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段 俊行 院長の独自取材記事

だんホームクリニック

(堺市北区/新金岡駅)

最終更新日:2022/10/03

段俊行院長 だんホームクリニック main

大阪メトロ御堂筋線の新金岡駅から徒歩10分。2017年に開業した「だんホームクリニック」は、がんや神経系の病気、生活習慣病、認知症などで通院が困難な患者を定期的に訪問する訪問診療をメインに、内科の一般的な疾病を診る外来診療も行う。院長の段俊行(だん・としゆき)先生は、穏やかで優しい印象そのままに、志を同じくするスタッフとともに、患者や家族の不安に寄り添い、あらゆる面でサポートができる在宅医療の実現をめざす。「一人では思いつかないことも、みんなで考えれば解決できるかもしれない」と話す段院長に、新型コロナウイルス感染症が医療に与えた影響や訪問診療のやりがいなど、たっぷり語ってもらった。

(取材日2022年7月27日)

志を同じくするスタッフとともにめざす理想の在宅医療

開業までの経緯をお聞かせください。

段俊行院長 だんホームクリニック1

消化器外科医として病院勤務をしていた頃、手術を担当したがんの患者さんが、退院後にがんが再発して亡くなることが多くありました。再発した患者さんの自宅での生活や、末期がんに移行してから死を迎えるまでの期間を、外科医では最期まで診ることができないことがしばしばありました。しかし患者さんの自宅での生活や希望に寄り添いたいという気持ちを持っていました。そんな頃、在宅医療に携わる看護師さんと知り合い、紹介してもらった訪問診療を専門とする医療法人で働くことになったのです。そこでさらに在宅診療への興味が深まり、やりがいを感じるようになりました。その法人では堺市にあるクリニックの院長を任せていただきました。高齢化する社会でますます在宅での診療や看取りのニーズが増え、在宅医療の重要性が大きくなる中で、自分の理想とする在宅医療をめざし、開業を決めました。

実際に訪問診療を行うクリニックを開業されていかがですか?

私のやりたいことは私一人ではできません。スタッフをはじめ、多くの人に支えられながら実現していくものだと感じています。スタッフたちは皆、私のやりたいことをよく理解してくれています。患者さんや家族さんにどう接するべきかを考えてくれます。何も言わずとも丁寧・親身に接してくれます。私の想いが伝わっているのではないでしょうか。医療の専門職である看護師だけでなく、事務や助手など医療現場で働いたことがなかったスタッフも向上心を持って勉強し、専門知識を身につけ、診察がスムーズにいくようにサポートしてくれるのでありがたいですね。当院で働いてくれているすべてのスタッフに長く働いてもらえるように、1人の負担が大きくならないように配慮しています。スタッフの働く環境を含めた経営面で、今は事務長が頑張ってくれています。皆で連携を取りながら、より地域の人たちに貢献できるようにチームで支える態勢を整えています。

患者さんの傾向などに変化はありますか?

段俊行院長 だんホームクリニック2

新型コロナウイルス感染症が増加している中、「入院はしたくない」という患者さんが増えました。特に高齢の方は入院するリスクがありますから。肺炎で入院すると、肺炎は良くなり退院できても退院後元気がなく、あまりごはんを食べなというケースもあります。当院ではがんの末期の患者さんの紹介も多いのですが、病院や療養施設での療養となると、今は家族との面会が制限されることもあり、自宅での療養を希望されて訪問診療を申し込みされるケースが増えています。また、自宅での療養を希望される場合には、患者さんが「家」で生活できる環境を整えることが重要となりますので、ご家族を含め、医療と介護など多職種での連携が非常に大切となります。

オンライン化がもたらす密接なコミュニケーション

終末期を自宅で過ごす患者さんの家族に対して、どのように接していますか?

段俊行院長 だんホームクリニック3

24時間365日対応といっても、私たちが常にそばにいるわけではありません。ご本人・家族さんの不安を取り除くことが重要です。当院では24時間看護師さらに医師とも連絡が取れるような体制を整えています。オンラインシステムを使うことで外部の訪問看護師やケアマネジャーとも連絡を取るようにしています。希望があるご家族さんとはメッセージアプリを使って薬の変更や採血結果などを報告し、コミュニケーションをとっています。私が訪問できないときでも看護師が患者さんの状態などを知らせてくれますので、適切に対応することができます。そうした連携は、不安を抱えながら自宅療養される患者さんやご家族の安心につながると思います。

オンライン化によるメリットもあるのですね。

新型コロナウイルス感染症流行のために導入を余儀なくされたオンラインツールでしたが、結果的に退院前カンファレンスの充実が図れました。退院前カンファレンスは開業前から重視していました。患者さんが退院する前に、ご家族、医師や訪問看護師、ケアマネジャー、介護職員が集まって退院に向けて会議をします。それを今はオンラインで行うことも増えています。移動の必要がなく、遠い所からでも参加できるので便利なツールです。自宅療養になっていきなり知らない顔の人がやってくるよりも、退院前に患者さんやご家族と、訪問する人たちとの顔合わせができるのは良いことです。薬剤師や福祉用具のスタッフも参加して必要な情報の提供も実現できつつあります。

診療する上で気をつけていることなどありますか?

段俊行院長 だんホームクリニック4

できるだけ薬を増やさないようにしています。複数の医療機関を通院している方は必要以上に増えてしまうことがあります。服薬が多すぎるために、めまいや吐き気、不眠などの副作用が出てしまっていることもあり、中止することで症状が軽減することもあります。薬は処方するより中止するほうが難しいことがあります。例えば胃薬を処方した際に、胃の調子が改善しても「飲んでいるほうが安心」と飲み続けてしまうことがあります。薬には副作用というデメリットがあることを説明して、必要性の低い薬を中止してもらえるように説明しています。処方する場合には「良くなったらやめましょう」「飲んで結果が出なかったらやめてみましょう」と初めから処方後のことを説明し処方することも大切だと考えています。

自宅療養を快適にするための多様なアプローチ

訪問診療のやりがいをお聞かせください。

段俊行院長 だんホームクリニック5

医療にも限界があり、医師が対応できるものは限られています。がんの患者さんに対して残された治療方法は少なく、看取ることしかできないこともあります。そこに無力感を感じるのではなく、最期を過ごす患者さんにどう関わっていくかが大切だと考えます。私たち在宅医療を行うチームはそこからが出番なので、そういう部分にやりがいを感じます。患者さんやご家族の希望をかなえるために、私たちが持つ手段をお伝えします。必要以上の医療を提供するのでなく、安らかに過ごしていただくために必要なことを行っていく。一番の不安は痛みや苦しみだと思いますが、痛みを取り除くための方法をお伝えしていきます。医療用麻薬には内服、貼り薬、注射や座薬などがあります。退院する際に病院の医師や薬剤師も説明していても、もう一度説明することが大切です。訪問診療では患者さんと近いところでお話ができ、何度も説明する機会が持てるところにも良さがあります。

今後の展望をお聞かせください。

ありがたいことに開業から5年がたち、患者さんが増え続けています。それだけ訪問診療を望まれる方が多いのだと思います。今後は、まだ訪問診療を知らない方にも伝えていきたいですね。また、訪問診療に携わるスタッフ、医師や看護師などがまだまだ足りず、その啓発活動や教育にも力を入れていきたいと思っています。私も50歳を過ぎ、若い頃のように動けなくなってきてます、一緒に在宅医療に携わってくれる医師、次の世代を継いでくれる医師を育てたいです。訪問診療に携わる医師やスタッフに大きな負担がかからないように、余裕をもって働ける環境づくりも大切だと思っています。そうすることで、もっと多くの患者さんにより良い訪問診療をお届けできると考えています。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

段俊行院長 だんホームクリニック6

「一人じゃない」ということをお伝えしたいです。病気のこともお金のこともいろいろな困難があると思いますが、一人で考えていては思いつかないことでも、みんなで考えると解決することもありますので相談することが大切です。私の母も高齢になって、老後や看取りのことなど将来のことを考えます。そのような目線で患者さんやご家族と接しております、一緒に解決できればたいへんうれしいです。困っていることがあれば、ぜひご相談ください。

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