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酒井 喜正 院長の独自取材記事

さかいクリニック

(名古屋市昭和区/御器所駅)

最終更新日:2019/08/22

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名古屋市営地下鉄鶴舞線または桜通線・御器所駅から川名公園方面に向かって徒歩10分。2017年10月から診療を開始したのが「さかいクリニック」だ。院長の酒井喜正先生が、父から受け継いだ建物を改装。もとは外科医院であった病院を、内科、循環器内科、外科、小児科などを扱う「地域のかかりつけ院」としてスタートさせた。酒井先生の専門は小児心臓外科。その第一線で長年、患者や家族を支えてきた経験と技術、専門性を、地域医療に生かしたいという酒井院長。かつての「小さな患者」たちが、画用紙に描いた絵を開業祝いにもってきたと楽しげに話す姿に、人としての温かさと器の大きさを感じた。
(取材日2017年10月26日)

人生を変えた先輩医師との出会い

この地域のご出身と伺いました。

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当院の前身は父が開業していた外科医院で、僕も高校卒業まで近所に住んでいたので、この地域は地元です。周辺の地理はほぼ頭に入っていますが、最近は新しいマンションや住宅が増えて、町の雰囲気は変わってきていますね。今の住まいもこの近くなのですが、妻と近隣住民の井戸端会議で「早く開業してほしい」と言われていたこともあり、背中を押された感じです。開業にあたっては、父の時代の古いイメージを払拭し、明るい雰囲気の内外装にしました。医師は僕だけですが診察室は2つ設けて、インフルエンザなど感染症の疑いがある方や処置の必要な方などに使っていただけるようにしています。僕は小児心臓外科を長く手がけていたので、クリニック名を「さかいハートクリニック」にしようかというアイデアもありましたが、地域のホームドクターとして幅広く診察しますので、シンプルに「さかいクリニック」にしました。

医師の仕事を選んだのもお父さまの影響でしょうか。

父からは一度も「医者になれ」と言われたことはありません。医者という仕事にすごく憧れを抱いていたというわけではなかったのですが(笑)。子どもの頃、学校の同級生と一緒に父の勤務先で見学させてもらったことがきっかけになったのかもしれませんね。父が国立名古屋病院で勤務していた当時は、心臓外科医が非常に少なく何をするにも新しいことばかりでとても刺激的だったようです。父から言わせると今の心臓外科はいろいろ治療が確立してしまい「あまり面白くない」と言っていましたが、僕はそうは思いません。心臓は筋肉のかたまりのシンプルな臓器です。他の臓器では切って切除して治すという手術が多いですが、心臓は機能を取り戻すことが出来るということにやりがいを感じます。近年は技術も管理も大変進歩しており、例えば大動脈弁置換手術では、術前の状態に問題がなければ手術の危険率は低く、多くの場合は回復するとされているくらいなんですよ。

小児心臓外科で長く働かれたそうですね。

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大阪医科大学を卒業し岡崎市民病院で働いたのち、国立循環器病研究センターで3年間勉強し、その後は名古屋大学に移りました。この期間に子どもの心臓外科に接し、まずは勉強してみようと思ったんです。心臓外科全体の手術成績は良くなっていますが、子どもは大人ほど成功率が高くなく、亡くなってしまう可能性もあります。患者である子どもはもちろん、親御さんにも僕らは接するわけで、かなりつらいですね。他科の先生たちからも「よくこんなにつらい仕事ができるな……」と何度も言われたものです。なり手が少ない分野なのですが、そこで孤軍奮闘されていたある先生に誘われたことが、僕の人生を変えました。この出会いがなければ、小児心臓外科を選ぶことはなかったでしょう。

世界的な問題「成人先天性疾患」患者の受け皿に

開業を決意したいきさつを教えてください。

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心臓外科で長く働き、14年在籍した名古屋第二赤十字病院では小児心臓外科部長も務めました。開業を決意したのは、自分の年齢を意識したからですね。なり手の少ない分野なので、何かと一人でやらないといけない部分が多く、症例数も増やせないのが悩みでした。心臓外科手術は長時間を費やすものです。50歳を過ぎた頃から体力的にも厳しくなり「このまま僕が執刀することは、患者さんの利益にならないのでは」と考えるようになったんです。定年まで働こうと思えばできたのでしょうが、患者さんにとって良くないことなら、僕にとっても好ましくないと思い、病院勤めを辞めることにしました。そんな折、地元からクリニック開設の要望があったといういきさつです。

小児心臓外科で手術の対象となるのはどんな子どもでしょうか。

圧倒的に多いのが、先天的な心臓疾患をもって生まれてきた子の手術です。対象は乳児から小児までということになりますが、時には先天性心疾患を抱えたまま成人する方もいます。少し前まで「手術をせずに生きられるところまで生きる」という考え方の医療者やご家族も少なからずいました。また、幼時期に手術を受けたものの、体の成長に機能が追いつかない場合もあります。40歳までなんとか病気と付き合ってきたけれど、手術をしなければ60歳は迎えられないだろうというケースもあります。こうした成人先天性疾患は、心臓外科だけでなくさまざまな分野で世界的な命題になっているんです。では、そういう人たちを誰が診てどう管理していくのかというと、社会の中にその受け皿になる病院や診られる医師が非常に少ない現実があります。

病診連携が重要になってきますね。

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小児心臓外科、成人先天性疾患だけでなく、心臓外科一般でもそうですね。でも、これがなかなか難しいんです。信頼感もあって、患者さんは手術をしてくれた医師から離れにくいので、なかなかクリニックでの管理に切り替えてもらえないんですね。そこで「最近まで心臓外科でバリバリ働いていた医師だから」と病院から紹介されて、当院に通うようになった患者さんもいます。今後は逆に、当院で診断した重症度の高い患者さんを基幹病院に送ることもあるでしょう。日本全体、地域全体の医療を考えて、専門性を生かした病診連携の受け皿としても機能していければと思っています。

病児の訪問在宅医療で、家族の負担を軽減したい

診療で心がけているのはどんなことですか。

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患者さんとしっかり向き合うことです。治療がうまくいって元気になれば、当然、患者さんの不満は少ないのですが、治療が順調でないときにはコミュニケーション不足が患者さんの不安の原因になります。雑談も交えて、とにかくよく話すことが大切です。患者さんにとって医師が話しやすい相手であれば、病気を見つけるヒントも得やすいのです。これは開業前から、ずっと心がけてきたことですね。今は開業して間もないので新しい患者さんが多く、一から話を聞かないといけないのでどうしても初診の時間が長くなってしまいがちですが、再診の患者さんが増えればもう少し上手に時間をやりくりできるようになるかなと思っています。

今後の展望を教えてください。

長年、小児医療にかかわってきた経験を生かして、将来的には小児在宅医療ができればいいなと思っています。小児で在宅医療を受けている患者さんは、気管切開や胃ろうなど外科的処置をしている子が多く、一般小児科の医師には手がけにくい分野なんです。例えば人工呼吸器なら僕は使い慣れていますし、そういうニーズに応える形でお手伝いできればと考えています。訪問在宅医療でできないとなると、親御さんがなんとか自分でやろうとしますよね。毎日のことでご家族も疲弊していることもあります。一番苦労するのはお母さんなので、ちょっと気を抜いてもらえるようにサポートする、そういうクリニックや病児保育なども将来的にはやっていければと思っています。

読者へメッセージをお願いします。

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自分の体や病気について正しく理解していただきたいのですが、知ることや理解することをあきらめている方もいらっしゃいます。その結果、いつの間にか薬をやめてしまい、再び症状が悪化する方も少なくありません。身の回りの世話が自分でできる方はどなたでも、まず自分の体を理解して、健康づくりに取り組んでほしいです。また、当院は気軽に相談できるクリニックとなるよう、スタッフ一丸となって取り組んでいます。妻も看護師ですし、気軽に話しかけていただいて、おしゃべりを楽しみながら治療に通っていただきたいですね。そして、子どもからお年寄りまで家族全員の健康管理を預かる「街のお医者さん」として、地域の人にとって必要な存在になっていきたいと願っています。

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