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河野 智子 院長の独自取材記事

訪問眼科 こうのクリニック

(相模原市南区/相模大野駅)

最終更新日:2022/03/17

河野智子院長 訪問眼科 こうのクリニック main

相模原市の閑静な住宅街にある「訪問眼科 こうのクリニック」は、眼科領域の訪問診療を行うクリニック。大学病院の助教や総合病院の眼科部長などを経て2017年に開業した河野智子院長は、気さくで明るく話しやすい雰囲気のドクターだ。すべての人が等しく眼科診療を受けられる機会をつくりたい、眼科へ行けない人のところへ医療を届けようという思いから訪問眼科を始めたという。患者の多くは高齢者。目の健康を維持することは生活の質を高め、楽しく健康に生きるために欠かせない要素だと考え、患者の「見える」をサポートし、介護にあたる家族のケアまで配慮する河野院長に話を聞いた。

(取材日2021年12月15日/更新日2022年3月16日)

通院が困難な患者のために訪問眼科のクリニックを開院

訪問診療で眼科というのは珍しいですね。

河野智子院長 訪問眼科 こうのクリニック1

勤務医時代、高齢の患者さんを診る機会が多くありました。高齢になると目の不調や病気は増加しますが、足腰が弱ってしまったり、ケガをして通えなくなったり、病気で寝たきりになってしまうこともあります。同じ患者さんに長く接していると、来院が途切れた時に気になるんですね。以前、2、3ヵ月に1度は診察に来ていた方が、半年も来ていないということがあり、後で実はお亡くなりになったのだと知らされたことがありました。当時、白内障などの手術を数多く担当していた私は、手術を終えた後、生まれ変わったように生き生きとされている方を幾度となく見てきました。一方、「目のことを心配し通院されていたあの患者さんは、亡くなるまで目の不安を抱えていたのだろうか。来院が困難だったのなら、ご自宅で診察して不安を解消してあげたかったな」と思ったことが、訪問眼科を始めるきっかけとなりました。

どのような方からの依頼が多いですか?

訪問先は個人宅と施設の両方ですが、最近は老人ホームや介護施設などからの依頼が増えている印象です。入居者を眼科へ通院させることは体力的にも厳しいですし、新型コロナウイルスも含めた感染症対策の観点からリスクを避けたいという考えがあるのかもしれませんね。施設なら介護職員がおられますが、居宅の患者さんの中には日中一人で過ごされている方もいらっしゃいます。そういう介護の手が届きにくい方々に手を差し伸べたいとの思いから、個人宅への訪問診療には特に力を入れています。患者さんのほとんどは高齢者です。開院当初は80代くらいの患者さんが多いのではないかと想定していましたが、最近は1日の診療の半分近くが90代の患者さんです。100歳を超えた患者さんもいらっしゃいますが、皆さん元気でご長寿ですね。

訪問眼科はどんな症状のときに利用すれば良いのでしょう?

河野智子院長 訪問眼科 こうのクリニック2

通常のクリニックと同じです。目やにがたくさん出る、ものもらいができた、逆さまつげが当たって痛いなどの症状や、何となく見えにくい、涙がたくさん出るといったことでも構いません。視力検査や眼底検査、視野検査までできる準備はしています。検査の種類は限られますし、病院とまったく同レベルの精度で検査が行えるわけではありませんが、様子を見ていていいのか、それとも手術など一歩進んだ治療のために適切な病院に行くべきかの判断はできます。白内障などは手術で改善を図ることもできますが、受診していただかなければ白内障かどうかも気づけません。受診できなければ目の病気について診断をされることもないし、ましてや治療を受けることもできないのです。寝たきりであっても「見る」楽しみを手に入れて、楽しく過ごせるお手伝いをしていきたいので、かかりつけのお医者さんが自宅に来てくれた、そんなふうに気軽に考えてもらいたいですね。

ロービジョンケアを取り入れ患者の生活を支援

訪問眼科ではどのような診療が可能ですか?

河野智子院長 訪問眼科 こうのクリニック3

逆さまつげの痛みを取る、目やにがあるなら洗って薬を処方するなど、一般的な眼科医療の提供はもちろんですが、中には患者さんが期待するほどの改善が得られないこともありますから、見えにくい方が見えにくいなりにもう少し生活しやすい環境を提案することもしなければいけないのだろうと思っています。例えば、眼鏡を替えても思うような状態にならないなら拡大鏡を使ってみるとか、介護する方に食事の出し方をアドバイスするなど、生活の工夫を眼科医の目線でできるといいですよね。ロービジョンケアと呼ばれる「視覚障害によって生活に何らかの支障を来している人に対する幅広い支援」を勉強しつつ、患者さんとそのご家族に提案していきたいと考えています。

ロービジョンケアを訪問眼科に取り入れていくのですね。

在宅診療は先端医療とは異なり、日々を暮らしやすくしていくための医療ともいえますので、ロービジョンケアという考え方も大切だと考えています。例えば、文字が読みづらい方に拡大読書器を紹介したり、生活していくために歩行訓練をしたり、お子さんなら点字教育をするなどいろいろあります。しかし、高齢の寝たきりの方に歩行訓練をすることはあまりないですし、拡大読書器を寝たきりの状態で使いこなすことは難しいでしょう。私自身がロービジョンケアを学んでいる途中ではありますが、在宅療養者のロービジョンケアについて考え、診療に取り入れていきたいですね。

生活のアドバイスをしていただけるのはうれしいですね。

河野智子院長 訪問眼科 こうのクリニック4

施設では明るい雰囲気にするためか、お部屋の壁が白くて照明も明るいところが多く見られます。しかし、目に問題を抱えている方は「見えにくい」、「まぶしい」と感じ、お部屋の中でサングラスをしていたり、ずっと部屋の電気を消して遮光カーテンを引いていたりすることもあります。ご自分の困り事を介護する人にうまく伝えられない患者さんも多く、それぞれの思いがうまく噛み合わないことがあります。そういう時は間に入ってアドバイスを行うようにしています。個人宅では歩行スペースの確認や部屋の明るさ、ベッド周りの整頓状況などをチェックしています。また、テレビの配置や寝ている時の姿勢が「見えにくい」原因になっていれば、対処方法を提案することもあります。

患者と介護者、両者の話に耳を傾け困り事を解決

診療で大切にしていることを教えてください。

河野智子院長 訪問眼科 こうのクリニック5

患者さんが何をしたいのかを意識することと、介護している方が困っていることを解決に導くことです。患者さんが医師には「大丈夫です」と話していても、ご家族の前では繰り返し目の不具合について訴えることもあると聞きます。介護者自身が高齢であったり、家事全般を一手に引き受けていたりして、すでに余力がないケースもあります。介護者が疲弊しきっていては十分な療養環境を得にくくなります。患者さんの困り事に対応することが一番ではありますが、患者さんの話だけ聞いていては、本当の意味での「生活の改善」につながりません。診察に同行するスタッフの力も借りて患者さんと介護者、その両者の話を聞くことを大切にしています。

どんなときにやりがいを感じますか?

訪問眼科をきっかけとして生活の改善につなげられるとうれしいですね。ご自身の趣味、例えば編み物やお庭の手入れなどを楽しめるようになっていただけたらと思い、診療しています。ほかにも、「治す」ではありませんが、ロービジョンケアの視点から便利グッズを紹介して喜ばれた時も患者さんのお役に立てたのかなと感じます。診療の中で得た気づきを発表し、論文にする活動もしています。そういった学術的な活動で得た知識や経験も現場に生かしていきたいです。在宅療養では、さまざまな理由から一般的に選択される治療法をとることができない場合が多々あります。一人ひとりの患者さんの状態と希望に合わせて、少しでも生活が楽しくなるようなお手伝いを、今後もしていきたいですね。

最後に読者へメッセージをお願いします。

河野智子院長 訪問眼科 こうのクリニック6

眼鏡の再作製を希望される方がとても多いのですが、眼鏡の度数変更だけでは解決しない問題もあります。眼鏡は本来、まっすぐかけてまっすぐ見ることを前提に作られています。横になって見ている、ベッド上で使うために鼻眼鏡となっているなど患者さんがとる楽な姿勢が原因で眼鏡が適切に使えていないこともあります。テレビの配置を調整したり、可能な範囲で適切な姿勢を指示したり、拡大鏡やタブレットを使うなど、眼鏡のレンズ交換ではない改善方法があることを知ってもらいたいですね。命に関わらないという側面からか目の不調は放置されがちですが、目の健康は私たちの生活に直結しています。見ることに対する潜在的な不安を抱えている方々が快適に見るためのお手伝い、QOLを上げるための手助けができればいいですね。

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