葉梨 喬芳 理事長の独自取材記事
葉梨循環器内科クリニック
(海老名市/かしわ台駅)
最終更新日:2026/06/19
2017年に「葉梨循環器内科クリニック」を開院した葉梨喬芳(はなし・たかよし)理事長。勤務医時代より自ら苦難の道を選び、救急医療のハードな現場や、離島でストイックに経験を積んできたが、それを感じさせない朗らかでソフトな物腰が印象的なドクターだ。循環器領域では漠然と不安を感じる患者が多いことから、何よりも不安を解消することを重視していると話す。そんな葉梨理事長に、同院の診療の特徴や医師をめざしたきっかけから開院の経緯、今後の展望などについて詳しく聞いた。
(取材日2026年2月26日)
自らストイックに経験を積んできた勤務医時代
医師をめざしたきっかけは何ですか?

もともと父がこの場所で整形外科の医院を開いていましたので、その姿を見て育ったからか自然と医師を志すようになりました。父は、患者さんを最期まで診たいという想いを強く持って診療に臨んでいました。父の「患者さんファースト」という考えは僕の診療に対する姿勢にも大きく影響しています。現在、父の医院は近隣に引っ越して兄が後を継ぎ、当院と連携しつつ地域医療を支えています。また姉も整形外科の医師なので、どうしたらさらに地域医療の発展に貢献していけるかを考えたときに、父や兄、姉と協力しながらも違った役割が担えるようにと、内科を専門に選びました。
内科の中でもどのようにご専門を選ばれましたか?
医学部での勉強は大変で、中でも心臓については最初さっぱりわからなかったんです。先生たちは心電図一枚からその患者さんの容態など心臓以外についても推測していきます。全然別の景色が見えているようで不思議でした。また、どんな病気でも心臓というのは治療する上で見過ごせない部分だと思いました。臨床研修の際、どの診療科へ行っても、心臓については何かあれば専門の先生に相談している場面をよく目にしました。そこで、当時は決して得意と言える分野ではありませんでしたが、心臓について学びたいと思い、あえて循環器内科を専門に選びました。勤務を始めると、夜中に呼び出されることも多く忙しかったのですが、忙しい中でも、興味を持って学ばせていただきましたね。
その後、どのような経験を積まれましたか?

研鑽を積むために、数多くの救急車を受け入れている高知県の近森病院で勤務しました。そこでは内科全般が診れなければならず忙しかったのですが、たいへん勉強になりました。伊豆大島にある大島医療センターでは、循環器が専門の医師が僕1人しかいないという状況で勤務することになりました。島の医師として、夜間は外科内科問わず診察したり、重症の患者さんはヘリコプターで本土に搬送したりと、多くの経験をさせてもらいました。その後は地元の拠点病院である海老名総合病院に勤務し、循環器専門で主にカテーテル治療をはじめとする虚血性心疾患を学びました。長く勤務した海老名総合病院で医師としての仕上げをしていただいたように思います。いろんな環境での勤務が僕を成長させてくれました。幸いなことにいつも上司や同僚、スタッフにとても恵まれていて、どの病院でも本当に良い思い出ばかり残っています。
患者の不安を解消し、病気や治療への理解を深める
この地で開業した経緯や、現在の想いなどを聞かせてください。

開業のきっかけは、この辺りに循環器専門の医院がなく、交通機関もあまりないので、地域の方のためにこの場所で開業することに意味があると考えたことです。専門は循環器ですが、それ以外の症状についても当院で完結できる病状であれば責任を持って診療します。また、高度な治療が必要であれば他の医療機関をご紹介する、中継地点としての役割も果たしています。実際に開業してみると、勤務医時代と異なり慢性期の患者さんが多いことから、症状や治療を理解していただくことの難しさを感じました。医療の進展に伴い治療のガイドラインも変わって、処方する薬の種類が増えることもありますし、患者さんの経済的な背景なども考慮しながら適切な治療を提案する必要もあります。それに対して難しさを感じると同時に、やりがいも感じています。
診療面での特徴を教えてください。
通常の心電図に加えて、24時間計測可能なホルター心電図、心エコー、エックス線撮影装置、血管の詰まり具合や血管年齢を測れるABI検査など、循環器疾患に必要な医療機器はそろえています。また、一分一秒を争う心臓の病気である心不全、狭心症・心筋梗塞のマーカーなどはその日のうちに検査結果をお出しすることができるので、万が一の際も安心してご利用いただけます。院内処方をしているのも特徴です。少しお待たせしてしまいますが、薬局が近くにないことと、一貫して責任を持ちたいという想いから行っています。待ち時間対策としてウェブ予約も検討しましたが、なじみのない方も多いかなと考えて待合室に順番表示の案内ボードを設けることにしました。また、通院していただきやすいように送迎バスも運行しています。
診療する上で心がけていることは何ですか?

困っている方に対して、まず不安を取り除くことと、患者さんにご自身の病気をきちんと伝えて知ってもらうことを大切にしています。特に心臓は、理解するのが難しい臓器でありながら、いざ病気となると漠然と強い恐怖を感じるという特徴があります。そのため、患者さんの抱えている不安の原因、ご自身の病気、そのための検査や治療についてしっかりと知っていただくことが、診療においてとても重要だと思っています。また、検査の結果、問題がないようであれば、それをお伝えして安心してもらうことも僕の役目だと思っています。当院での取り組みとして、患者さんにお声かけする際に、僕もスタッフも患者さんの不安に寄り添い、和やかに声をかけることから始め、安心していただけるように心がけています。加えて、リスクの高い循環器疾患の患者さんが多いので、新型コロナウイルスの流行が落ち着いてからも感染症対策を徹底しています。
循環器疾患につながる高血圧の診療や情報発信に注力
ところで、休日の過ごし方を教えてください。

学生の頃はバスケ部の主将を務めていて、現在も当時の仲間とバスケを続け、大学の対抗試合にも出場しています。また、週末は近隣小学校のバスケ部のコーチをしています。自分が医師であることは公表していませんが、子どもたちの熱中症やケガへの対処で、最近だんだん気づかれてきているようです(笑)。コーチをしていて気をつけていることの一つが子どもたちへの物事の伝え方で、わかりやすい言葉を使い、成功体験を大切にすることを重視しています。これは患者さんへの伝え方にも通じるところがあるのでとても勉強になりますし、もともと人見知りでしたが、子どもたちとの時間を通してそれが変わっていきましたね。
今後、取り組みたい分野などはありますか。
循環器疾患につながる生活習慣病などの診療にも力を入れていきたいです。例えば高血圧は、循環器疾患や脳疾患だけでなく、認知症のリスクにもなるという報告を目にしました。急を要する症状でなくとも、将来的に影響を与えそうな病気に対し、治療や生活改善に取り組めるように努めていきたいと考えています。また、循環器疾患についての情報発信も必要だと思っています。心筋梗塞などの症状があるのに、ご自分で歩いて来られる方も目立ちます。当院では急性期の患者さんに対して迅速に対応できるようスタッフの体制を整えていますが、時に、来院することがリスクになることもありますので、救急車を呼ぶべき場合などについて啓発していきたいと考えています。加えて、常により良い診療を提供できるよう、僕自身の勉強を欠かさないことも大切にしていきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

ありがたいことに、父の代からの患者さんが今も多くいらしてくださっていて、混んでいてお待たせしてしまったにもかかわらず、患者さんが増えたことを喜んでくださるなど、日々地域の皆さんの温かさに感謝しています。一方で、そうした皆さんも少しずつ高齢になられていますので、安心して日々を過ごしていただけるように、そして気軽に頼っていただけるように、今後も努力を重ねたいと思います。特に循環器の症状については、患者さんだけでなく、他の診療科の先生もわかりにくいと思われることが多いようです。近隣の他の診療科の先生や、基幹病院との地域連携のネットワークも生かしながら、循環器内科の立場から地域医療に貢献したいと思っています。体のことで何か心配なこと、気になることがあれば、気軽に相談していただければと思います。

