全国のドクター9,189人の想いを取材
クリニック・病院 158,628件の情報を掲載(2024年4月27日現在)

  1. TOP
  2. 奈良県
  3. 奈良市
  4. 高の原駅
  5. 医療法人光輪会 やまとクリニック
  6. 田中 宏樹 院長

田中 宏樹 院長の独自取材記事

やまとクリニック

(奈良市/高の原駅)

最終更新日:2024/03/11

田中宏樹院長 やまとクリニック main

関西一円に複数の在宅療養支援診療所を展開し、手厚い訪問診療を提供する医療法人光輪会。その中で10数年にわたって奈良エリアの在宅医療を担っているのが、奈良市内に拠点を置く「やまとクリニック」だ。2024年春、新たな院長に就任したのが田中宏樹先生。スタッフが口をそろえて「優しい先生」と評するように、柔和で落ち着いた語り口に誠実な人柄が表れている。大学病院で手術などに携わっていた経歴を持ちながら、意を決して在宅医療の世界に転身。その理由をひもときながら、田中院長の現在の心境や、同院の訪問診療に対するスタンスにじっくりと迫ってみた。

(取材日2024年2月13日)

患者を待つのではなく、クリニック側から医療を届ける

まずはクリニックの概要を教えてください。

田中宏樹院長 やまとクリニック1

当院は医療法人光輪会の診療所の一つとして、2009年からこの地で医療活動を続けてきました。京阪神地区と比べると奈良には訪問診療に注力するクリニックが少なく、少なからず地域のお役に立ちたいというのが開院の動機だったと聞いています。現在は患者さんのご自宅や入居施設への訪問診療が中心ですが、処置室などの外来診療の体制も整えています。ここは高の原駅にほど近い住宅地にあり、元はセラピストサロンだったということで木や土壁のぬくもりある雰囲気が今も残っています。医師は常勤の私のほか、非常勤医師が4人。あとは看護師と事務スタッフが6人体制でクリニックを支えてくれています。

先生は大学病院で手術などを担当されていたそうですね。

はい。私は奈良県立医科大学の出身で、卒業後は神戸大学医学部附属病院の呼吸器外科に入局し、胸腔鏡を用いた肺がん切除手術などに9年間ほど携わっていました。手術を終えた患者さんはご自宅に帰られたり他院に転院されたりするわけですが、大学病院では術後のフォローに限界があり、そこで状態を悪化させてしまう方も中にはおられます。手術などの治療を提供するだけでなく、治療後を含めた総合的なサポートが必要ではないか。超高齢社会にあっては、ますます重要になるのではないか。そう考えたことが、私が在宅医療に携わるきっかけとなりました。

こちらの法人への入職を選ばれた理由は何ですか?

田中宏樹院長 やまとクリニック2

在宅医療に携わろうと決めて転職会社からいくつか紹介をもらいましたが、外来診療の傍らではなく、訪問診療に特化して取り組んでいる光輪会なら専門的に追求できると感じたのが一つです。あと、大学時代の医局の同期がたまたま先に働いていたので心強く、何よりも面接時にお話させていただいた理事長の人格が決め手となりました。新型コロナウイルス感染症の流行下というのも影響したと思います。検診控えのせいで肺がんの発見が遅れ、そのせいで根治をめざすことが困難となる患者さんがおられました。外来患者さんを待つだけでなく、こちらから出向いて病気を早期に発見し、適切な医療機関につないでいく必要性を強く感じました。これまでの手術を中心とした医療現場とはかなり異なる領域ですが、それは専門分野での経験があったからこその選択だったと思います。

一人ひとりに合った手厚いチーム体制で患者をサポート

こちらの診療の特徴を教えてください。

田中宏樹院長 やまとクリニック3

当院は、24時間・365日体制のコールセンターを設置し、緊急性があると判断されれば医師や看護師が即座に駆けつけることが可能です。また、ケアマネジャーや訪問看護ステーション、他の医療機関との連携体制はもちろん、法人に在籍する10人以上の医師が互いに協力しながら診療をバックアップしています。外科系の医師も多く、胃ろうの交換や床ずれなどを適切に処置できることも強みですね。フットワークは軽く、患者さんの訴えや施設のご要望にも臨機応変に対応しています。同じ病気や症状であっても、提供すべき医療は患者さん一人ひとり微妙に異なりますから、きめ細かく見極めながら対処していくことが重要ですね。

病院での仕事とのギャップを感じたことは?

こちらに就任して約1年、身を持って訪問診療を体験させていただいたわけですが、やはり当初は戸惑いもありました。大学病院では検査から診断、治療まで院内で不自由なく行えましたが、在宅医療の現場では画像検査すらできません。そのため、患者さんの病態をしっかりと見抜ける技術を磨いていかねばならないと痛感させられました。在宅では医師の診断や所見は非常に重要で、症状や状況を注意深く観察しながら判断していく必要があります。患者さんの置かれている環境などを含め、さまざまな情報を頼りにしながら患者さんと向き合っていく、その大切さを改めて考えさせられた1年間となりました。

訪問診療で大切に感じるポイントは何ですか?

田中宏樹院長 やまとクリニック4

訪問診療の対象患者さんの中には重い障害や認知症などがあり、介護者であるご家族に大きな負担がかかっているケースがあります。病院に相談したくても、なんとなくハードルの高さを感じ、誰にも話せずに悩みを抱え込んでおられるわけですね。訪問診療の目的は単純に医療を提供するだけでなく、ご家族が気軽に相談できる環境を用意してサポートしていくことも大切なテーマの一つです。今思えば大学病院では患者さんもご家族も遠慮して、言いたいことを口にされない方が多かったように感じます。ご自宅だとつい本心が出るようで、会話の中で本音が聞けるのは非常に新鮮ですし、それをなるべく拾ってあげることがさまざまな改善につながるのではないかと私は考えています。

在宅医療のさらなる充実が居宅での生活を実現

先生が医師になったきっかけは?

田中宏樹院長 やまとクリニック5

私の家は医師家系ではなく、両親も医療とは関係ない職に就いています。そんな中、私は中学と高校で硬式野球をやっていて、よくいろんなケガを体験したものです。それを治療できる医師になりたいと思ったのが医師をめざしたきっかけです。今は走るのが趣味で、フルマラソンでの2時間40分切りをめざして大きなマラソン大会にも出場しています。マラソンの魅力は、やはりタイムへのチャレンジと達成感ですね。おかげで体力には少し自信があり、訪問診療が立て込んでいても諦めずに続けることができます。ただし、逆に「諦めが肝心」という場面にも時には直面します。医療は医療者の自己満足で提供すべきものではありません。今、何が必要か。それをよく考えて患者さんの健やかな生活を見守っていきたいですね。

今後へ向けた展望があればお聞かせください。

現在の訪問先は介護老人福祉施設がメインですが、これからは在宅患者さんをもっと増やしていきたいと考えています。今、病院の医療は専門化がどんどん進んでいます。今後は病気を治すことに特化し、もはや生活の場ではなくなると考えられます。そういう意味でも、在宅での生活に適切な医療をお届けする在宅医療の役割がさらに重要になっていくでしょう。また、最期の瞬間はやはり慣れ親しんだ場所で迎えたいという方が大勢おられます。病院での治療が必要なために入院生活を続けているような方も、訪問診療や介護を受けながらご自宅で過ごせる可能性が見つかるかもしれません。そのためにも、在宅での医療やケアをどこまで充実できるかが私たちに課せられた使命と考えています。

最後に、訪問診療を検討している方へメッセージをお願いします。

田中宏樹院長 やまとクリニック6

積極的な治療を提供するというよりは、患者さんの訴えに耳を傾け、寄り添いながらサポートしていくというのが私たちの基本方針。出来上がったシステムの中に入っていただくのではなく、こちらから出向いた上で患者さんやご家族、地域の方々と話し合いながら最善の診療体制やケア体制をつくり、一つのチームとなって患者さんをお支えしていきたいと考えています。私も院長という立場には責任の重さを感じますが、そのぶん伸びしろもたくさんありますから、一つ一つ勉強を重ねながら皆さんとともに成長していければ幸いです。在宅医療を受けるか迷っておられるなら、私たちにぜひ気軽にご相談ください。

Access