岡 一行 院長の独自取材記事
おか歯科医院
(日野郡日野町/根雨駅)
最終更新日:2024/07/24

JR伯備線・根雨駅から出雲街道沿いに徒歩5分、国道181号からもアクセスの良い場所にある「おか歯科医院」。院長の岡一行先生は、祖父が開業し父が継いだ歯科医院を2018年に継承した3代目だ。そんな岡院長は大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。以来、約28年にわたり全国の部隊や自衛隊病院で隊員やその家族の診療する他、災害派遣部隊として避難所の巡回診療に従事した。そしてそこで得た経験を生かし、さまざまな状況の患者一人ひとりのニーズに寄り添った歯科医療を提供している。同院は高齢者が多い地域にあるため、訪問診療にも注力。「歯科治療を通じて、地域の皆さんの健康をサポートしたい」と話す岡院長に、診療のこだわりや地域の歯科医療に対する思いを語ってもらった。
(取材日2024年4月24日)
災害派遣の経験を生かし患者に寄り添う歯科医療を提供
岡院長のご経歴からお伺いしてもいいでしょうか。

はい。歯科医師としては、異例の経歴になるかもしれませんが、こちらにもどってくる前は陸上自衛隊で勤務していました。入隊の理由は、臨床現場での指導が充実していることに惹かれたからです。陸上自衛隊の歯科医師になるには、まず陸上自衛隊幹部候補生学校に歯科幹部候補生という立場で入隊し、2ヵ月ほど自衛隊幹部になるための知識や技能を習得します。その後病院に配属されて2年間、一般歯科と口腔外科、麻酔科の研修を受ける期間が設けられていたのですが、それが魅力だったのです。
全国各地の部隊で活躍された経験で得られたのはどんなことですか?
日本各地で歯科医療に限らず、さまざまな経験を重ねることができたのはやりがいがありましたし、楽しかったです。その中でも、1995年の阪神・淡路大震災の災害派遣で阪神地区に行き、避難所で巡回診療をしたことが印象に残っています。多くの方から本当に多岐にわたる要望をお聞きしたのですが、そのすべてに対応できるだけの準備はできていませんでした。それでも持って行った器具や材料で、できる限りの治療をしようと努めた経験から、押しつけではなく「患者さん一人ひとりのニーズに寄り添った治療をしたい」と考えるようになり、今に至っています。離島や山間部に派遣された時も、限られた設備で最大限の医療を提供できるよう努めました。
こちらの歯科医院を継承し、開業されることになった経緯を教えてください。

実は私の人生設計では開業医という選択肢はありませんでしたし、陸上自衛隊に定年まで勤めるつもりでいました。父の後に、別の歯科医師さんが開業されたので、「このエリアの歯科医療もこれで安心だ」と安堵していたことも大きかったですね。ところが、その方が突然廃業されてしまったのです。父は80代になっていたのでさすがに歯科診療を再開するわけにはいかず、「私がやるしかない」と覚悟を決めて、前任者が廃業してから約半年後に自衛隊を退職し、日野町にUターンして新たに開業しました。
訪問診療にも注力し、地域の人々の歯の健康をサポート
こちらのクリニックの特徴と、患者さんの層についてお聞かせください。

歯科に関する相談は広くお受けし、必要に応じて関係医療機関と連携しながら対応しています。患者さんは圧倒的に高齢の方が多いです。この辺りは若い人の流入が少ない、鳥取県内でも高齢者が多く過疎化が進んでいる地域なんです。陸上自衛隊に勤めていた頃の患者さんは18~50歳代半ばまでの方が多く、8~9割が男性でした。しかし、今は大半が高齢者で、女性のほうが多いです。自衛隊の頃と患者層がまったく違うので、今までと同じような対応では問題が起こりかねないと思いました。そこで、お薬手帳を見せていただくなどして、お一人お一人の健康状態などを把握してから丁寧に治療をするようにしています。また、寝たきりの方のご自宅や入所されている介護施設、入院されている病院などへの訪問診療も行っています。交通手段がなくて歯科医院に通えない方もいらっしゃいますし、患者さんそれぞれのニーズにお応えできる歯科医療を提供していきたいですね。
診療方針や治療においてこだわっていることを教えてください。
ご家族が一緒に来院されることがよくあるのですがご本人はもちろん、ご家族にも症状や今後の治療方針などをきちんとお話しすることを心がけています。それと、私は根管治療にこだわりがあります。患者さんの中には、早く歯を抜いてほしいとおっしゃる方がいるのですが、義歯を装着するにしても支える歯があるかないかで状況が変わりますし、歯を残すという意識を持っていただきたいですね。また、口から食べ物を取って、自分の歯で噛んで飲み込みやすい状態にしないと嚥下機能がどんどん落ちて食べ物が肺のほうに入り、誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなってしまうのです。自分の歯で噛むことと体の健康は密接につながっています。綿密な根管治療を通して、1本でも多く歯を残すためのお手伝いをしたいですね。
患者さんが院内で快適に過ごすための工夫をされていますか?

腰が曲がっていらっしゃる患者さんの中には、椅子の背もたれを倒した時に腰が痛いとおっしゃる方がいらっしゃいます。そのような時には、腰の部分にクッションや枕を丸めて入れて、痛みが出ないようにしているんです。小さなことかもしれませんが、治療を快適に受けていただくためには大切な配慮だと考えています。また、当院のスタッフは、ご高齢の方の対応や、車いすの扱いに慣れているので、安心してご来院いただけたらと思います。
地域の歯科医療の未来も守りたい
岡院長のリフレッシュ方法を教えてください。

ハンドメイドが好きなんです。中学時代から工作が好きで、4~5年前からは天然木の板にレジンを流し込んだテーブルや、患者さんに治療代を置いていただくトレイなどを作っています。例えば夏にはレジンで波と砂浜を表現した作品をといった要領で、複数のトレイを作って季節ごとに使い分けています。暇を見つけて少しずつにはなりますが、「次は、こういうものを作ったら喜んでもらえるかな」と考えながら制作しています。
日野町の歯科医療に対する思いを教えてください。
この日野町の「地域の歯科医療をどう維持していくか」が、一番大きな課題と感じています。直近の部分では、人材の確保。当院では、現在、歯科衛生士さんの募集をしております。週休2.5日制や、交通費の補助のほか、月に1回スタッフの昼食の持参が必要のない日を設けるなど、働きやすい環境になるよう心がけています。その日には、スープからこだわった自家製ラーメンを作って振る舞っているんですよ(笑)。興味のある方がおられましたら、ぜひご連絡ください。また、将来的な部分では、日野町には歯科医院が少ないので、私が歯科医師を辞めた後のことも考えています。過疎化が進む中で、残された道は行政と協力していくことだと思います。日野町も私が現役のうちに、アクションを起こさないといけないと常々考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

この地域には高齢の方が多く、さまざまな事情を抱えている方がいらっしゃいます。患者さんお一人お一人の健康状態をはじめとする背景をくみ取って、できる限りご要望に寄り添った治療をするよう努めますので、どんなことでもご相談ください。