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飯沼 敏朗 院長の独自取材記事

さくらそう診療所

(さいたま市中央区/与野本町駅)

最終更新日:2019/08/22

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「最期は病院ではなく、住み慣れたわが家で迎えたい」。さいたま市中央区の「さくらそう診療所」は、そんな多くの患者や家族の願いに応えてつくられた、在宅診療専門のクリニックだ。院長の飯沼敏朗(いいぬま・としお)先生は、長年慈恵会医科大学で消化器がんの免疫療法などの研究・治療に携わり、多くの重症患者を診てきたベテラン医師。その経験から、看取り・終末医療のあり方を重視し、終末期の患者が、望むなら自宅で充実した時間を過ごせるよう、在宅医療・看護・介護が連携した地域医療をめざしている。「人生の最期を満足いくものにすることは、在宅医療の大きな仕事の一つだと思っています」という飯沼院長に話を聞いた。
(取材日2017年10月18日)

「自宅で最期を過ごしたい」をかなえる在宅医療

なぜ在宅医療に特化したクリニックを開かれたのですか?

開院以前は大学病院で消化器内科を専門にしており、胃がんや大腸がんの患者さんを見ていました。そこで、抗がん剤の治療も行っていたのですが、病院で亡くなった患者さんのうち「家で最期を過ごしたかった」とおっしゃる方が多くいらっしゃる現状を知りました。そこから最期を迎える患者さんを支えたいという思いが強くなっていきました。自宅での療養生活を支える在宅医療は、東京都内では充実してきていますが埼玉ではまだまだです。ただ、これから確実に必要になるものですし、縁あって近くに「診てほしい」と言われていた老人ホームもありましたので、埼玉で在宅医療に特化したクリニックを開設することを決めました。週1回など定期的に訪問する「訪問診療」と患者さんの要望に応じて訪問する「往診」がセットで、現在50~60件ほど診ています。患者さんは認知症の方や通院困難な方、それからがんの末期で最期をご自宅で迎えたいという人が中心ですね。

自宅で最期を迎えることを望む人は増えているのでしょうか?

望んでいる方は多いですが、「できるのかな?」という不安や「苦しかったりつらかったら嫌だな」ということから、二の足を踏んでいるのが現状だと思います。ただ在宅医療でも、おなかの水を抜いたり胃ろうの管理など大抵のことはできますし、薬などをうまく使えば痛みのコントロールも可能です。訪問看護師さんやヘルパーさんを入れることで、ご家族の負担を減らすこともできますし、介護用ベッドなど必要な機器をレンタルできる制度もあります。医療センターからの紹介で診るようになった患者さんがいるのですが、病院にいるときは痛みがひどくてどんどん痛み止めの薬の量が増えていたのですが、お家に帰ってからは痛みが落ち着き、薬の量も減ったんです。お母さんの手料理も食べられ、また病院では体を拭くだけだったのがお風呂にも入れて、家族も「よかった」と感じられたようです。そういうのが一番の目標ですし、そのために在宅医療があるのだと思います。

看取りや終末医療を重視されているのですね。

そうですね。もともと、そういうのをやりたいと思ったのがクリニックを始めたきっかけでもあります。病院にいると「患者」ですが、おうちに帰れば「一個人」になれるので、最期はそういう状態で過ごしていただきたいと考えています。先にお話しした患者さんの奥さんも、最初は無理かもしれないと言われていたんですが、看取った後は「やれてよかった」というふうにおっしゃっていましたね。家に帰れるかどうかで患者さん本人の満足感もやはり違うと思います。この患者さんは、帰れるとわかった日の夜はうれしすぎてそわそわされていましたが、家に到着した時の笑顔がとても穏やかになられたのが印象的でしたね。

在宅医療の大事な仕事はいい終わり方をもたらすこと

看護・介護双方と密な連携があるのですね。

すぐ連絡も入りますし、密に連携を取っています。仲がよいケアマネジャーさんはすぐに電話してきてくれますし、診察しに来てほしいと言われれば往診も行きます。今入院中だけれど診てもらえないかと病院から連絡が来ることもあります。その場合、訪問の頻度や訪問看護師さん・ヘルパーさんをどれぐらい入れるかは、退院前に病院でケアマネジャーさん、病院の主治医、訪問看護師、ヘルパーさん、それから私たちで会議を開き、相談して決めるのが一般的ですね。訪問看護師さんが適度に見に行ってくれるので、定期的な訪問診療に出向くのは週1回か2週に1回ほど。ただ、痛み止めの薬はそんなに多く出せないので、がんの末期など重症の方は週2回ぐらいの頻度で訪問することが多いです。

在宅医療とは別に、相談のための外来窓口を設けておられますが、これはどういうものですか?

在宅医療に関してご家族からの相談を受けるものです。近所の人や知り合いに診てほしいと頼まれれば診ることはありますが、比較的多いのは、薬は出してくれるのかとか、もし調子が悪くなったら以前の病院にも通えるのかとかという相談ですね。市民医療センターやさいたま赤十字病院、市立病院、メディカルセンターなどとも連携していますし、もちろん何かあれば以前の病院にかかることはできます。電話での問い合わせや診療の申し込みもありますが、患者さんのことはスタッフみんなで情報を共有して、誰が対応してもわかるようにしています。スタッフに伝えているのは、目の前の患者さんが「自分のおじいちゃん、おばあちゃんだと思って」ということ。そうすると、薬や治療、対応に関してどうしようかと思ったときも、迷わずにどうするべきかを決められますからね。

外来との兼任ではなく、在宅医療専門クリニックであるメリットは何でしょう?

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要望がある時にすぐ駆けつけられることです。医師会でもよく問題になるのですが、外来があると、急に来てほしいと言われた時に対応できず、「救急車を呼んで」と言わざるを得ないことが多いんです。でも救急隊を呼ぶと、例えば心肺停止状態なら心臓マッサージをしながら緊急搬送されることになります。患者さんがご高齢なら体に負担をかけてしまいますし、ご本人にとってつらいだけだと思います。患者さんの状態にもよりますが、在宅医療の大きな仕事の一つは穏やかに最期を迎える環境を整えることにあります。

まずは気軽に相談してほしい

大学での診療と在宅診療、どういう点に一番違いを感じますか?

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大学はまず検査をしてそのデータで物事の判断を行いますが、在宅診療は聴診や診察が主体です。本当はこっちのほうが難しいと感じています。数値が悪くてもすごく元気な人もいれば、数値が良くても調子が悪い人もいますからね。長年勤めた慈恵会医科大学の理念に「病気を診ずして病人を診よ」というのがありますが本当にそうだと感じますし、数値にばかりとらわれないで、患者さんを観察しながら診療することを大事にしています。元気かどうかは患者さんの気分によっても変わりますし、ちょっとした一言で元気になることもありますからね。「好きな話」で元気になる人も結構多くて、例えばある100歳を超えるおばあちゃんは好きな食べ物の話。その話をすれば元気になるんです。僕が行った次の日は、好きなものを食べると決めているぐらいです(笑)。何度も会う中でコミュニケーションが取れてきて、だんだんそういうこともわかってくるのはうれしいですね。

今後の展望についても教えてください。

病気になると気持ちも消極的になり、本人も家族も「こんな状態で帰るのは無理!」と思ってしまいがちですが、環境さえしっかり整えれば大丈夫なケースも多いです。「最期を家で過ごしたい」と思いつつ、無理かなと諦めてしまう人は大勢いると思います。もっとその気持ちを掘り起こし、環境を整えるお手伝いをしてくれる人たちがいることを伝え、多くの人たちが、最期の時まで充実した生活を送っていただけるように医療の立場として支えていきたいですね。

最後に、ドクターズ・ファイルの読者へ一言メッセージをお願いします。

どこで最期を迎えるかを考える時代になってきたと思います。もし病院の治療に行き詰まりを感じているなら、ご本人が望むのであれば、ご自宅で過ごす方法もあると考えていただいてもいいかなと思います。そしてその思いをかなえるために必要な医療体制や訪問看護、バックアップシステムもそろっていますし、地域の病院も協力できる体制になっていますので、大抵の治療は可能です。どんな状況でも患者さんとご家族の希望を支えていきたいと考えていますし、まずはどんな小さな不安や悩みでも構いません。気軽に相談していただけるとうれしいですね。

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