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谷 鎮礼 院長の独自取材記事

たに在宅クリニック

(一宮市/尾張一宮駅)

最終更新日:2019/08/22

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高齢化の進行により「在宅医療」の重要性がますます高まっている。愛知県一宮市にある「たに在宅クリニック」は、同市ではまだ数少ないという、在宅医療を専門に行うクリニックの一つだ。急性の症状で入院治療を受けていた患者が、退院後、継続的に受診できるクリニックを見つけられないケースを多く見てきたという谷鎮礼(たに・しげのり)院長。自分が必要とされているのはそこではないかと感じ、2017年春、開業に至った。専門の呼吸器疾患に限らず、内科全般から基本的な外科的処置、さらに在宅でのレントゲン撮影も行い、“正確な診断”にこだわっている。明るくフランクな人柄だが、在宅医療に向き合う姿勢は真剣そのものだ。病院に負けない質の高い医療の提供をめざす院長に、熱い想いを語ってもらった。
(取材日2018年1月26日)

困っている患者を救いたい一心で、在宅医療に踏み出す

早速ですが、先生はなぜ在宅医療を選ばれたのですか?

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もともと専門が呼吸器なのですが、呼吸器系の病気って生涯つき合っていくことも多いんです。例えばCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。主にたばこが原因の慢性病ですが、咳や息切れなどの症状が著しく悪化した状態、急性増悪(ぞうあく)は入院で治療することもあります。病院は急性期の疾患を治す場所なので、病気が根本的に治ったわけではなくても、急性期の治療が終われば退院しなければいけないのです。多くの患者さんが急性増悪を起こす前よりつらい状態になっているので、不安な気持ちで退院することになるんですよね。中にはすぐに病院へ行ける環境でない人もいます。私が本当に必要とされているのはここなのではないかと思ったんです。

専門性も生きる領域なんですね。在宅医療を考える上でのエピソードはありますか?

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施設で生活をされていて、老衰でもう心肺停止状態になっている方がいらっしゃいました。「蘇生術を施さないで」と申し送りがされている方でも、死亡宣告を受けるために救急車に乗って病院へ行く場合は、必ず蘇生術をしなければいけないんです。施設にはたいてい医師がいないので、結果的に救急車を呼ばざるを得ないことも多いわけです。そうなると、ご本人の希望は関係なく、たとえご家族が泣いて拒否しても、“ルールがあるから”、蘇生術を施さなければいけない。制度として、ご本人やご家族の最後の望みもかなえることができないんです。患者さんとしても、まさか普通に死ぬことも許されていないなんて知らないですよね。自分も知ってはいながらも実際に体験すると違和感を持ち、在宅医療で患者さんの死に寄り添える医療を行いたいと考えました。

内科全般から外科的処置まで幅広く対応

ご開業までには実際の現場もご覧になったのですか?

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そうですね。まず、在宅医療をやっておられる先生のところに見学に行ったんです。実際に見させていただいて、「在宅でこんなことまでできるんだ」というのが第一印象でした。じっくり振り返って、一つ一つを考えてみても、「これもできる」「あれもできるよね」と。逆に病院じゃないとできないことってあるのかなとも。もちろんあるにはありますが、そんなに多いわけではないんじゃないかと思うほど、可能性を感じました。

やはり呼吸器系の疾患を主に診ておられるのですか?

呼吸器系はもちろんですが、内科全般を幅広く診ています。これまで外科的な処置も数多く経験しているので、中心静脈ポートの埋め込みや気管切開などの外科的な対応も可能です。また、最近よく取り上げられる摂食・嚥下障害の治療。嚥下機能を内視鏡で厳密に評価して、できる限り経口摂取にこだわっています。本当は食べられるのに無理に絶食にしてしまっていないかという点も見ます。看護師も一緒に評価訓練の勉強会に参加するなどして、クリニック全体で摂食障害に取り組んでいるところです。その他ホームページに可能な検査や処置を挙げていますが、ほぼ病院と同等のことができるようにしています。

訪問診療で、精度の高い医療を維持するとなると、スタッフの協力も大きいのではないですか?

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非常に大きいですね。当院は訪問看護も行っていますが、当院の看護師が訪問しますので、病状の把握と連携が迅速です。医師1人でできることなんて、本当に限られていて、優秀な看護師がいてくれることで医師の提供する治療も洗練されると思います。当院の看護師には、私が病院に勤務していた頃から一緒に働いていた者もおり、気心も知れていて情報伝達もスムーズです。病院で急性期の治療を担当していた者もおりますので、当院では急性期医療、また高度な在宅医療が提供できています。また、診療と看護は協同します。当院の看護師はその点も経験豊富なので、治療後のケアも安心して任せられるんです。共用の電子カルテを使用しており、モバイルにデータ保存しているので、どこにいても患者さんの状態をお互いにすぐ確認できます。それ以外にも、毎日朝と昼に会議をしてお互い情報を共有するようにしています。

患者の喜ぶ顔が何よりの幸せ

在宅だと病院に比べてご家族の負担がどうしても大きくなると思うのですが、そのあたりはいかがでしょう。

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そうですね。24時間365日対応しているものの、ずっと患者さんのご自宅にいるわけではないので、ご家族はやはり不安も負担も大きいと思います。私たちの目標は病院と同等の在宅医療を提供することですが、ご家族の目標が「何が何でも在宅で頑張ること」である必要はまったくありません。一度家に帰ったらもう二度と病院へは戻れないということではなく、患者さんの選択肢を広げることが目的なのです。ご自宅にいったん帰ってから肺炎になってしまう、そんな急性の疾患を発症したときでも、ご自宅で治療することを選択肢の一つとして提示することができるということなんです。また、肺炎もきちんとレントゲン撮影を行って診断する必要がありますが、当院はポータブル式のレントゲンを使って在宅での正しい検査・診断に努めています。患者さんをクリニックまでお連れすることが困難な場合も多いので、その点でもご家族の方には喜んでいただけています。

先生が診療の際に心がけていることは何ですか?

「徹底した説明」です。今の状態や病気の説明を、丁寧にする。この病気はどういう病気で、どのような経過をたどって、治療はどうするのか。今何が起こっているのかをわかっていただけるまでとことん詳しくお話しします。最初から入院しか選択肢がないというのではなく、適切に患者さんの重症度や状態を評価して、入院した場合にはこんなふうになりますよ、あるいはおうちで診た場合はこういう治療になります、ということなどですね。撮影したレントゲンをその場で一緒に見ていただきながら説明しています。

このお仕事をして良かったなと思われる瞬間は?

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常に感じていますよ。病院での診療以上にある意味大変なのは確かです。常に緊張しながら診て、やはり必要なときは病院へ送らなければいけない。患者さんの状態に応じて、救急車に同乗して搬送もしています。それは正確な情報を病院側に伝えたいということと、次の先生に連携するまでは、私の責任だと思っているからです。そういった中で、毎日小さい喜びを繰り返し味わっています。「おうちで治療を受けられて、先生に診てもらって良かった」と、患者さんやご家族に言ってもらえる瞬間が、何より幸せですね。患者さんやご家族と一緒に喜んで、時には苦しみも分かち合って、そういった日々にやりがいを感じています。

最後にメッセ―ジをお願いします。

在宅診療を行っている中でも、当院は対応力が高いと自負しています。在宅だからあれができない、これができないというのは、可能な限りなくしています。実際に「これもできるんですか」と驚かれることも多いです。以前、良かれと思って始めた治療がご家族の介護の負担を増やすことになってしまった経験があって。そんな失敗があるので、今では、患者さんだけでなくご家族も含めてハッピーになるように組み立てていくよう心がけています。「ご家族皆さんで幸せに暮らすツール」の一つとして、在宅医療という選択肢、私たちのことを知っておいていただけるとうれしいです。

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