板倉 剛 院長の独自取材記事
神保町整形外科
(千代田区/神保町駅)
最終更新日:2022/07/07

地下鉄3路線が乗り入れる神保町駅から徒歩2分。古書店街にほど近いエリアに構える「神保町整形外科」は、2フロアからなる充実したリハビリテーション施設を備え、整形外科のさまざまな不調に対応するクリニックだ。板倉剛院長をはじめとするドクター陣と総勢19人のセラピストがそれぞれ、上肢や脊椎、股関節、膝、脚など部位ごとに専門や得意分野を持ち、治療やリハビリの豊富な選択肢を提示。患者と対話を重ねる中で、一人ひとりの症状やニーズを見極め、前向きに治療を完結できるようサポートしている。2017年の開業から5年、徐々に存在感を高め、近年は術後のリハビリなどで病院からの紹介患者の割合も増えているという。これまでの歩みやクリニックとしての理念、患者への想いなどについて、板倉院長に聞いた。
(取材日2022年2月16日)
特定部位に偏らず、オールマイティーな整形外科診療を
クリニックの特徴を教えてください。

当院は私と6人の非常勤医師による2診体制を取っており、手指から首、肩、脊椎、股関節、膝、脚など、特定部位に偏ることなくオールマイティーな整形外科診療を提供しています。2019年からは院内にオペ室も新設して、骨折など外傷の日帰り手術にも対応できるようになりました。リハビリを担当する理学療法士、作業療法士らセラピストは総勢19人。それぞれに部位ごとの得意分野を持つ中で、手のリハビリにも力を入れていて、手の外科専従スタッフも常勤で活躍しています。
3フロアで構成され、広々とした院内空間ですね。
開業当時は1フロアで、診療室の隣にリハビリ室を設けていたのですが、ビル内の上階に空きが出たタイミングで段階的に拡張し、現在は診療室と受付・待合室からなる診療フロアと、2つのリハビリ専用フロアを設けています。体の痛みや動きを少しでも良い方向へと導くようにし、患者さんのQOL(生活の質)を向上させることをめざす当院の診療において、物理療法、運動療法といった理学療法、すなわちリハビリテーションはたいへん大きな意味を持ちます。リハビリ設備や病院の外来リハビリテーションも制限がある昨今、院内設備を最大限活用し、整形外科の専門的なクリニックとして地域の中で一定の役割を果たしていきたいと考えています。より多くの患者さんのニーズに応えるべく、今後も理学療法士など専門スタッフの増員を行う予定です。
開業から5年の節目を迎えますが、手応えはいかがですか?

地域のかかりつけクリニックとしてスタートした当院ですが、年々患者数が増え、働き盛りの世代からご高齢の方まで、広く都心部一円から来られるようになりました。診療にあたっては、私たち医療者が一方的に病気を治すというのではなく、患者さんが主体的に治療を選択し、モチベーションを持って治療に取り組んでもらうというのが当院のスタンス。ですから私たち医療者は患者さんと対面で向き合うというよりは、すぐ横に並んで治療の選択肢を示す、いわば「ガイド役」に徹する姿勢を大切にしています。互いに楽しくコミュニケーションを重ねる中で患者さんの気持ちを盛り上げるような声がけを交え、幸せな気持ちで治療を完結していただきたい。そうした意識が私だけでなくスタッフにも定着し、クリニックとしてめざす理念がようやく形になってきたのではないかと感じているところです。
症状を改善し、1段上のステージに上がるために
整形外科の医師を志した経緯と、診療を通じてどういったところにやりがいを感じているか教えてください。

私はもともと科学者を志して一時は理工学部に進学したのですが、病気の改善という明確な目標を持って取り組める医師の仕事に惹かれ、改めて医学部に編入しました。父が消化器内科を開業していたので、医師という職業自体は身近なものだと感じていましたが、内科で扱う病気というのは治療によって症状の改善をめざせるものがある一方、生活習慣病のように数値を管理しながら長く向き合っていくものも少なくありません。その点、整形外科は適切な治療を行うことで改善へと導ける可能性が比較的高く、症状の改善が見込めるまでの期間が短い傾向にある疾患が多いのです。やはり、治療して帰っていく患者さんの姿を見ることはうれしいですし、結果が見えやすいというところにやりがいを感じますね。
日々の診療で心がけていることを教えてください。
患者さんに過去の治療について伺うと、長い間通院して同じ薬を処方されていたのに、症状がなかなか改善しないなど、あまり満足のいく治療を受けられなかった経験を打ち明けられる患者さんが予想以上に多くいらっしゃいます。治療で症状が快方に向かう方がいる一方、治療を続けても残念ながら治らないケースがあることも。その双方を踏まえて当院では、日常生活の送りやすさという意味でも「もう一段上のステージ」に上がれるようなサポートをしていきたいと考えています。そのために、多少忙しくても患者さんとのコミュニケーションを深める時間は欠かせません。当院では、受付、看護師、リハビリスタッフを含め全員でコミュニケーションをとっており、患者さんからは「話せて本当に楽しかったよ」と伝えていただくことも多いんですよ。
リハビリはどのように展開されているのでしょうか?

電気や温熱など機器による物理刺激で鎮痛や麻痺の回復を図る物理療法と、理学療法士の指導のもとで体を動かしながら、症状の改善や機能回復を図る運動療法を適宜組み合わせて、患者さん一人ひとりの痛みや症状に応じたプログラムに取り組んでいます。また、術後のリハビリテーションでは、手術直後の傷のチェックからさせていただき、抜糸までの消毒といった術後ケアとリハビリをセットでご提案しています。手術後の経過はこうした初期対応のありようが予後に大きく影響することが多いので、どうぞお気軽にご相談ください。
患者の多様な悩みに整形外科的アプローチで向き合う
リモートワークの増加など、ライフスタイルの変化が患者さんの相談内容にも影響しているそうですね。

はい。感染症の拡大でリモートワークが増え始めたタイミングと同時に、当院でも首や腰の痛みを訴える神経痛の患者さんが急増しました。これは自宅の自室など限られた空間の中で、長時間同じ姿勢を取り続けることが原因で引き起こされる症状。仕事中に意識的に体勢を変えて痛みを回避したり、長時間の仕事でもつらくなりにくい代替の姿勢を獲得することに加え、手軽に取り組める筋トレやストレッチの方法をしっかり指導することで、改善に向かうようにします。
尿漏れなどの相談にも、整形外科的アプローチで対応していると伺いました。
当院は女性の患者さんの割合が高く、普段の何げない会話の中で、尿漏れのご相談を受ける機会が多くあります。加齢や出産を契機に起こる尿漏れは、主に骨盤底筋のゆるみによって引き起こされ、一般的な対処法として骨盤底筋体操を行うのですが、医師からの指示だけでは骨盤底筋の位置や力の入れ方がよくわからないという声が少なくありません。その結果、体操が効率的に行われずに不快な症状が続き、途中でドロップアウトしてしまうことも多いようです。そこで当院では、得意とする理学療法のノウハウを生かし、理学療法士のアドバイスのもとで骨盤底筋の位置と筋肉が収縮した状態を患者さんに体感してもらうことで、より効率的な骨盤底筋体操を実践できるようサポートしています。尿漏れイコール泌尿器科と考えがちですが、患者さんのお悩みに対して整形外科的なアプローチで役立てることがあれば、積極的に取り組んでいくというのが当院のスタイルです。
最後に、今後の展望と読者に向けたメッセージをお願いします。

ここに来てくださっている患者さんの診療環境を、もっともっと充実させていくことが1つ。さらに、患者さんの話により深く耳を傾け、せめて当院に来ている間は幸せな気持ちで治療を完結でき、通院を前向きで楽しい時間と感じていただけるクリニックでありたいと思っています。当院のスタッフはおのおのが専門性を磨いているだけでなく、患者さんへの対応力が高くなってきていて本当に心強い限りです。日々の生活の送りやすさと患者さんの幸せ度をトータルで高めていくような整形外科クリニックをめざし、これからも引き続き力を尽くしていきたいと思います。