前田 清貴 理事長の独自取材記事
まえだクリニック
(柏市/柏駅)
最終更新日:2026/10/29
柏駅南口から徒歩1分、医療施設が多く入るビルの5階にある「まえだクリニック」。エレベーターが開くと院内に直結、白を基調とした清潔感ある空間でスタッフが温かく迎えてくれる。前田清貴理事長は秋田大学卒業後、長きにわたって外科医、総合診療を行う医師として臨床現場に立ち、千葉西総合病院総長や鎌ケ谷総合病院院長なども務めてきた。その中で高齢者のための医療不足を痛感したことが、地域医療へ踏み出す原点となった。同院では外来診療・健康診断・訪問診療の3本柱を軸に、循環器内科や泌尿器科など専門の医師による外来も備え、年代を問わず総合的に診る体制を築いている。「医療は利益追求ではなく、患者さんのために尽くすもの」と穏やかに語る前田理事長に、開業の経緯やグループとの連携、今後の展望まで幅広く聞いた。
(取材日2026年9月14日)
患者とのつながりを大切に、切れ目のない医療を提供
クリニック開業の原点には、どのような思いがあったのでしょうか。

救急医療に携わっていた頃、手術や救急治療を終えた患者さんが、退院後の療養先を見つけられず、困っている姿を何度も目にしました。病院での治療を終えても、ご自宅ではご家族だけで支えることが難しいケースも少なくありません。当時は地域に介護施設も少なく、退院後の受け皿そのものが不足していました。そこで、退院後も住み慣れた地域で安心して療養できるよう、患者さんとご家族を地域で支えたいと考え、常盤平にクリニックを開設しました。
どのように現在の体制を築いてこられたのでしょうか。
常盤平での開業後、在宅医療や外来のバックアップ体制を充実させたいという志を同じくする仲間が集まり、柏にある当院をはじめ、船橋、都内の月島へとクリニックを広げていきました。現在は、病院やクリニックに加え、介護施設や訪問看護ステーションも含めた「おひさまグループ」として、互いに連携しながら医療を提供しています。私自身はもともと外科を専門としていましたが、開業後は内科も含め、患者さんのさまざまな悩みに応える総合的な診療に携わるようになりました。外来から在宅医療まで継続して患者さんを支えるには、それぞれの経験や専門性を生かした連携が欠かせません。当院では、秋田で20年間にわたり地域医療に携わってきた鈴木裕之先生に院長を務めてもらっています。鈴木先生が外来診療を中心にクリニックを支え、私自身は週に1〜2回、在宅診療を中心に現場に立つことで、それぞれの役割を生かしながら日々診療にあたっています。
診療の特徴を教えてください。

当院では外来診療、健診、訪問診療の3つを柱に据えていることが大きな特徴です。この3つは独立したものではなく、互いに密接につながっています。外来で通院されていた方が通えなくなれば訪問診療に切り替えますし、健診をきっかけに外来でのフォローを始めることもできます。どこかで必ず患者さんとつながっている、それが地域のかかりつけ医として大切なことだと考えています。患者さんは高齢の方が中心ですが、柏駅南口から徒歩1分という立地もあり、風邪やインフルエンザなどで若い世代の方も多く来院されます。総合的に何でも相談していただけるクリニックを目標にしていますので、体のことで気になることがあれば、まずは気軽に声をかけていただきたいですね。
総合診療を支える設備と、専門性を生かした診療体制
外来ではどのような体制で患者さんを診ていますか。

まず私や院長が総合診療として幅広く診察し、専門的な診療が必要と判断した場合は、院内の各専門の医師に速やかにおつなぎします。循環器内科は千葉西総合病院や東京慈恵会医科大学の3人の専門の医師が担当し、泌尿器科や精神科の専門の外来も設けています。先生方はもともと知り合い同士なので、スムーズに連携が取れる間柄です。検査面では開院当初からCTを導入しており、肺炎やおなかの痛みの原因、胆石の診断などを迅速に行えます。また、禁煙の診療にも取り組んでいます。総合的に診た上で必要に応じて専門の医師につなぐ流れを院内で完結させることで、患者さんの負担を減らしながら適切な診療へスムーズに進められるよう体制を整えています。
検査や診断を行う上で、大切にしていることを教えてください。
検査や診断では、結果をお伝えするだけでなく、患者さんの不安を和らげ、納得して次の段階へ進んでいただくことを大切にしています。私も鈴木院長も外科出身で、乳腺や甲状腺の診療経験があるため、当院ではその経験を生かしたエコー検査も行っています。健診で精密検査が必要とされた方にも対応し、気になる所見があれば早めに追加検査を行います。「私たちが経過を見ていきますから、心配しないでくださいね」とお声がけしながらも、定期的な検査の必要性はきちんとお伝えしていますね。専門的な検査や手術が必要な場合は、連携する病院へ速やかにご紹介します。患者さんがご自身の状態をきちんと理解できるよう、わかりやすい説明を心がけています。
訪問診療では、どのようなことを大切にされていますか。

訪問診療は毎日実施しており、外来担当と在宅担当を分けながら、医師同士で日程を工夫して対応しています。訪問診療で私が最も大切にしているのは、ご家族への説明と理解を得ることです。ご家族の中でも意見が異なる場合がありますから、事前によく話し合って方針をまとめておくようにしています。ただ、人の気持ちは揺れるものです。昨日と今日で方針を変えたいとおっしゃることもあると思いますが、それは当然のことだと思っています。ですから、その時々の患者さんとご家族の意向に柔軟に従うことを徹底しています。また、ケアマネジャーさんや行政との多職種連携も密に行い、介護と医療の連携会議にも参加しています。訪問診療のニーズは年々増えており、地域に欠かせない医療だと実感しています。
病院との連携やAI活用で描く、地域包括ケアの未来
今後に向けて、計画されていることはありますか。

外来や訪問診療で患者さんを診ていると、入院や、より専門的な治療が必要になる方もいらっしゃいます。特に高齢の方は、在宅療養中に急きょ入院が必要になるケースも少なくありません。そうした患者さんの受け皿となる機能をグループ内に備え、外来や在宅から入院まで切れ目なく支えられる体制をさらに整えていきたいと考えています。医療と介護をグループ全体で一体的に担い、地域包括ケアの一つのモデルとなるような体制を築くことで、この地域の医療をさらに充実させていきたいですね。また、2026年10月からは新たに小児科の女性医師を迎え診療をスタートします。文字通り、家族全員でかかれるクリニックとして地域医療へ貢献していきたいと思います。
診療の質をさらに高めていくための取り組みはありますか。
グループ独自のAI機能をSEの方々と共同で開発しており、すでに完成しています。今後、本格的に当院でも活用していく予定です。私たちは総合的に患者さんを診たいと考えていますが、当然ながら専門外の領域もあります。そうした場面でAIに確認を取ることで、精度の高い初期判断ができ、適切なタイミングで専門の医師におつなぎできるようになると考えています。ただし、あくまで主体は医師です。AIにすべて従うのではなく、アドバイスを受けながら自分で判断するという姿勢を大切にしています。診療時間の効率化や医療の質の向上にも役立つと考えていますし、グループ内の連携にもAIを活用していくことで、施設間の情報共有がよりスムーズになるはずです。将来的には連携の輪をさらに広げていきたいと思っています。
最後に、読者へメッセージをお願いいたします。

かかりつけ医を持つことは、とても大切なことだと考えています。当院がめざしているのは、何でも相談できるクリニックであることです。「この症状があったら来てください」ではなく、体のことで少しでも気になることがあれば、まず相談していただきたいんです。その中で私たちが対応できることであれば満足していただける医療を提供しますし、専門的な対応が必要であれば紹介状を書いて適切な医療機関におつなぎします。医療というのは利益のためにやるものではなく、患者さんのために尽くすことが原則です。外来でも健診でも訪問診療でも、患者さんとどこかでつながりながら、困ったときに頼っていただける存在であり続けたい。これからも地域の皆さんの健康を支えていくつもりです。

