権東 容秀 先生の独自取材記事
代々木クリニック
(渋谷区/代々木駅)
最終更新日:2025/03/14

代々木駅西口より徒歩1分、ビルの4階に位置する「代々木クリニック」。同院では権東容秀(まさひで)先生が、父の権東明院長と二人三脚で診療を行っている。容秀先生は、大学病院ではやけどの治療や切断された指の再建など、形成外科・皮膚科の領域で幅広い臨床経験を持つ。同院では、開業した明院長の代よりアレルギーやアトピー性皮膚炎の治療に力を入れているため、関東近郊だけでなく北海道からも患者が来るという。「多くの臨床経験から、患者さん一人ひとりに適した治療をご提案できると思います」と笑顔で話す容秀先生。どのような治療を行なっているのか、具体的に話を聞いた。
(取材日2025年2月10日)
手先の器用さを、形成外科の診療に生かせると思った
お父さまが開業されたクリニックだそうですね。

そうです。ここから少し離れた場所で自宅兼クリニックとして開業し、僕はそこで生まれ育ちました。皮膚科の医師として働く父の背中を見ながらずっと育ってきたので、医療はとても身近な存在でした。高校生の頃、医学部の推薦が難しくてなかなか取れず、そのまま他の学部に進むか、1年浪人して医学部に行くかという選択を迫られていました。でも、やりがいがあり人にも喜んでもらえて、しかも医師である父という存在もあったので、やはり僕も医師をめざそうと思い、浪人して東京医科大学の医学部医学科に入学しました。在学中の6年間はアメリカンフットボール部に入り、肉体的にも精神的にもしっかりと鍛えられました(笑)。
形成外科を選んだ理由は何ですか?
もともと手先が器用で、プラモデルを組み立てたり、物の修繕をしたりするのが大好きでした。もちろん皮膚科にも外科はありますが、まずは形成外科で技術をしっかり学んだほうが自分の得意な部分を生かすことができると思ったからです。学生時代の病院実習の形成外科で「あ、これだ!」と感じました。形成外科との縁は他にもあり、実は僕、2歳くらいの頃に入院をしていたことがあるんです。足の指と太ももの付け根に傷があり、母からは骨折したためと言われていました。ところが、学生時代の形成外科の病院実習で、手や足の指が生まれつき癒合している「合趾症(ごうししょう)」の手術を見たときに「あれ?これは自分と同じだ」と気づきました。そのことを母に話したら「何でわかったの?」と言われ、上司にも話したら、当時の僕のエックス線写真を探してプレゼントしてくれました。
形成外科の診療は繊細さが必要なんですね。

そうなんです。形成外科は失ったものを元に戻すための、つまり、機能再建や整容再建の両方を扱う診療科なので、とてもやりがいがあります。皮膚科診療は、視診を通して頭で考えて身につくものなので「とりあえず最初は手技を学んでおけ」というのが父の言葉でしたし、僕もそう思っていました。ただ、僕がいた東京医科大学病院の形成外科は少し特殊で、広範囲熱傷から全身熱傷の治療を専門的に行っていました。そのため、医師になった最初から患者さんの全身管理や傷の管理など、すべてに関わっていました。救急的な診療も多いため、1年ほど横浜市立大学附属市民総合医療センターの高度救命救急センターに国内留学もしました。
原因にアプローチし、根本的な改善をめざす
もともとクリニックを継ごうと思っていたのですか?

思っていました。クリニックが駅前に移転してすぐ、週に1回、実家で診療を行っていたのですが、しっかりと皮膚科を診療するには一から勉強しなくてはだめだと思い、無理を言って、東京医科大学病院の皮膚科に転局し、ゼロから皮膚科を勉強しなおしました。皮膚科はどちらかというと内科的な全身管理や知識が必要なので、勉強しなおしたことで、医師としてトータルな診療ができるようになったと自負しています。その後、戸田中央総合病院の皮膚科で部長職を2年間やり、自信がついた頃、父から「そろそろ帰ってこい」と言われて、2023年に実家に戻りました。今は父と僕の二人三脚で診療を行っていて、お互いに意見を交わしながら患者さんの治療方針を決めています。
やはりアレルギーの治療で受診する患者さんが多いのでしょうか?
多いですね。当院では、単に症状だけ抑えるための治療ではなく、原因をしっかりと特定してアプローチする、根本的な改善をめざしているのが大きな特徴です。特にアレルギーは、いろいろな原因が絡んで発症することが多いので、アレルゲン免疫療法の中でも、注射によりアレルゲンを少しずつ体内に入れて症状の改善をめざす皮下免疫療法に力を入れています。日本ではまだ舌下免疫療法はスギ花粉症とダニアレルギーでしか適応がありませんが、皮下免疫療法なら、幅広いアレルゲンに対応することが可能です。父は30年以上前から、大学病院で皮下免疫療法の治療を研究し、取り入れていました。ただ、皮下免疫療法は1週間から2週間に1回という周期で注射をしていくので、患者さんの「治したい」という気持ちと根気が重要になります。
患者さんと接する時に大切にしていることは何ですか?

会計を終えてクリニックを出ていく時に、患者さんに「来て良かった」と思ってもらえるような診療をすることです。待たせてしまうこともあるので「待ったかいがあった」「また相談に来よう」と思ってもらえる診療を行うようにしています。ただ、中には、時間がなかなか取れないという方もいらっしゃるので、僕の場合は、患者さんの話を聞きながら、しっかりと検査で原因を探るか、それとも薬だけを処方するかを聞くようにしています。自分が形成外科や皮膚科、救急科などで多くの症例に携わってきたので、診療も全部自分でやりたいと思ってしまうのですが、施設的な限界もあるので、難しい症例などは連携している大きな医療機関へ紹介するようにしています。その線引きをすることも、クリニックでは大事ですね。
皮膚科診療をベースに、新しい領域にも踏み出したい
同じアレルギーでも、一人ひとり症状も違いますよね。

そうです。ですから定期的な検査は欠かせません。「何のために採血をするの?」と思われることもあると思いますが、実は、採血の数値は症状の強さと比例しません。血液検査で表されるIgE抗体の数値は、あくまでも体に入ったアレルゲンの抗体が作られたかどうかを表しているに過ぎないのです。ですから、アレルギー症状は、人によってまったく違います。わずかな数値でもアナフィラキシーを起こしてしまう人もいれば、数値が高くても反応しない人もいます。ただ、IgE抗体の数値が高ければ、今までそれだけ反応してきたという履歴になるので、逆に重篤にならないのでは?という考え方もあります。だからこそ、定期的な血液検査で変動を確認し、自分の体が対応しているかどうかをチェックすることが大事になります。
薬だけを出して終わりというわけではないのですね。
薬だけを出すのでしたら簡単です。ただ、症状を抑えるために薬を使ったとしても、アレルギー疾患の根本的な改善とは言えません。例えば、急性的な炎症を抑えるためにステロイドを一時的に使用するのは良いですが、ダラダラと長く使うものではないと思っています。原因を特定して排除し、自分の体が持つバリア機能を強化して薬が必要にならない体質にしていくのが目標です。基本的にアトピー性皮膚炎の人は皮膚が乾燥しやすく刺激が入りやすいので、しっかりと保湿することが大事です。ただし症状がひどい場合は、生物学的製剤を使った治療も行っています。
最後に、今後の展望と患者さんへのメッセージをお聞かせください。

時代のニーズとして美容系の診療も関心が高まっているので、駅前という立地を生かして行っていけたらと思っています。当院は皮膚科診療がベースにあるので、美容系の診療によるトラブルにもすぐに対応でき、患者さんも安心して施術が受けられると思います。皮膚科診療は「原因なくして皮疹なし」の言葉どおり、しっかりと原因を追求して、なぜそのような発疹ができたかということを、常に頭の中で考えることが大事だと思っています。皮膚科診療ではなるべく原因にアプローチし、形成外科の診療では低侵襲な方法をご提案しています。アトピー性皮膚炎の軟膏も、新薬がたくさん出ていますし、大学病院と違い、医師の判断で新しい治療をすぐに取り入れられるフットワークの軽さも当院の特徴です。ぜひ、1人で悩まずにご相談ください。