石原 正隆 院長の独自取材記事
みのん歯科医院
(渋谷区/笹塚駅)
最終更新日:2025/11/14
笹塚駅から徒歩5分。商店街を歩いていると右手に「みのん歯科医院」が現れる。2024年にリニューアルした内外装は洗練された雰囲気で、インテリアに溶け込んだ照明が印象的だ。義歯やインプラント治療などの補綴治療を得意とする石原正隆先生が院長を務め、歯列矯正を専門とする非常勤歯科医師が在籍。早い段階からマイクロスコープを導入し、歯科用CTを備えるなど、難しい根管治療も先進の機器を駆使しながら行う。正直に話すことを信条とし、治療法のメリットやデメリットも伝え、患者が納得した上で治療を進めていく。予防歯科にも力を入れ、「治療後の管理が大事なので、正しい歯磨きと定期的にきれいにすることが大切」と説く。そんな石原院長に、治療方針や患者への向き合い方、予防の大切さなどについて話を聞いた。
(取材日2025年10月6日)
複数の歯科医師が連携し、専門性を追求
とてもきれいなクリニックですね。

当院は笹塚で生まれ育った私が、2003年に開院した歯科医院です。「みのん」とは、かつて両親が営んでいた洋菓子店の屋号で、愛着があったため拝借することにしました。そして、隣に新しいビルが建ったため、2024年に移転リニューアルしています。内装や設計の主な部分はデザイナー任せですが、細かい点でいうと、ユニットごとに換気扇と空気清浄機をつけました。ユニットの数は以前と同じ4台で、個室が1部屋だったのを2部屋に増やしています。全体的に少し広くなりましたので、患者さんも落ち着いた気持ちで治療を受けていただけるのではないかと思います。設備としては、20年近く前からマイクロスコープを取り入れ、現在は歯科用CT、歯科用レーザーも備え、口腔内スキャナーの導入を検討しているところです。
どのような患者さんが多いですか?
開院当初と比べると、通っていただいている患者さんの年齢層が上がるのに従い、義歯を希望される方が増えました。昔より高齢者が増えたとはいえ、笹塚はワンルームマンションも多いので、若い方々も来院されます。他の主訴では虫歯や歯周病も多く、症状がごく初期の段階で来られるなど、口腔内の健康に対する意識の高い方も一定数いらっしゃいますね。当院は歯科、小児歯科、矯正歯科を標榜し、私は補綴治療に力を入れてきました。歯列矯正に関しては、専門にしている先生が非常勤で在籍し、強みを生かして診療にあたっています。
補綴治療ではインプラント治療もしているのですね。

鶴見大学と同大学大学院では補綴について学び、大学病院の臨床ではインプラント治療の研鑽も重ねました。インプラント治療では、無理な計画を立てないようにしています。例えば、右側下にインプラントを入れる際に、将来的に左側も駄目になる可能性がある場合、経済的な面から左側もインプラントにできるかどうかを確認します。そうでないと、左側の歯が駄目になったときに、右側で噛むことができるという理由で放置する人がいるからです。患者さんの将来を見据え、長期的な見通しが立つように治療しています。ですから、認知症になった時のリスクを考えると、高齢の患者さんには着脱可能な治療を選択します。インプラント治療を積極的に勧めることはありません。多くの人は高齢になるに従って、歯磨きをしなくなっていきますので、取り外しのできるものが良いと思います。
治療計画は患者自身がゴールを設定することから始まる
診療方針について教えてください。

基本に忠実な治療を行い、最終的に全体的なバランスを整えて安定した状態になることをめざします。つまり最初にゴールを決めて治療計画を立てるわけですが、そのゴールは歯科医師任せにするのではなく、患者さん自身が最終的にどのようになりたいのかを考えていただくようにお願いしています。ただし、治療期間は患者さんが思っている以上に長くなる場合が多く、中には「全体を診なくて良いので、ここだけを治してほしい」と言われることもあります。その際は、デメリットやリスクなども含めて丁寧に説明し、患者さんに必ず納得していただくことを重視しています。ですので、抜歯せざるを得ない状態の歯を、患者さんが抜くのはどうしても嫌だと言われた場合、無理強いすることはありません。きちんとした治療ができないことは伝えますし、正確に話すことを心がけています。
どのようになりたいかをイメージできない患者さんもいるのでは?
聞かれても困るという患者さんはいます。そのような時は、例えば一定数以上の歯がなくなっている場合、「義歯は受け入れられますか?」といった具合に質問を投げかけます。取り外しのできる可撤式のものは嫌だと言われれば、インプラントを入れるしかない場合もあれば、何とかブリッジでつなげられそうな場合もあります。もちろん、ブリッジができたとしても、支える歯の状態によっては、長い間持たない懸念が出てきます。いろいろな質問や提案をしながら、メリットやデメリットを伝えて治療内容を選んでいただきます。
患者さんとのコミュニケーションで大切にしていることは何ですか?

患者さんに理解していただけるようにコミュニケーションを図るのが基本で、そのためには本当のことを話すようにしています。話し方によってはきつい印象を持たれるかもしれませんが、治療法についても必要以上に良く聞こえるような話はしませんし、誤解を招く発言もしないように注意しています。例えば、患者さんから「インプラントは万能ですか?」と聞かれれば、「人工物ですから万能ではありませんし、一生ものでもありません」と答えます。結果的に、補綴物が当初の想定よりも長い間、口の中に残ることはありますが、最初から寿命を保証できるものではありませんので、より詳しく丁寧に説明することが大切です。
歯周病菌も虫歯菌も完全除去できないから管理が大切
予防について先生の考えを聞かせてください。

予防というより管理が大事だと考えています。なぜなら感染症である歯周病は多くの人が20歳頃までに感染しているので、すでに予防することはできないからです。そして、年を取ってから発症するわけですが、治療をしても病原菌を完全に除去することはできません。歯周病は感染する前の状態に戻すことができない病気であり、さらに年を重ねるに従って免疫力も基礎代謝も低下し、体は衰えていきます。つまり、坂を下っているようなイメージで、この下り坂を少しでも緩やかにするのが管理です。虫歯の治療にしても、歯を元の状態に戻しているわけではなく、人工物に置き換えているだけです。この人工物の寿命も有限なので、どのように付き合っていくかという管理の意識を持つことが求められます。そのためには、まずはメインテナンスを受けてもらうことが必要です。
メインテナンスを受けてもらうための取り組みはしていますか?
メインテナンスの必要性を説くしかありません。歯周病が治らない病気であることを知らない人はたくさんいますし、虫歯の病原菌も口腔内からなくすことはできないのですが、「治療したのに、また虫歯になるのですか?」と聞かれる患者さんもいます。ですので1回治療すれば、それで終わりではないことを理解していただけるように努めています。基本的に何もしないと悪い方向にしか進みませんので、それを変えるには正しい歯磨きやフロスなどによるホームケアと歯科医院で定期的に歯石を取ってきれいにし、レーザー治療や薬剤療法などのメインテナンスを受けることが重要です。丁寧なホームケアを続けることは次第におっくうに感じてきますから、そのモチベーションを回復させるのがメインテナンスというわけです。コツコツと続けることで、歯周病の症状や虫歯を生じにくくすることにつながります。
最後に歯の悩みがある人へのメッセージを聞かせてください。

歯周病の病原菌になる細菌はいくつもの種類があり、中には病原性の強い細菌もあります。こうした細菌が口腔内に多数存在すると、人によってはさまざまな治療を行っても歯周病の進行を抑えるのが難しい場合もあるのです。ですから、こうしたことを知った上で、自身の口腔内についてもっと知ってもらえるようになってほしいと思います。もちろん、歯周病菌に感染している人は、何もしなければ加齢とともに発症して、その症状は悪くなる一方です。それを防ぐためにも正しいブラッシングや定期検診は重要で、気づいた時が始め時です。そして、続けることで口腔内の状態の改善は望めますので、諦めないでほしいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは矯正/77万~、インプラント治療/40万円~、インレー/5万2800円~、セラミッククラウン/6万3800円~、ホワイトニング/2万5000~

