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渡邉 栄彦 理事長の独自取材記事

はあと在宅クリニック

(清須市/尾張星の宮駅)

最終更新日:2020/06/01

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在宅医療専門医院として訪問診療を行う「はあと在宅クリニック」。JR清須駅から徒歩で約15分の場所に、同クリニックおよび「かなで訪問看護ステーション」の事務所と待機場所、「みらい保育園」の3施設が併設される。自らの経験をもとに在宅医療を志したという渡邉栄彦(たかひこ)理事長は、内科および精神科の診療経験を豊富に持ち、クリニックにおいても内科、老年精神科を診療科目として掲げ、常に地域の在宅診療に尽力する。今回は、優しい雰囲気で笑顔が印象的な渡邉先生に、医師としてのこれまでの経験、在宅医療の患者や家族への想い、今後の展望など、じっくりと話を聞くことができた。
(取材日2018年1月25日)

自身の経験から医師を志し、幸せになる医療をめざして

クリニック開院の経緯についてお聞かせいただけますか?

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当院は、在宅医療の専門クリニックとして2015年に開設しました。以来、地域で在宅医療を必要とされる患者さんのご自宅を訪問しています。ここ清須市を拠点に選んだわけは、名古屋市内では往診クリニックが充実していますが、名古屋市を外れると往診してくれる先生が少なかったから。そして、この地域周辺の適度な田舎感、名古屋市駅から車で15分来ると周りは畑や田んぼだらけという環境が私自身とても気に入ってしまったんです。

クリニックや関連施設の特徴、コンセプトについてお聞かせください。

当院に来られる患者さんは、がんの末期や脳梗塞の後遺症、神経筋疾患などで通院が難しいという方が多いです。また、当院の特色として患者さんご本人に困った症状があるがご本人には自覚がなくて通院できず、家族が困っているというケースも少なくありません。実は当院のコンセプトは、「人を幸せにする」というものなんです。開業する前から私は医師として働き、ありがたいことに幸せを感じていました。でも、障害や病気、認知症があってもニコニコ笑って過ごし、皆が幸せになれるような場所や地域をつくっていきたい。それが開業の動機です。併設の施設は、訪問ステーションと従業員などが利用する保育園です。実際に診療をしていく中で、患者さんが笑って過ごすことができればご家族も幸せ、私たちは感謝されて幸せ、そして従業員が働きやすい環境になればもっと幸せになれるのではと感じていますね。

先生が医師をめざされたきっかけは?

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まだ私が子どもの頃ですが、家族が精神的な病気を抱えていたんです。何の知識もなく誰に受診していいかもわからず、つらい思いをしたことがありました。結局、当時通院していた病院で診てもらいましたが、そこではあまり話を聞いてくれずに薬を出すだけで悲しい思いをしたんです。それで、百科事典などで病気について調べていくうち、以前にお世話になっていた大学病院の先生が開業されていて、そこで診ていただいたんです。その先生はこれまでの先生とは対応が違い、しっかりと話を聞いてくれて、そこで治療をしていくうちに症状が落ち着いていったんですね。先生は社会福祉にも詳しく、障害年金や手帳などの福祉制度についても紹介してくれたので本当に助かりました。そしてちょうどその頃、自身の進路について考えていて、先生のようになりたいと思い医学部をめざすことを決めました。

患者や家族を理解し、信頼関係を築くこと

在宅医療の道へ進もうと思われたのはいつですか?

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医学部で学んでいる頃から在宅医療のニュースは見ていて、自身の家族を見てきた経験から、もしあの時、自宅に来て対応してくれる先生がいたら、と常々思っていたんです。研修医として病院で勤務すると、患者さんは皆自宅に帰りたいと言いますし、その後精神科の医師として勤務しましたが、そこでも皆同じように言うんです。そして感じたのは、症状が重くなる前に自宅で治療できていたら、ここまでならなかったのではないか、ということでした。例えば認知症の場合、本人に自覚がないため家族はすぐに病院へ行くことができず、生活が破綻するまでになり、病院に連れて来る頃にはすっかりご家族はまいってしまっているんです。家族はもう自宅に帰ってきてほしくない……でも本人は帰りたい気持ちが強い。そんな状況から、認知症だけに限らず、患者さんやご家族が困っている状態を良くしていきたいと思い、在宅医療に取り組んでいこうと思ったんです。

内科と精神科の両方を診療できることの強みとは?

実は、精神科と内科は別ではなく、両方が絡み合っているケースがあるんです。わかりやすい例が便秘なんですが、認知症の方が便秘になると、それが原因で精神的に不安定になり、夜寝れなくなったり大きな声を出したりすることがあります。それを解消するには、便秘自体を解消していかないといけないんですね。糖尿病や肺炎という症状でも同じで、内科の問題を改善することが大切です。精神科で診療を行っていた時も、内科の症状を訴える患者さんについての診療を経験してきました。精神科病院は内科の診療に対する医療資源やスタッフが少なく、その状況はある意味、今自分が取り組んでいる在宅医療ととても似ています。人手が足りないとか資源が足りないという中、どうしたら患者さんが良くなるのかというのを考えながら対応することが必要になるんですね。

薬剤の使用は極力少量にしようと努められているそうですね。

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もちろん必須と言われている薬はやめませんが、例えばコレステロールの薬で、コレステロールの数字が正常でご飯も普通に食べられている人がその薬を続けるべきかというと、できるならやめたほういいという考えです。この前も、認知症の患者さんで起きることができず何も食べられないという方が11種類の薬を飲まれてたんですね。薬の内容と現在の症状をお聞きし、結局4種類くらいまで削っていくと、すっかり元気になられました。ただ、今まであった薬がないのは不安ということもありますので、やみくもに薬を減らせばいいというわけではありません。訪問診療を始めていく段階でも、まずは顔を合わせて患者さんの話をよくお聞きし、信頼関係を築くことを大切にしています。それを少なくても3回くらい続けた上で、適切な治療法や薬についての提案をしていくわけです。

一人で抱え込まず、まずは相談してほしい

こちらでは、ターミナルケアについても注力されていますね。

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当院は、厚生労働省より在宅緩和ケア充実診療所としての認定を受け、看取りも積極的に行っています。ターミナルケアの方法をご家族と考えていく場合、その現実がどういうものであるかをお伝えしています。「救急車を呼んだらどうなるのか、望まない救命措置はどのようなものになるか」というお話を繰り返し、ご理解を得ておくんです。実際に呼吸停止などになったとき、当院へ連絡していただいて往診し、最期の時を迎えるという流れになりますが、しっかりと話し合っていくことで、もともとは「何かあったときは病院で」と言っておられた患者さんが、「自宅で最期を迎えたい」と、考えが変わることはあります。私としては、救急搬送よりも穏やかな最期というのが一番良いかたちだと考えています。

家族を介護している人に向けて、何かメッセージをいただけますか?

患者さんのご家族は全部一人で抱え込んでいるケースが多いんです。実は使える支援制度もたくさんあるんです。在宅医療も当然ですし、訪問看護や介護保険、医療費が安くなる、年金に加算がもらえる、おむつを使用する際の医療費控除など、手続きを行えばいろんな支援が受けられるんです。しかしそれを知らずに、ずっと一人で苦労され悩んでいるご家族は多いと思います、私自身もそうでしたからね。当院は実際に行う医療についてはもちろん、介護を取り巻くさまざまなそ制度についてもプロフェッショナルでありたいと思って考えていますので、スタッフは皆それを勉強しています。ですから一人で抱え込む前に、まずは相談していただきたいと思います。

最後になりますが、今後の展望についてお聞かせください。

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まずはこの地域で、「このクリニックに頼めば大丈夫」と皆さんに安心していただける在宅診療所にしていきたいですね。そして、「地域の医療レベルが当院のおかげで上がっている」と言われるところをめざしていきたいです。あとは、在宅診療所、訪問看護ステーション、保育園の3つの組み合わせの診療所を各地に増やし、地域の皆さんに良い医療を提供していけたらと思っています。

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