大井 美恵子 院長の独自取材記事
女医によるファミリークリニック
(広島市南区/広島駅)
最終更新日:2024/04/17
広島駅南口からすぐ、ビッグフロントひろしま4階にある「女医によるファミリークリニック」。その名のとおり、院長を務めるのは女性医師である大井(旧姓・竹中)美恵子先生。自身の出産をきっかけに抱いた「家族みんなを診察できるクリニックをつくりたい」という思いを実現するため、2016年に開業した。大井院長は小児科専門の医師。風邪や中耳炎といった一般小児科の症状をはじめ、登校拒否や心の問題、受験に関する相談まで幅広く対応している。さらに、内科、皮膚科、アレルギー科の研鑽を積み、発熱や頭痛といった内科全般の症状、ニキビや湿疹などの皮膚トラブルも診療。明るい笑顔が魅力の大井院長に、クリニックの特徴や診療にかける思いなど、さまざまな話を聞いた。
(取材日2021年8月3日)
来院するだけでワクワクできるようなクリニックに
まずは、開業までの経緯を教えていただけますか?
開業することを決めたのは、私自身の出産がきっかけでした。子どもを病院に連れていくことの大変さを身にしみて感じましたね。風邪をひいた、皮膚がかぶれた、予防接種など、症状や理由によってあちこちの病院に連れて行かなければいけない、親が風邪をひいても小児科では一緒に診てもらうことができない。こういった経験から、お子さまとお母さまを一緒に診察できる場所が必要だと痛感したのです。また、開業前に勤務していた病院では産休・育休を取ることが難しく、出産を機に退職する女性医師も多くいました。私は出産して数週間後に職場復帰したのですが、産後の疲れた体でのフルタイム勤務や、新しい情報をアップデートする余裕もない環境が本当につらくて。こんな環境では若い女性医師が減ってしまうと思い、子育て中の女性医師や看護師が働きやすいクリニックをつくろうと開業を決めたのです。
患者さんのことだけではなく、働くスタッフのことも考えてこの地を選ばれたと伺いました。
はい。初めは祖父が開業していた小児科医院の後を継ごうと思っていたのですが、患者さまはもちろん、スタッフも来るだけでワクワクできるような活気のある場所で開業したいという思いが強くて。スタッフが元気でなければ、患者さまを元気にすることはできないですからね。当クリニックがあるビッグフロントひろしまは開業向きではないと地主さんからも言われていたのですが、開業に対する私の思いを伝えたところ「ぜひやってほしい」とおっしゃってくださり、本当に良いご縁をいただけたと感謝しております。
どのような患者さんが来られますか?
広島だけではなく、各地から来院されます。遠いところだと、チリやアルゼンチンからいらっしゃる方もいます。広島駅はさまざまな国の人が集まる場所なので、新型コロナウイルス感染症が流行する前は旅行客もたくさんいらっしゃいました。旅行中に体調が悪くなって受診する外国の方も珍しくないんですよ。赤ちゃんから100歳を超える方まで幅広い年代の患者さまがいらっしゃいます。当クリニックでは美容に関する相談にも対応していますので、お子さまの診察のついでに疲労回復やお肌の悩みについてご相談されるお母さま方も多いですね。
何でも診られるホームドクターをめざして
先生のご専門について教えてください。
専門は小児科で、風邪や中耳炎などの診療から、登校拒否や発達・発育に関する相談、子どもの心相談なども行っています。また、お子さまだけではなく、ご家族も一緒に診察できるクリニック、何でも診られるホームドクターをめざすため、幅広い分野で研鑽を積んできました。また、小児科、内科、皮膚科、アレルギー科と標榜しておりますが、当クリニックでできることはすべて診察するようにしています。せっかく医師臨床研修制度で多くの科の研修を受けたのだから、その経験を生かさないのはもったいないですしね。
子育て中のお母さんにとって、家族で受診できるホームドクターの存在は大きいですよね。
そうですね。市民病院や総合病院などの大きな病院では診療対象はすべて細分化されているため、どうしても1つの科ですべてを診ることが難しくて。この症状は○○科、この症状は○○科を受診してくださいと分けられてしまうんですよね。だけど、それは患者さまにとってものすごく負担がかかること。海外ではホームドクターの存在はすごく自然なことですが、日本は専門しか診察してはいけないという風潮がまだまだ強いんですよね。私も母親になって改めてホームドクターの大切さを実感しました。
こちらのクリニックで行っているプライマリケアについて教えていただけますか?
プライマリケアとは、ただ悪いところを治療するのではなく、患者さまの悩みや不安などもしっかり聞いて相談に乗りながら診察をしていくことだと捉えています。例えばニキビで受診された場合、ニキビの薬を処方して終わりではなく、生活習慣やストレス、体調など患者さまのバックグラウンドを見ながら治療を進めていきます。症状が長引く場合は内臓に原因がないかも調べ、根本から改善できるように努めます。もちろん、検査を望まない方には無理に勧めることはありませんが、患者さまの不安がなくなるまでお付き合いすることを心がけています。自身のことでもお子さまのことでも、気になる症状や疑問に思うこと、悩みや不安など些細なことでも構いませんので、どうか1人で抱え込まないでお気軽にご相談してくださいね。
じっくり話を聞いて症状を診るクリニックが必要
先生が医師をめざしたきっかけは何でしょうか?
私はもともとアナウンサー志望だったのですが、高校3年生の時に祖父が亡くなったことをきっかけに医師になることを決めました。これまでに病気になった際に幾度となく私を助けてくれた小児科医の祖父。でも、私は祖父が亡くなった時に何もできなかったんです。それが本当に悔しくて、家族を助ける職に就きたいと思ったことがきっかけでした。当クリニックの代表・薬剤師を務める私の姉は、祖父が亡くなったことをきっかけに医学部から薬学部に入り直したんですよ。そして、2人で当クリニックを開業し、私は医師として診療全般を、姉は薬剤師として薬の説明や予防医学を担当し、二人三脚で患者さまに対応しています。患者さまと目を合わせてしっかりと話を聞く診療スタンスを大切にできるのも、姉がいろいろサポートしてくれるおかげです。頼もしい存在ですね。
ところで、プライベートはどのようにお過ごしですか?
子どもが寝た後に、海外ドラマや洋画を観て楽しんでいます。思いっきり笑える内容のものが多いですね。医療系のドラマもよく観るんですが、実際の医療現場で起こるようなシーンがあるとすごく見入ってしまいます(笑)。あと、読書も好きですね。自己啓発本をよく読んでいます。プレゼン力やトーク力に関する自己啓発本は診療に役立つので、これまでにもたくさん読んできました。プライベートな時間とはいえども、仕事につながるようなこともしていますね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
すべての方に「生きてるだけで100点満点」ということをお伝えしたいです。日本人は全体的に自己肯定力が低く、そのせいで猫背になったり、自分に自信を持てなかったりする人がたくさんいらっしゃいます。多くの人がみんなと同じでないと駄目、規定を外れたら駄目と思いがちですが、決してそんなことはありません。オリジナルでいいんです。生きているだけで価値があるんです。自分を認めてあげてください。今知っている知識だけがすべてではない、新たな考え方や価値観もあるということに気づいてもらえたらうれしいですね。子育てについて悩んでいらっしゃるお母さま、産後うつで苦しんでいらっしゃるお母さま、疲れが取れなくてつらかったり、なんとなく不調を感じていらっしゃる方、些細なことでも構いませんので、お気軽に相談してくださいね。