細貝 睦 院長の独自取材記事
秋津ほそがい整形外科
(東村山市/秋津駅)
最終更新日:2025/07/28

秋津駅から徒歩2分、クリニックモールの3階にある「秋津ほそがい整形外科」。院長を務めるのは、大規模病院で多くの手術に携わってきた細貝睦(むつみ)先生。豊富な経験を生かし、同院では小児のスポーツ外傷から高齢者の関節痛、骨粗しょう症まで、さまざまなニーズに応えている。薬や注射に頼るだけでなく、運動器リハビリテーションを積極的に取り入れ、患者自身の機能回復とQOL(生活の質)向上をめざす。また、地域住民向けの講習会を定期的に開催し、健康に関する情報発信や啓発活動を行っている。「しっかり治療することで患者の生活をより良くしたい」と願う細貝院長に、医院の特徴や今後の展望などを聞いた。
(取材日2025年4月15日)
軽い違和感から重い痛みまで、真摯に向き合う
診療時はどのようなことを心がけていますか?

患者さんの話にしっかりと耳を傾けるようにしています。例えば、高齢の方だと「話し相手がいない」「自分の痛みを誰もわかってくれない」と訴える患者さんが少なくありません。そうしたストレスが、もともとあった痛みを助長してしまうことも考えられるんです。ほかには、症状や治療法の説明をするときは、専門用語をなるべく使わずわかりやすい言葉で説明するようにしています。
患者さんの年齢層について教えてください。
年齢層はとても幅広く、4、5歳くらいからご高齢の方では90代の方までいらっしゃいます。全体として見ると、やはりご高齢の方が多い傾向です。ただし、最近は新しい住宅やマンションが増え、若いご家族連れが引っ越してくるケースも増えています。昔からお住まいのご高齢の方々と、新しく移住してきた若い世代の方々という、2つの層が混在している地域だと感じています。整形外科ですので、年齢にかかわらず訴えとして多いのは、膝や腰、肩などの痛みです。小さなお子さんや小中学生の場合は、サッカーや野球といったスポーツ中のけがや、遊びの最中に転んでけがをした、といったケースが多く見られます。
ご高齢の方は関節の痛みも多いと思いますがどのような治療を?

まずはデジタルエックス線撮影装置で骨や関節の状態を確認することから始めます。この装置は感度がとても良く、骨の状態を詳しくチェックできるんです。それから、原因に合わせた治療を行います。例えば、高齢者に多い変形性膝関節痛や肩関節周囲炎などの場合、関節の痛みや炎症に対し内服薬や湿布を処方、さらに温熱療法を行ったり、軟骨がすり減ってしまうのを抑制するためのヒアルロン酸注射を打ったりします。また、骨粗しょう症による痛みや違和感に悩む患者さんには、カルシウム製剤の注射を行うこともあります。このほか、ストレスや疲れで痛みが出ている患者さんはウォーターベッドをお使いいただくことが可能です。
運動器リハビリで機能回復を図りQOL向上をめざす
運動器リハビリも積極的にされているそうですね。

はい。運動器リハビリというのは、筋力アップを図ったり、歩行訓練をしたり、関節の可動域訓練を行ったりして、体の機能改善を目標に行うリハビリです。筋力を上げることで痛みの軽減につなげています。薬物治療でなかなか改善が見込めない方や、まだ筋力はあるけど薬だけでは限界があるといった方に適しているかと思います。ご高齢の方だけでなく、スポーツ障害や関節症でリハビリが必要な30代、40代の方もいらっしゃいます。最近は内服薬や湿布などで経過をみるだけでなく、適応があれば早期に運動器リハビリをするようにしています。
リハビリは理学療法士さんの力も大きいのでは?
そうですね。当院では毎日スタッフ間で情報交換をして、連携を密にしています。また、月に1度は必ずカンファレンスを開き、患者さんの治療方針や最近の症例について話し合っています。それから、最近は地域の方々向けの講習会を始めました。きっかけは、新たに入った理学療法士が地域の方の健康増進に役立てればということで、彼の提案を取り入れてやってみようということになりました。月に2回程度開催していて、これからも毎月続けていきたいと思っています。
どのようなテーマで講習されているでしょうか?

1回目の講習会のテーマは転倒防止でした。超高齢化がますます進む今、長生きできるのは素晴らしいことですが、どうしても骨が弱くなったり、筋力が低下したりして、日常生活に支障が出てくる方がいらっしゃいます。ちょっとしたことで転んで骨折してしまうと、生活の質が大きく下がってしまうので、少しでも日常生活を不安なく過ごせるお手伝いができればと思い、このテーマになりました。参加者は70代、80代の女性が中心でしたね。皆さん本当に熱心で、健康に関する知識を積極的に吸収しようという姿勢が感じられました。年齢を重ねても自分の足でしっかり歩いて、健康に生活していきたいという方が集まってくださったんだと思います。
骨密度検査も積極的に行われているそうですね。
はい。骨密度測定器を使えば、15秒程度で簡単に調べることができますし、血液検査によって骨の状態や今後の変化を予測することも可能です。私が患者さんに骨密度のチェックを勧めるのは、日常生活でどれだけ骨折するリスクがあるのかを自覚することで予防につなげていきたいからです。骨密度が低いと、転んだだけで骨折する危険が高くなります。また大腿骨頸部を骨折すると大きな病院での手術が必要になり、日常生活にも支障を来します。それで、検査の結果に応じて、日常生活で気をつけるべきことをアドバイスしたり、注射や薬で対応したりしています。
地域に根差し、誰もが気軽に相談できる整形外科へ
そもそも先生が医師をめざされたきっかけは何だったのでしょう。

人と接する仕事に就きたいという思いからです。私は両親、兄弟、祖父母や曽祖父も同じ家で生活していました。4世代がともに暮らしていたのであらゆる年齢層の人とふれあう機会が多かったんです。それで将来は人とふれあうことのできる仕事、その中でも医師になりたいと思うようになりました。医師になったからには、治療することで患者さんが元気に帰っていく姿を見たい、それができる診療科だと思い、整形外科医師を選んだ経緯があります。
開業された経緯と勤務医時代との違いは?
勤務医時代は毎日のように手術を行っていました。当時、患者さんはとても多く、お一人お一人としっかり向き合う時間を持つことが難しかったんです。もっと患者さんに寄り添い、サポートをしたいという思いが募り、開業を決意しました。開業してからは、勤務医時代とは異なり、痛みの原因がはっきりしない状態で来院される方がほとんどです。同じ「痛み」を訴えても軽い違和感から日常生活に支障を来すほど重いものまでさまざまです。そのため、患者さんの話をよく聞いて細かい検査をして、原因を特定していく必要があります。また、患者さんとの付き合いが長くなるケースが多いことも感じます。現代は医療に限らず、人と人とのつながりが希薄になりつつあります。そんな中、当院が皆さんのコミュニケーションの場になればいいなと思い、日々診療に臨んでいます。
今後の展望を教えてください。

今後はさらに運動器リハビリに注力していきたいと思っています。薬や注射も大事ですが、やはり自分の体で動けるように筋力をつけることが大切です。もっと多くの患者さんにリハビリを受けてもらえるよう、理学療法士を増やせていけたらと思っています。リハビリは土曜もやっているので、平日働いている方にも利用していただけます。当院のような個人クリニックは、ちょっとした症状でも気軽に通いやすいというメリットがあります。今後一層、患者さんがいつでも相談しやすいように間口を広げ、患者さんに寄り添う医療をめざしていきたいと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
皆さんの「痛み」と向き合い、より快適な生活を取り戻すためのお手伝いをしたいと考えています。一口で「痛み」と言っても、その原因はさまざまです。原因を特定せずに、取りあえず痛みを取り除くことだけに注力しても、場合によっては症状が良くならないどころか、悪化してしまうこともあるんです。エックス線検査などを駆使してしっかり原因を突き止め、適切な処置やリハビリをしていくのが整形外科です。「こんな些細なことで病院に行ってもいいのか?」と思う必要はありません。必要であれば、大規模病院への紹介もスムーズに行っています。日常生活で少しでも違和感を覚えることがあれば、いつでも気軽にご相談にいらしてください。