、スタッフにも伝えて、時間を短縮させるために急かすことなく、多少時間がかかってもご自分でできることはやっていただくようにしています。また、認知症のある人はぱっと見ただけではわからないのですが、診察室に入ってきてからのちょっとした行動から「いつもと様子が違うな」と、気づくことがあります。そういった変化を見逃さず、患者さん一人ひとりに合った接し方をしていければと思います。
栄養や生活環境などトータルサポートで良好な口腔内に
今後、新たに取り組んでいきたいことはありますか?
お口の中の状況を改善するためには体質や食事についても何か提案できればと考え、薬膳の勉強を始めました。これからは栄養に関する情報を院内の掲示板でお知らせしていきたいです。以前、訪問歯科診療をしていた時に口の周りの筋肉を鍛えるための体操の指導もしていたので、年齢的にむせる回数が多かったり、唾が飲み込みづらかったりという人には、舌の体操やマッサージにも対応しています。今はまだ難しいですが、もう少しして新型コロナウイルスが完全に落ち着いたら、必要な人にお声がけをして、教室を開きたいですね。将来的には訪問歯科診療も、当院に通うのが難しくなった患者さんから始めていければと考えています。
先生が栄養に着目したきっかけは何でしたか?
勤務医時代の訪問歯科診療で、歯のない所に入れ歯をお作りした患者さんに、「味がしない」と言われることがありました。入れ歯を作るだけでは足りないことがあるとわかり、歯を診るのはなんて難しいのだろうと感じましたね。そんな時、移動中たまたま立ち寄ったコンビニで栄養の本に目がとまり、読んでみると、これは役に立ちそうだと思ったんです。消化不良や拒食、飲み込めない、眠れないなど、高齢になるとさまざまな症状が複数起こります。そういう方たちに、それぞれの症状に合った栄養素や食べ物をアドバイスできればいいなと。献立の助けにもなりますしね。「食べること」を別の視点からサポートすることで、口腔内を良い状態に持っていければと考えています。
最後に地域の皆さんへのメッセージをお願いします。
訪問歯科診療をしているとわかるのですが、骨粗しょう症の人のご自宅でベッドの位置を見てみると、日の差さない所に配置してあることがあります。自分で動ける人は日中外に出ることで日に当たることができますが、ずっと家の中にいて日に当たらずにいると、体調もさらに悪くなってしまうでしょう。病気と生活習慣、環境は無関係ではありません。手の届くところに歯磨きセットが置いてあっても磨くほどの元気がないという人であっても、ごはんを食べる以上は歯磨きも頑張っていただけるよう、環境にも目を配りながら、口腔内から健康を支えていきたいですね。お口の中のことで気になることがあれば気軽にご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とは歯周組織再生療法/8万円~