富田 雅子 院長の独自取材記事
とみたまさこレディースクリニック
(豊島区/駒込駅)
最終更新日:2021/10/12
駒込駅から歩いて数分の閑静な住宅街に2018年2月に開業し、今年で3年となる「とみたまさこレディースクリニック」。院長の富田雅子先生は、基幹病院に長年在籍し、多くの患者と接してきた。勤務医の時に自分を頼って来てくれた患者を、今度は開業した自分のクリニックで引き続き診てあげたいという思いから、アクセス便利な山手線沿いのこの地にクリニックを構えた。開業後は、予想以上の患者の多さに富田院長自身も驚きを隠せないようだが、朗らかで明るく何にでもはきはきと答えてくれる富田院長の人柄があってのことであろう。そんな富田院長に、開業するまでの話と、診療に対するスタンスなどを聞いた。
(取材日2021年2月15日)
女性の尿もれや性交痛、臓器脱などの悩みに寄り添う
特に力を入れている診療は何ですか?
女性の頻尿と性交痛に対する治療や相談を積極的に受けるようにし、治療に日々あたっています。特に女性にとって頻尿は日常生活の中で大きな障害になりがちです。例えば仕事をされている方でしたら、会議中や会食中などでトイレに行きにくい場合に困ったり、あるいは外出や旅行を諦めていたりする女性の多さに驚いています。頻尿がなくなった時にどれだけ日常生活が楽になるのかを多くの人に知っていただいて、少しでも医療の力で助けてあげたいと思っているんです。そして、最近では、レーザーによる尿もれや性交痛の改善に関する研究が進んでいます。産後の尿もれや加齢による性交痛など人には相談しにくい症状に悩む方も、一人で抱え込まずに、お気軽に相談してみてください。
臓器脱の治療にも力を入れているそうですね?
骨盤臓器脱下垂は、ほとんどの場合、出産による産道周囲の結合組織の損傷によるものです。膀胱や、子宮の下垂によって、頻尿、尿もれが起こることも。泌尿器科に行くと「腹圧性尿失禁」や「過活動膀胱」と診断されてしまうこともありますが、子宮下垂などの原因が隠れていることもあるので婦人科の受診をお勧めします。ペッサリーでの保存的ケアも行っていますが、できれば根本的治療が望ましいと思います。
頭痛に関しても深い知識をお持ちのようですが、頭痛について勉強するきっかけが何かあったのですか?
知り合いの神経内科の先生に誘われて、勉強会に参加したのがきっかけでした。その勉強会に参加していたのは脳神経外科や神経内科の医師ばかりで、産婦人科の医師はほとんどいなかったのではないかと思います。その時に、たまたまケンブリッジ大学の教授が、頭痛の原因にエストロゲンの血中濃度が深く関わっていることをお話しされていました。その講演を聞いて、「それは婦人科の領域ではないか」と気がついたのです。これを機に頭痛について興味を持ち、勉強し始めました。頭痛も周りに理解されにくくつらい症状なので、少しでも助けになれればと思います。
先生はどのような心構えで日々患者さんと向き合っているのでしょうか?
私がこのクリニックで特に力を入れていきたいと考えているのは、頻尿と性交痛です。これらの症状は、これまで婦人科の診療であまり重要視されてきませんでした。ところが近年、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)という、新しい疾患概念ができました。まさに当院が開院当初から取り組んできたものです。ただ、患者さんにとってもこれらの症状で大きな病院にかかることには抵抗があるでしょう。しかし、これらの症状も女性の生活の質を落とす原因の一つとなります。それゆえ、このクリニックをこれらの症状で困る患者さんの受け皿にしたいのです。
友人と家族の協力があって開業できたクリニック
勤務医を長くされていたそうですが、開業の計画は以前からあったのですか?
まったくありませんでした。複雑な経緯から開業することを決めたのですが、開業の準備期間が2~3ヵ月しかなく、とてもタイトなスケジュールでした。しかも、開業の2週間前まで勤務医としてフルタイムで働いていたので、すべてがバタバタで決まっていきました。開業の目的としては、勤務医だった頃に自分を頼って来てくれていた患者さんを診てあげたいという、ただそれだけでした。その継続の患者さんさえ来てくれればいいと思って開業したのですが、実際に開業してみると、新規の患者さんもとても多く来ていただき感謝しています。
短い準備期間での開業はさぞかし大変だったのではないですか?
友人と主人の助けがあったからこそ、開業できています。友人にいたっては、こんなにも自分のためにしてくれるのかと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。メインのスタッフは4人いるのですが、みんな子育てもしくは介護をしている方たちなので準備、段取りが良く、創意ある提案をくれる大切なパートナーです。ほかにも月1回の方が3人、月3回の方が2人います。クリニックが円滑に運営できているのはスタッフのおかげですね。とても感謝しています。
この地で開業することを決めた理由を教えてください。
もともとの開業の目的が、勤務医時代の患者さんに来てもらうためでしたので、その患者さんにできるだけアクセスが良いようにと、山手線沿いで開業の場所を探していました。そして、以前の職場からの帰りに、たまたまこのビルの前を通りかかり一目ぼれしてしまいました。ここはJR駒込駅からも近いですし、とても静かな場所で、近くに公園もあるんです。また、建物はバリアフリーで広々と使うことができ、クリニック専用の入り口と駐車場も設けられる点で、患者さんに喜ばれています。
社会人経験の後、医師の道を歩む
医学部の前に、東京大学の文学部を出ていらっしゃるのですね?
そうですね。社会学科を出て、一般企業で4年間働きました。社会人として働いていて、とある出来事をきっかけに医師になろうと思いました。とは言っても、受験する年の1月まで働いていて、2月が試験日だったので、準備という準備もできませんでした。そして山梨大学医学部になんとか合格することができました。
急に決めた受験で合格できるなんて、普段から勉強熱心だったのですか?
とんでもないです。小学校から大学まで、ほぼ遊んで過ごしていました。「やりなさい」と言われてやるのが苦手だったのです。まあ、親も「勉強しなさい」と言うタイプではありませんでしたね。ただ、本や活字が好きで、月に100冊以上本を読んでいます。映画も好きでたくさん観ています。
毎日ご多忙かと思いますが、お休みの日は何をされているのですか?
仕事とはまったく違うことをしてリフレッシュしていますと言いたいところですが、実際にはそのような時間をまったくとることができていません。実は今、親の介護もあって、名古屋と東京を行き来している状態です。診療日は朝から晩まで働き、土曜日の診療後に名古屋に行き、月曜日の昼に東京に戻ってきて診察をしています。とてもハードな生活ですが、親にはとても感謝をしていますし、できるだけのことをしてあげたいと思っています。仕事後に運動をしたり、ヘルシーな食事を取ったりということはしばらくお預けですね。