藤澤 正宏 院長の独自取材記事
こうなんfamilyクリニック
(新潟市江南区/亀田駅)
最終更新日:2025/01/31
亀田駅から徒歩15分ほどの、新潟市郊外にある住宅地に位置する「こうなんfamilyクリニック」。同院は2017年春に藤澤正宏院長が、訪問医療専門のクリニックとして一人で立ち上げたのがスタート。その後、訪問看護ステーション「サンフラワー」を開設。さらなる患者の増加に伴い、規模拡大のため2022年12月に現在の場所に移転開業をした。内科、消化器内科、腫瘍内科、総合的な内科診療、緩和ケアなどの診療を行い、外来診療から訪問診療まで幅広く対応しながら地域医療を支えている。「歩ける方は外来診療で、歩けなくなったら訪問診療で、子どもから大人まで皆さんの要望にお応えしながら、診ていきたいです」と話す藤澤院長に、診療にかける思いや今後の展望を詳しく聞いた。
(取材日2024年11月29日)
訪問診療と外来診療、子どもから大人まで幅広く対応
2022年に新規移転開業に至るまでの経緯を教えていただけますか?
2017年3月まで近くの病院で働いていて、辞めて自分で何かしようと考えた時に、もともと外科出身で内科も8年ほど経験した結果、在宅医療をしたいなと。訪問診療は患者さんのご家族にも接することができますし、看取りまで自分が担当することでお役にたてたら良いなと思いました。最初は、20畳もないような部屋を借りてのスタートでした。部屋も全部自分で整えて、訪問診療車を買い、電子カルテを導入し、設備も少しずつ増やしていきました。外来診療が必要な場合は、亀田第一病院で週2回外来診療を担当していたので、そこにご案内する形で対応をしていました。半年後に訪問看護ステーション「サンフラワー」を立ちあげ、さらに2022年12月に新規移転開業することで、徐々にスタッフを増やすことができ、ようやく地域医療としてスタートできたという感じですね。
スタッフは総勢40人近くいらっしゃるそうですね。
そうですね。スタッフも随分と増えました。今は常勤医師3人、非常勤医師6人、看護師がクリニックに4人と訪問看護師6人、理学療法士2人の合計21人。そして、医療相談員3人、臨床検査技師2人と、他にも歯科医師常勤1人、非常勤歯科医師が1人、歯科衛生士2人、医療事務が8人いて、40人くらいの体制でやっています。3年前に土地を見つけて引っ越すと決めた時に、地域医療も外来診療もちゃんと任せられる人を探しました。職員が楽しく過ごせるような環境を作りたいと思い、短時間有給制度を導入し、子育てしやすい環境づくりをしています。2年でここまで信頼できるスタッフが増えて、良いクリニックになってきたなと実感しています。
診療所をやるにあたり、ビジョンはありましたか?
基本的に歩ける方は外来診療、歩けなくなった方は訪問診療で、子どもから大人まで家族を全員診るというコンセプトです。理念は、「患者さまに優しい医療、患者さまに寄り添う医療、患者さまとともに歩む医療」です。優しいというのは、単なる優しさではなく、例えば金銭面。独り身の方には、医療相談員が入り、介護保険や生活保護を案内することでより良い介護医療が受けられるはずですよね。そういった優しさです。他にも例えば外科であれば、何でも手術しろというのではなくて、患者さんに優しい医療を提供したい。そして、医師が決めつけるのではなくて、患者さんのやりたいことを聞き出し寄り添う医療をやりたい。最後、ともに歩む医療というのは、患者さんから得たことをより良い方向に結びつけていくという考え方ですね。この3つの柱を持って、各部署に優秀なスタッフがいるので、みんなで話し合いながらやっています。
チーム医療で地域ニーズに応え医療を支える
なぜ新潟で開業されたのですか? 今までの経緯を教えてください。
祖父が栃木市で小児科を開業し、その後に父が継ぎました。父は外科医だったのですが、地元に戻り父が二代目として継ぎました。うちの父は、遊びも豪傑な人だったのですが、24時間365日よく患者さんを診ていました。僕自身は父の背中を見ていて、高3の時に医師になろうと決めました。その後、自治医科大学の外科に入局し、東京や茨城に派遣されて働いていました。そんな中、自分が腰を悪くしたこともあって、ゆくゆくは地域医療をやりたいと思うようになりました。新潟に来た理由は、親戚の病院があったからです。父は僕が学生の時に亡くなってしまっていたので、新潟の病院を手伝ってほしいということで新潟市に来ました。8年間外科だけでなく内科の診療にも従事して、副院長もやっていました。そこを2017年に辞めて、独立したという流れです。江南区の医師会はとても良い先生が多いので、同エリアで開業先を探すことにしたのです。
どんな患者さんが多いですか?
訪問診療は、通院ができなくなったから往診で診てほしいと、病院や介護事業所のケアマネージャーから依頼がくることが多いです。認知症で本人は医療機関に行きたがらないというパターンもあり、ご家族が地域包括ケアにご相談へ行って、そこからうちに依頼がくるといった流れもあります。医療相談員がまず様子を見に行って、その後一緒に医師も行ったりします。主治医意見書を書くことで要介護認定され、介護保険やホームヘルパーも使えるようになり、施設にも入ることも可能になります。最近は、末期がんの方も増えています。当院の医師は、一般内科では総合的にいろいろな角度から診られる先生が集まっています。糖尿病・心不全・認知症・皮膚の疾患など訪問診療で診る患者さんの症状は、多岐にわたりますからね。
スタッフの体制について教えてください。
外来診療は診療分野で分けず、時間帯で分けています。坪野先生は総合的な診療の初期対応をお任せしています。松本先生はがん専門。訪問診療に関してがんの診療は、松本先生が担当することが多いですが、特にはっきりとは分けていません。特徴としてはカンファレンスに力を入れていますね。朝礼で全員の動きやオンコールの内容など、看護師からの報告を含めて共有を徹底しています。夜はオンコール当番もあるので、状況などをしっかり共有します。訪問看護師も併せて、週1回全体会議もやっています。また、デスカンファレンスという患者さんが亡くなられた後の振り返りを、ケアマネジャーさんなどを招いて行っています。
患者と家族の人生に寄り添う医療を
医療人として大切にしていることはありますか?
患者さんの気持ちになって診るということですかね。外来診療は決まった人数を診ないといけないので、時間がどうしても短くなってしまうのですが、訪問診療では1時間くらいかけることもあります。家族構成や趣味なども聞けますし、向こうの気持ちを引き出すように心がけています。医師としてのスペシャリティーは持っていますが、人と人との付き合いですからね。外科で働いていた頃は、末期がんの方は病院で亡くなる方がほとんどでした。今は末期がんで治療することができなくなったら、家で診てもらいたいという要望もあります。在宅で診る先生も増えてきて、選べる時代になってきています。僕らが入り込んで、患者さんと家族の人生に寄り添えたら。患者さんから学べることも多いと思いますし、みんなで話し合ってより良い医療をやっていきたいと考えています。
休日の過ごし方を教えてください。
父が外科医だったので、僕が小さい頃はほとんど遊んでもらってないです。なので、時間があるときは、子どもと遊ぶようにしていて、ゲームをしていますね。あとは、ドラムスクールに通っていました。家でもドラムを買って叩いていたんですが、3ヵ月で子どもに抜かれました(笑)。
今後のビジョンを教えてください。
5年、10年かけてつくろうと思っていたクリニックが、2年で形になっています。おかげさまで需要があって、地域の方に必要とされている実感はあります。訪問診療で当院がやっていることを伝えるため、病院回りを積極的にやっていますし、そうすることで患者さんは増えていくと考えています。また外来診療は、特に感染症で来られる方が増えていると感じています。うちには外から入れる感染症用の部屋があるんですよ。他にもCTがあるので、検診をやってそのままCTも撮ることができます。そういった情報がクチコミで広がっているみたいです。これからも、患者さんが何を求めているのかをしっかり考えて、それに応えられるようにやっていきたいと思っています。