市川 眞喜子 院長の独自取材記事
皮フ科 いちかわクリニック
(小平市/鷹の台駅)
最終更新日:2024/05/21

五日市街道沿い、一軒家のようなクリニックが並ぶクリニックモールの一角にある「皮フ科 いちかわクリニック」。院長の市川眞喜子先生は、大学病院に長年勤務し、皮膚科部長を10年間務めた後、総合病院の院長や部長職を歴任した。日本専門医機構認定皮膚科専門医の資格を有するベテランのドクターでありながら、その人柄は親しみやすい。てきぱきと説明をしてくれる頼もしい診療スタイルに、一人暮らしの高齢者や、周囲に頼る人が少ない若い保護者たちが相談相手を求めて訪れることも多いという。「何か不安なことがあれば気軽に来てほしい」と語る院長の思いをはじめ、同院を受診する患者の傾向や工夫の多い院内設備など、じっくり話を聞いた。
(取材日2024年4月16日)
どんな症状も気軽に頼れる地域のかかりつけ皮膚科
開業から7年がたち、患者さんの傾向など変化はありますか?

0歳から100歳を超える方まで幅広い年齢層の方が来てくださるのは変わらずです。子育て中の親御さんが、赤ちゃんの皮膚症状を心配されていらっしゃることもあります。今の若い親御さんは核家族で周りに相談できる人が少ないと思いますので、不安なことがあれば気軽に来ていただきたいです。同じようにご年配の方も家族と住まわれていない方が多く、ケガや病気に気づかず悪化してからいらっしゃるケースもあります。薬をお一人で塗れない方もいますので、そんな時は訪問介護の方にこちらから連絡をして対応を依頼しています。開業時に保育園に通っていた患者さんが小学生に、小学生は中学生に、中高生は大学生や社会人になりました。進学や就職の報告をしてもらえるのは、とてもうれしいです。ご家族みんなで通ってくださる患者さんも多いですし、もっと親しんでもらえるように院内で「クリニック祭り」のようなものも開催してみたいですね。
どのようなご相談でいらっしゃる方が多いですか?
顔の肌トラブルでいらっしゃる方が増えています。古い日焼け止めを使って顔が赤くなってしまうケースもありますから、日焼け止めは劣化するものなので、毎年買い換えて使ってくださいね。ご高齢の方は爪切りの相談なども多いです。処置室には脚の部分が電動で上がる椅子があるので、座ることさえできれば患者さん自身で足を上げる必要がなく爪を切れます。また、最近はやけどのご相談が多いです。ご自身で治そうとしてやけどに市販の湿潤型のばんそうこうなどを貼る方もいるのですが、水ぶくれができていると余計に悪化することもあります。やけど以外でも、ご自身で治療しようとして、かえって悪化させてしまう方が増えているように感じます。水虫などもそうですね。水虫はカビが原因の病気ですので、「虫」という軽い響きに惑わされずに皮膚科を受診していただきたいです。
デリケートゾーンの皮膚疾患で相談に来る女性もいると聞きました。

私が女性医師なので、人に見られると恥ずかしい部分の疾患も相談しやすいのかもしれません。性器周りの皮膚疾患は、悪くなっているのはわかっていても、どうしても相談できない方もいらっしゃいます。ブラジャーと肌がこすれて痛いという成長期のお子さんなど、胸の周りのお悩みで受診される方もいますね。服を脱ぐ必要がある時は、ベッドの回りにかかるカーテンを閉めて、その中で診察します。カーテンはあえて両開きになるように取りつけているので、最小限の隙間を開けるだけで私や看護師が出入りできます。患者さんが必要以上に人に肌をさらさずに済むように配慮しました。治療は決して楽しいものではないですから、どうすれば患者さんの心の負担を減らして前向きに治療に取り組んでもらえるだろうといつも考えています。そのためにこれからも私たちの工夫でできることはなるべく実施していきたいです。
治療や通院における負担を軽くするこまやかな配慮
患者さんの負担を減らすために、他にはどのような工夫をされていますか?

女性はもちろん、お子さんやご年配の方にも負担なく通っていただけたらと思っています。先ほどもお伝えした処置室の電動式の椅子は、自動で脚を医師の手元の高さに上げてくれるので、患者さんが頑張って脚を上げる必要がありません。診察室のベッドは可動式ではありませんが、お母さんの診察中にお子さんが横で座って待っていられるように、お子さんの足が床に着く高さのものに変更しました。待合室の椅子も座面が低いものを選んでいて、立ったり座ったりしやすいとご年配の方にも好評ですね。お子さんには治療を頑張った時にあげるシールや、電車などのイラストが描かれたばんそうこうも用意しています。アロマセラピーも、診療の気持ちの負担を和らげたいと思って始めました。
超音波診断装置も導入されたとお聞きしました。
皮膚が腫れていたり、皮膚の中にしこりがあったりする場合の診断に利用しています。器具にゼリーを塗って皮膚に当てるだけで検査ができて、画像を患者さんにも見てもらうこともできるので、低侵襲かつ、症状をわかりやすく伝えらえると思い導入しました。その画像をもとに適切な他の診療科への紹介も行っています。血管がふくれて皮膚がコブ状に盛り上がる、下肢静脈瘤の検査にも使用しています。
先生は大学病院などに長く勤められていましたが、開業後にその経験が生きたと感じることはありますか?

当院では治療ができないような、大きな病院に紹介しなければならない疾患にぶつかったときでも、ただ窓口としてつなぐだけでなく、患者さんに適切に説明できることですね。例えば、それがどんな病気であるか、紹介した病院で受けることになるかもしれない検査や治療について説明します。こうした道筋を示せることは、勤務医時代にたくさんの症例を診たおかげだと思っています。また、勤めていた病院は大きな病院で幅広い診療科と関わりがあったので、適切な診療科に振り分けることも得意なんです。病院に紹介となると不安に思われる患者さんもいるので、少しでも不安を拭うことができればという思いで診察にあたっています。
患者の要望に歩み寄り、治療を継続できるように尽力
診療の際に大切にしていることを教えてください。

患者さんのお話を丁寧に聞くことを大切にしています。それと同時に丁寧な説明も心がけています。皮膚科の病気は治療期間が長引くものが多くあります。継続して治療を受けられるように、顔や体のイラストに薬を塗る位置を描き込んだ資料やパンフレットを渡す取り組みも行っています。初診の患者さんで、「この薬がほしいです」といらっしゃる方もいるのですが、当院では今の状態をきちんと診断してから薬の処方を行っていますので、そういった面でも患者さんと意識をすり合わせながら診療を行っています。患者さんが考える到達点と、こちらが良いと思う方針が違う場合もありますので、お話を聞いて患者さんの考えを知った上で、丁寧な説明をして、治療への理解を得たいと思っています。
院内の写真や魚の水槽がすてきですが、市川先生のご趣味なのでしょうか?
写真は開業した頃からの趣味で、撮った写真が保険組合発行の広報誌の表紙を飾ったこともあるんですよ。院内の花の写真は、患者さんから「あれは何という花ですか?」と聞かれることもあって、会話の糸口になっています。患者さんに興味を持ってもらえるのは、とてもうれしいですね。魚の水槽は趣味ではないのですが、開業する際には置きたいとずっと思っていました。テレビを置くことも勧められたのですが、患者さんたちがクリニックに来てまでテレビを見なくてもいいのかなと思いまして、水槽を採用しました。魚に名前をつけて楽しんでくれるお子さんもいるので、水槽を選んで良かったですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

皮膚科の疾患は我慢すれば何とかやり過ごせてしまうものもあるので、悪化させてしまう患者さんもいます。まずは医師に診断をつけてもらい、適切な治療をすることが大切です。また、ご家族など自分以外の方に処方された薬を使ってしまうケースも見受けられます。皮膚科のお薬は病気の種類と程度などによってステロイドの強さを分けている場合がありますから、その方の症状に合ったものでなければなりません。他の人に処方された薬を使用するのではなく、気になる症状があれば一度皮膚科を受診していただきたいです。不安なことや疑問点は説明しますし、「病気かどうかわからないけど気になる」といった些細なことでも構いませんので、どなたでも気軽に相談に来てくださいね。