アトピー性皮膚炎の治療は原因特定から
多様な方法で改善をめざす
代々木クリニック
(渋谷区/代々木駅)
最終更新日:2025/05/29


- 保険診療
アレルギーとも関連性の高いアトピー性皮膚炎。その原因は皮膚のバリア機能低下や皮膚の細菌叢(さいきんそう)の乱れ、抗原による刺激、ストレスなどさまざまで、「代々木クリニック」の権東容秀先生によると、不適切なステロイドの使用が症状を悪化させることもあるそうだ。また、かゆみを伴う湿疹や皮膚の乾燥といった症状が必ずしもアトピー性皮膚炎によるものとは限らず、多角的な検査で原因をはっきりさせた上で、それに合わせた薬の処方や治療を受けることが大切とのこと。同院では多様な薬を取り扱い、保湿剤やスキンケアの方法、生活環境を改善するためのアドバイスも重視。光線療法や減感作療法にも対応している。今回は権東先生に、同院の治療方針や患者が気をつけるべき点について詳しく教えてもらった。
(取材日2025年5月12日)
目次
アトピー性皮膚炎などの皮膚トラブルは、原因を特定し、それに合わせた治療を受けることが大切
- Qアトピー性皮膚炎の主な症状を教えてください。
-
A
▲待合スペース。大きな窓から温かな光が差し込む
強いかゆみを伴う湿疹や、皮膚の乾燥や赤み、厚みや硬化など、アトピー性皮膚炎の症状はさまざまな皮膚トラブルとして現れます。ただし、これらの症状が必ずしもアトピー性皮膚炎によるものだとは限りません。「アトピー性皮膚炎ではないか」と思うような症状でも、実際にはシャンプーや石鹸による接触性皮膚炎(かぶれ)であることも多いです。そのほか、尋常性乾癬だったり、リンパ腫や膠原病といった全身疾患の皮膚症状として現れることも。ですので、見た目だけで「アトピー性皮膚炎だろう」と推測するのではなく、皮膚科での検査で原因をはっきりとさせた上で、それに合わせた薬の処方や治療を受けることが大切です。
- Qなぜそのような症状が起こるのですか?
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A
▲アトピー性皮膚炎の原因は、患者の環境によってさまざま
遺伝的な要因も考えられますし、肌の乾燥や汗による刺激、皮膚のバリア機能の低下、アレルギー反応、ストレスが関与することもあります。スキンケアが肌に合っていなかったり、衣服の刺激を受けたりと、日常の中でも皮膚トラブルを起こす要因は多いです。皮膚に常在する真菌(カビ)が汗と反応して皮膚炎を引き起こしてしまうこともあります。また皮膚炎の治療でステロイドが用いられることがあるのですが、適切な処方や使用でないと症状を悪化させてしまうこともあるんですよ。当院ではこの点に注意して、ステロイドの処方は必要なときにのみ慎重に行っています。
- Qアレルギーとアトピー性皮膚炎に関連性はありますか?
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A
▲アレルギー検査を受け、結果把握から治療の糸口が見つかることも
現代のガイドラインでは、アトピー性皮膚炎の診断にアレルギーの素因を条件とはしていません。ですがアレルギーとアトピー性皮膚炎の関連性は高く、例えば乳児期に食物アレルギーを、その後にアトピー性皮膚炎、花粉症、気管支喘息などを次々と発症するアレルギーマーチという言葉も存在します。そのような素因が大元にあって、消化機能が十分でない乳児期には食物アレルギーとして現れ、成長してから喉に症状が出ることもあれば、バリア機能が崩れて皮膚炎として現れることもあるということですね。そのため乳児期に食物アレルギーの症状が出た場合、食事だけでなくスキンケアも見直すことがアレルギーマーチのリスク軽減につながります。
- Qこちらではどのような検査や治療を行っていますか?
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A
▲患者の状態に合わせて、アプローチ方法を考えていく
採血によるIgE抗体検査、アレルゲン皮内テスト、パッチテストなどを組み合わせて幅広く精密な検査を実施。これにより原因をしっかりと特定し、根本的な改善をめざすのが当院の治療方針です。ステロイドの使用は必要なときのみに限定し、肌のバリア機能を高め炎症を抑えるための塗り薬、免疫を抑制するための飲み薬、殺菌を目的としたポビドンヨードなどを取り入れたり、生物学的製剤の注射薬を使ったりすることも。保湿剤やスキンケアの方法、生活環境を改善するためのアドバイスも欠かせません。そのほか、エキシマライトを用いた光線療法や、抵抗力を作るために注射でアレルゲンを少しずつ体内に入れていく減感作療法にも対応しています。
- Q患者として、日常生活で気をつけるべきことを教えてください。
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A
▲自分の状態を知り、適切な治療法を行っていくことが大切
できるだけアレルゲンを避けて、肌を清潔に保ち、保湿を心がけること。とはいえ「何が原因なのか、何を塗れば良いのか」がわからなければどうしようもありませんから、まずは検査を受けにいらしてください。ご自身の体を知ることが治療の第一歩。またアトピー性皮膚炎やアレルギーの治療では、IgE抗体の変動や治療の効果を確認するためにも、定期的な通院が必要となります。塗り薬が処方された場合には、適量を守ることも大切。当院では薬を正しく使っていただくために、看護師が塗る量や塗り方を詳しく説明しています。これらに気をつけながら、規則正しくストレスの少ない生活を送れるとさらに良いですね。