山崎 義光 理事長の独自取材記事
AMC西梅田クリニック
(大阪市北区/西梅田駅)
最終更新日:2022/07/12
大阪・梅田エリアの複数駅から徒歩圏内にある、複合オフィスビルの3階にある「AMC西梅田クリニック」。もともとは治験をメインとする医療機関であった同院は、2012年より診療患者の受け入れも積極的に行ってきた。30年以上もの長きにわたり大阪大学医学部附属病院に在籍した山崎義光理事長は、医師としてのキャリアのほぼすべてを糖尿病の治療・研究に捧げてきた専門家。「一病息災の理念のもと、生活の質を損なわないよう糖尿病患者を支え続けたい」という思いで診療にあたるほか、さまざまな病気リスクを高める「肥満」の治療にも力を入れている山崎理事長に、糖尿病治療、肥満の注意点やできる治療、誤った減量方法、日常生活でできることなど幅広く話を聞いた。
(取材日2022年4月11日)
適切な検査と診断で、わかりやすい糖尿病治療を
長らく大学病院で糖尿病をご専門にされてきたと伺いました。
大阪大学医学部を卒業後、大阪大学医学部附属病院で医師としてのキャリアをスタートしました。途中2年ほどカナダ留学も経験しましたが、その後もずっと大阪大学医学部附属病院に在籍し、糖尿病の遺伝性や合併症に関する研究を行いながら、内科の医師として外来診療をしてきました。30年以上にわたる大阪大学医学部附属病院の在籍中には、内科医局長や病院教授、糖尿病に関する遺伝子研究を行う会社の設立など、さまざまな立場で経験を積ませていただきました。こうした経歴を背景にしているものですから、当院では糖尿病や高血圧症の方を中心に、風邪や腹痛など一般内科の患者さんなど幅広く診療しています。
どんな症状で受診する人が多いですか? また、糖尿病はどんな検査をしますか。
健康診断で糖尿病の疑いを指摘された方、肥満を気にされている方、尿量の増加や手のしびれなど気になる症状をインターネットで調べて「糖尿病ではないか」と来られる方など、ご来院いただくきっかけはさまざまです。当院では糖尿病の診断に必須の検査である、甘い飲み物を飲んで血糖値を測定するブドウ糖負荷試験を実施しています。また糖尿病の合併症の中でも糖尿病性腎症が非常に怖いのですが、その症状の一つである尿タンパクが少量だと見過ごされることも少なくないため、尿タンパクがある際には糖尿病が理由なのか、もともとの体質なのかをしっかり見極めています。これらの検査で糖尿病から軽症・予備軍の状態まで診断を行い、患者さんがご自身の体の状態を理解し、症状の改善へとつなげられるよう丁寧にご説明します。
定期的な通院が非常に大切ですね。
最も避けるべきは、知らない間に状態が悪化していることです。そのためには半年から1年に1回程度は通院し、検査を行う必要があると考えています。年1回の健康診断をクリニックでフォローできれば、前年のデータと比べながら経過を追うことができますし、変化がわかりやすいので患者さんも安心されるのではないでしょうか。1つでも持病があると、健康に気を使うため逆に長生きできるという意味の「一病息災」の考え方から、定期通院は別の病気を早期発見できる可能性を高めると思っていますし、近年は糖尿病の予後が良くなってきておりコントロールがきちんとできれば普通の人と同等の生活を続けることも望めるということを多くの人にお伝えしたいです。
さまざまな病気のリスクを高める「肥満」に注意を
糖尿病など生活習慣病の前段階である「肥満」も注意すべきですね。
BMI値25以上30以下は「軽度の肥満」とされますが、この値でも糖尿病や高血圧症などの生活習慣病、免疫力低下によるウイルス感染、睡眠時無呼吸症候群などのリスクが高まります。またBMI値22程度の標準体重でも、脂肪量が多く筋肉量が少ない「隠れ肥満」が、女性に増えているのも最近の特徴です。脂肪より筋肉はグラムあたりのボリュームが大きくなる、脂肪が多く体形が気になるという人も多いでしょう。当院の患者さんは、会社にお勤めされている方はもちろん、ご自身で起業されている方や交代制勤務の方も多いのですが、そういった方は食事時間が不規則、食事時間が十分に取れないといったこと以外に、食べるのは少量でも高カロリーだったり、ミネラル・タンパク質・アミノ酸など必要な栄養素が不足していたりと、偏った食事の取り方をしている方が多いようです。
肥満傾向にある患者さんにどのような指導を行っていますか?
毎日の食事記録を取ってもらい、摂取内容や食事時間などを確認して栄養指導を行います。しかし、肥満の原因となり得る果糖が多く含まれる果物を食事とは別に考えている患者さんが多い傾向にあるため、夕方や夜に食べるのではなく、朝食で取るようにお伝えしています。日々の食事記録と向き合ううちに、一品物から野菜などもバランス良く含む数品へ少量多種品物の食事を取り、自然と減量に導いていけたらと考えています。また体成分分析装置で脂肪量と筋肉量を調べ、筋肉がある方ならそれを活用した運動を、筋肉量の少ない方なら筋量増加または維持をめざした取り組みを指導します。特にエネルギー消費量が非常に大きい腰から下肢の筋肉を鍛えることは、リバウンドしないためにもとても重要です。
先生は誤った減量方法による健康被害が増えていることを危惧されているそうですね。
以前、健康診断で肝臓の数値に問題があると指摘された20代の男性がいたのですが、話を聞くと半年ほどで30kg以上も痩せたと言うんです。1年前の健診数値は正常だったため、無理なダイエットが肝機能の低下に影響している可能性があると考え、食事の見直しを行い、肝機能の正常化に導くための指導をしたことがあります。近年流行している糖質フリーダイエットは、行きすぎると体に負担がかかるとして日本糖尿病学会も注意を促しています。実は糖分は体を燃やすためのガソリンみたいなもの。糖分を取らずタンパク質だけを摂取することは無駄が発生して体にも良くないですし、質の良いアミノ酸を摂取しなければいくらタンパク質を取っても筋肉はできないのです。また、無理なダイエットを続けたことが原因だと考えられる転倒で骨折する中高年女性が多いことも気になっています。
強度な運動よりも、日常生活の改善を
日常生活で気をつけるべきこと、指導する際に心がけていることはありますか?
やはり日本人は「すぐに良くしよう」という思いが強く、ランニングやウォーキングなど強度な運動で足・腰・膝を痛めるなど、無理をする人が少なくありません。そうなると今度はカロリー制限をして脂肪だけでなく筋力も減らしてしまい、エネルギー消費は増えず、リバウンドの際には低い筋肉量のまま脂肪だけつき、隠れ肥満の状態がさらに悪化することもあります。実は特別なことをしなくても、運動は通勤朝夕各20分、なるべく電車では立ち階段を使う、積極的に家事をする程度で必要十分です。今はスマートフォンに歩数計がついているので、1日5000~7000歩を目安にしましょう。体重はいったんゆっくり下がってきて、またそこからじっくり下げていくのがこつ。それをしっかりとサポートしていきたいと考えています。
今後の展望を教えてください。
肥満は糖尿病、高血圧症、肝臓機能の低下、睡眠時無呼吸症候群などさまざまな病気のリスクを高めます。しかし単に体重を減らせばいいというものではなく、筋肉を残しておかなければ、将来は隠れ肥満となり、骨や関節の病気を引き起こすもとになり得ます。骨を作るのはカルシウムだと知られていますが、それを結びつけるためにはタンパク質が必要ですし、タンパク質産出にはアミノ酸が必須です。私のお勧めは赤身のお肉、納豆、卵、牛乳、必須アミノ酸が豊富でDHA・EPAも多く含まれているマグロなどです。患者さんの健康のためにもQOLの向上のためにも、こうした情報をどんどん伝えたいですね。
読者にメッセージをお願いします。
世の中では多くのダイエット本が発行されていますが、無理なダイエットで健康を損なうこともあるため、医師が監修しているものを参考にしていただけたらいいなと思っています。また、きちっと検査した上で医師の指導のもと取り組み、定期通院しながらじっくりと、筋肉量を維持したり増やしたりしながら、脂肪を減らしていくことが大切です。BMI値22~24くらいの方でも「出産後、体形を元に戻したい」と希望され、ご来院いただく女性も多いです。無理なダイエットは将来的に病気のリスクを高めますので、BMI値25以下の方もまずはご相談ください。バランス良く健康な体を取り戻すためのサポートをしていきます。