舛田 昭夫 院長の独自取材記事
さつきクリニック 国分寺院
(国分寺市/西国分寺駅)
最終更新日:2025/03/14

2016年の開院以来、在宅療養支援診療所として地域に貢献し続けている「さつきクリニック国分寺院」。「—人では通院できない」「診療を受けたいが体調が悪くて外出できない」といった患者を支えるために、24時間365日対応で訪問診療を提供する。同院には、麻酔科・ペイン(痛み)治療を専門とする舛田昭夫院長をはじめ、神経内科、泌尿器科などを専門とするドクターが集結。それぞれの高い専門性を生かして、患者一人ひとりのニーズに応じた診療を行っている。また、必要に応じて、母体である医療法人社団エフエムティが有する「さつきクリニック立川院」「さつき訪問看護ステーション」と連携。一丸となって多摩地域住民の健やかな毎日をサポートしている。同院の特徴や理念、地域の中での役割について、舛田院長に話を聞いた。
(取材日2025年2月28日)
高い専門性を持つ医師たちが、チームで訪問診療を提供
こちらではどのような診療を行っているのでしょうか?

主に患者さんのご自宅や施設に医師が訪問して診療する「訪問診療」を行っています。対象となるのは、ご高齢・歩行困難・認知症進行などで外来診療を受けていたが通院困難になった方、難病などで自宅療養中の方、入院していたが退院に際し自宅療養での在宅医療が必要な方、がんの終末期の患者さんでご自宅にて最期まで過ごすことを希望される方などさまざまです。薬の処方箋発行や血液・尿・超音波検査などから、点滴および注射、中心静脈栄養の管理、チューブを通して直接栄養剤を注入する胃ろうや腸ろうなどの経管栄養管理までもを在宅で行います。また、膀胱尿道カテーテルや腎ろう・膀胱ろうといった泌尿器科に特化したカテーテル管理交換の他、在宅酸素療法、慢性疾患およびがん患者さんの緩和医療、認知症の指導管理、血液疾患患者さんの輸血療法など、その方のニーズに合った在宅医療を提供しています。また別途、完全予約制で外来診療も行っています。
中でも特徴的な診療はありますか?
まず当院には泌尿器科医が多く在籍しているため、さまざまな尿路系のトラブルを在宅で対応できる点が挙げられます。特に高齢の方々は夜間頻尿や尿路感染など排尿症状やトラブルを有する方が多くいらっしゃいます。また、腎臓や膀胱、前立腺など泌尿器科系の腫瘍や、子宮や卵巣といった婦人科腫瘍、腸管など消化器腫瘍のがんの浸潤などで尿路が閉塞する場合があり、尿路を確保するため、泌尿器科で腎ろう・膀胱ろうといった、腎臓や膀胱に直接尿路カテーテル造設を行う患者さんもいらっしゃいます。尿カテーテルは定期的に交換しなければなりませんが、管理は非常に重要であり適切に行わなければ尿路感染の併発、狭窄や閉塞による尿毒症、そして誤抜去などを起こしかねません。そのような患者さんの在宅での特殊カテーテル交換の手技や管理・対応も含め、泌尿器科医が在宅医療を担うというのは当院の大きな強みです。
泌尿器科の他にも、さまざまな専門分野のドクターがいらっしゃるそうですね。

はい、日本神経学会神経内科専門医が在籍し、神経疾患や認知症の治療に精通している点も当院の特徴の一つです。また私は麻酔科で、在宅医療に従事するまでは大学病院で主にペイン(痛み)治療を専門にしてきました。慢性疼痛やがん性疼痛のある患者さんの痛みやそれによる苦痛を軽減するというのは、その方が生活する上で非常に重要なことです。当院にはさまざまな専門分野の医師がおり、患者さんにとっては専門的な医療が在宅で受けられる利点がありますが、専門性だけではなく、複数の医師がいることはマンパワーといった意味でも大事と考えています。当院では訪問診療の患者さんには24時間365日の対応をしておりますが、私一人だけでは十分にその質を維持できません。医師が複数人いることで夜間休日体制を無理なく対応することができ、また医師と看護師がセットで緊急対応を行いますので、診療体制に関しても十分な質を維持していると考えています。
モットーは「できることをできるだけ」
診療においてどのような心がけをお持ちですか?

訪問診療においては在宅で医療行為を行うこととなります。そのため、医療機関でできることは在宅でもできるように、当院では検査体制はもちろんのこと、手技や処置など、例えば腹水穿刺や連日の点滴加療、輸血療法など在宅で可能な範囲はすべて実施できるように準備しております。どのような状況でも、患者さんやサポートされているご家族の気持ちを考え、寄り添って行動しできるだけ希望をかなえてあげたいという思いを持って、われわれスタッフ一同は日々診療しています。また、医師、看護師、事務職員一丸となって、いろいろな面からアプローチができるチームとしての訪問診療を行うことが重要と考えております。
先進の設備を整えていると伺いました。
昨今の医療DX化に伴い、当院でも電子カルテを使用し、いつどこでもスタッフは患者さんのカルテが確認できるような体制を整えております。また検査データも電子カルテに一元化されており、すぐに確認できます。また、ポータブル超音波を導入しており、訪問診療の際に在宅で超音波検査を行うこともできますし、院内迅速採血機器を導入していますので、当日の急な状態変化に関しても採血を施行し、院内で結果が同日すぐわかるような仕組みも整えております。
在宅輸血もされているそうですね。

いろいろな訪問診療のクリニックがある中で、当院のように在宅輸血を行うケースは珍しいかもしれません。血液疾患の患者さんなどは、毎週輸血をしなければならない方もいらっしゃいます。病院に通院できるうちは良いのですが、状態が悪くなると徐々に通院が困難となります。そういう方の在宅輸血を当院は担うべく行っておりますが、輸血はある程度の副反応のリスクと所要時間、およびマンパワーが必要です。そのため、輸血を行う方は何かあった時にすぐに対応できる距離に住まれている方とし、また輸血中もご家族や施設のスタッフが患者さんの傍に常駐できる状態で皆さんの協力のもとに行っております。
国分寺市を中心に、多摩地域の在宅医療を支える
地域の中でどのような役割を担っていきたいとお考えですか?

当院は地域との関係性を非常に大切にしています。われわれクリニックの医師・看護師だけではなく、薬剤師さんや介護支援専門員の方々、またその他の専門職の方々と積極的に多職種連携を図り、患者さんの視点に立って、サービス提供体制を構築していくことが重要だと思っております。地域の病院とも協力し、患者さんの当院への在宅医療のスムーズな受け入れ、または逆に患者さんの状態が悪化した際、在宅療養の継続が困難な場合は入院加療のご依頼もさせていただきます。また、独居の患者さんが状態悪化に伴い在宅療養の継続が困難になってしまった場合や、介護によるご家族の疲弊疲労によって患者さんの在宅療養が継続できなくなった場合は、ホスピスなどの施設への入所も柔軟に検討する必要があります。そのような場合に、患者さんに負担なく次のステップへ円滑に調整するためにも、地域とわれわれクリニックとの連携は非常に重要だと考えています。
系列の「さつきクリニック立川院」とも連携しているそうですね。
はい、分院である「さつきクリニック立川院」と常に連携しています。例えば、当院に訪問診療の依頼があったけれど、立川院のほうが訪問するお家の距離が近い、または、より高い専門性が必要であるといった場合などは、立川院として訪問診療を対応させていただくケースもあります。テレビ電話のようなシステムを使用して常に立川院と連絡が取り合える体制があるため、各院のスタッフでどの対応が患者さんやご家族にとってベストかを都度相談し合っています。
最後に読者へのメッセージをお願いいたします。

訪問診療を始める患者さんおよびご家族は、今まで患者さんのご病気について時につらい思いをしながら真摯に向き合ってきたかと思われます。われわれスタッフ一同は、住み慣れた家で過ごしたいという患者さんの希望をかなえるべく、常に十分な医療体制で患者さんを受け入れられるよう努力をしております。また、それがかなわず施設に入所されている方へも訪問診療を行っており、生活の場所がどこであっても患者さんおよびご家族の意向に沿った診療を心がけております。在宅医療とは、自分らしく穏やかな生活をするために活用する診療です。当院での対応は、国分寺市を中心とした周囲の限られた地域とはなりますが、もしご用命ございましたらぜひご連絡いただければ幸いです。