千原 明得 院長の独自取材記事
元町デンタルクリニック
(岐阜市/名鉄岐阜駅)
最終更新日:2024/08/05

名鉄岐阜駅を最寄りとする「元町デンタルクリニック」は、2012年に千原明得院長が開業した。千原院長にとっては、2008年に開設した神奈川県内の歯科クリニックに続き、2つめ目のクリニックとなる。虫歯や歯周病治療、根管治療などの一般歯科、インプラント治療、予防歯科などの歯科診療に対応。そのすべてにおいて「真に患者のためになる治療をしたい」と語る千原院長。先進の機器や設備を積極的に導入し、精度の高い検査・診断に注力。患者と対話する姿勢を大切にし、診断や治療方針の説明にじっくり時間をかけていくのが特徴である。クリニックでの診療に加えて、訪問診療や地域での講演活動など多忙な日々を送る千原院長に話を聞いた。
(取材日2024年2月28日)
スタッフ一丸となり、患者ファーストの治療に尽力
最初に、クリニックの特徴や治療方針をお聞かせいただけますか?

小児から成人まで幅広い年齢層が来院されますが、中でも40代後半から70代の中高年が割合としては多いです。患者さん一人ひとりに納得いただける診療をモットーに掲げており、疾患の原因は何なのかをきちんと探っていくことを重視しています。例えば、咬合力が強すぎたり、歯並びが悪くて歯にひびが入り、そこに虫歯ができるケースもあります。そういった場合は、病巣に対し「削って」「詰めて」という治療を行うだけでは不十分です。歯列矯正するなどして虫歯ができる原因を取り除かない限り、改善は難しいのです。このような症例では、近隣の矯正専門の先生と連携して治療を進めていくこともあります。原因を明らかにすることなく行う治療は結局のところ、治療費もかさみますし、患者さんにとってデメリットが多くなります。精度の高い検査・診断・治療を行うこと、その重要性を患者さんにもしっかりと理解していただくことを大切にしています。
感染症対策も徹底していると伺いました。
歯科医院は感染リスクの高い仕事をしますので、飛沫や血液感染に対して最大限の対策をしています。器具は可能な限りディスポーザル(使い捨て)の製品を使っていますし、滅菌する必要がある場合も、基準が厳しいとされているヨーロッパ基準の滅菌器を使用しています。ラバーダムについては、根管治療だけにとどまらず、虫歯治療でも使用していますが、感染防止のためには当然のことだと思っています。患者さんに「ラバーダムを使って治療をしてもらってよかった」と言っていただけるような治療ができたらうれしいですね。ほかにも、チェアの間にパーティションを立てて、半個室の空間としたり、院内で治療やうがいに使用する水にろ過装置を導入するなど、できる限りの対策を尽くしています。
そういった取り組みには、スタッフの皆さんの尽力も大きいのでは?

スタッフには感謝の言葉しかありません。現在、4人の歯科衛生士が在籍していますが「患者さんファーストの治療をしていきましょう」と常々、伝えています。一人ひとりがさらに成長できるように外部講師を招いての勉強会を行ったこともありますし、外部のセミナーにも積極的に参加してもらっています。優秀な歯科衛生士がいないと務まりませんから、今後も意欲あるスタッフを増やしていきたいですね。
先端の設備と患者との対話で適切な治療をめざす
治療を行う上での心がけはありますか?

初診ではエックス線や口腔内写真撮影、歯周病検査を行った上で、検査結果と治療方針を説明していきます。治療のメリットだけではなく、デメリットも包み隠さずお伝えしています。例えば、インプラント治療の説明の際に「治療後よく噛めるようになることが期待できる」というメリットを伝えるだけでは不十分だと思います。治療後のメンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎というトラブルが起こるリスクが高まることや、インプラントは入れることより、抜くことのほうが大変だという事実もきちんと伝えることを心がけています。説明不足の結果「こんな治療を受けたくなかった」と患者さんに思われてしまうことは、自分だけでなく歯科全体の信用をなくすことにつながるので、そうならないよう、しっかりと時間をかけて説明をしています。多くの選択肢から最終的には患者さん自身に答えを出してもらいたいと思っています。
患者さんとの対話を重視されているのですね。
患者さん1人あたり1時間以上、2回~3回に分けて説明を行うこともあります。体の不調で医療機関にかかった場合、初診当日に大がかりな手術を決断して帰ってくることってめったにないですよね。歯科も同じだと思っています。治療開始前だけではなく、治療後の説明もとても重要視しており、カウンセリングルームに場所を移した上で、十分な時間をかけるようにしています。この方針は、メンテンナンスを担当する歯科衛生士も同じで、スタッフ用にカウンセリングルームの増設もしました。また、治療中についても、今どのような処置をしているのか、その都度お伝えしています。顔にタオルをかけられ、何も見えない状態で口の中を触られるというのは不安が伴うでしょう。患者さんに安心して治療を受けていただくためには大切なことだと思っています。
マイクロスコープが全ユニットに設置されているなど、設備面もかなり充実していますね。

抜糸や麻酔などの処置も含め、すべての治療でマイクロスコープを使用しています。歯という小さな部位の治療を行う上で欠かせない機器だと思いますので、当院では歯科衛生士もしっかり習練した上で使っています。最大で20倍に患部を拡大して見ることが可能ですし、治療の記録を写真や動画に残せるという機能もあります。また、型採りの際に用いるスキャナーについては、3D撮影が可能な機器を導入しています。そのため、例えば染め出しをした後に撮影すれば、奥歯の裏側といった患者さん本人が見えない箇所の磨き残しも見ることができます。撮影データが蓄積されていくので、お子さんの場合は生え替わりの経過の記録も残せますし、訪問治療では訪問先にデータをお渡しして、患者さんのお口の状態を施設職員やご家族と共有しています。その結果、口腔ケアの効率が上がり、ケアする方の負担軽減にもつながっているようです。
年を重ねても自分の口で食べられるようサポートしたい
訪問歯科診療についてもお聞かせください。

開業から時間がたてばたつほど、通院が難しい高齢患者さんが増えていきます。そのような中、長年日本を支えてきてくれた方たちに感謝の気持ちを込めて、できることをしたいと感じるようになりました。「死ぬまでおいしく食べられる」状態をつくることを目標に、入れ歯の調整などに加え、摂食・嚥下のリハビリテーションを行っています。訪問診療では、ケアマネジャーや主治医、言語聴覚士と密接に連携することで、患者さんのより良い食生活づくりをサポートしたり、義弟が開業している整形外科と協力して治療をしています。歯科治療というと歯を削ると思われがちですが、当院の訪問診療では実生活を豊かにする治療を心がけています。気候が良い時期には、私も患者さんと一緒に散歩に出かけるなどして、交流を深めています。
歯科医師としての日々を振り返って印象的な出会いはありましたか?
関節リウマチなど複数の持病を抱える患者さんから入れ歯を作ってほしい、と依頼をされ、要望に応える形で製作したことがありました。治療はうまくいった、とそのときの私は思ったのですが、その方は一向に食べられるようにならなかったのです。次第に食が細くなっていき、その後、残念ながら亡くなられました。歯を治療するだけでは患者さんの健康につながらない、と気づかされたターニングポイントとなる出来事だったと思います。もっと全身疾患について学ぶ必要があること、他科の医師、介護士など多職種との連携を強化する必要があることなど、多くの気づきを与えてくれた出会いでしたね。
今後の目標をお聞かせください。

「人生の最期まで自分の口で好きなものを食べたい」と誰もが願うと思います。でも、それがかなわず、やせ細って亡くなっていく方を今までたくさん見てきました。地域の皆さんが健康な口腔機能を維持し、人間らしい生活を送れるお手伝いをこれからもしていきたいと思っています。私は患者さんにとって、「お口全体を診る」歯科医師でありたいと思っています。その使命を果たすため、患者さんにとってメリットあるものは積極的に取り入れていくつもりです。これからも勉強会に参加するなどして、歯科医師としてのトレーニングを欠かさないようにしていくのが、これからの目標です。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント(1本)/29万7000円~