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工藤 敏和 院長の独自取材記事

ライズ訪問診療クリニック

(狛江市/喜多見駅)

最終更新日:2020/04/01

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2016年11月、狛江市内の閑静な住宅地に開業した「ライズ訪問診療クリニック」。真新しく、しゃれた外観のメゾネットの一室が、日々多くの患者の家を訪れ診療を行う工藤敏和院長の拠点だ。東京慈恵会医科大学を卒業後、同大学の循環器内科をはじめ関連病院に10年以上にわたって勤務し、日々運び込まれる救急患者の命と向き合ってきた。そんな工藤院長が医師としてめざす先にあったのは在宅医療。同院の理念の最初の一節「どんな夜にも日は昇ります」という言葉の中に、その在宅医療への思いをうかがうことができる。日々のエピソードをユーモアを交えて明るく話す工藤院長。切実な医療現場なだけに、その明るさが助けになるのだろう。医療の最前線から転向したきっかけや、クリニックの特徴などを聞いた。
(取材日2017年3月10日)

病院の救急医療から在宅医療への大きな転向

先生は以前、大学病院の救急に携わっておられたと伺っています。

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医師をめざしていた頃は医療に対し、このクリニックのような患者さんに近い、生活に密着したものという漠然としたビジョンを持っていたのですが、大学で学び、実際の現場を回るうちに、より医療の前線に立ちたくなったんです。それで救急や外科の道も模索したんですが、「最終的には僕の原点である地域に戻りたい」という思いがあり、結局内科を選びました。それでも若い内に頑張りたくて、内科の中でも、循環器内科というスピーディーな対応を求められ、救急の現場でも一番重症な患者さんを診ることが多い診療科を専門としました。本当に寝食を忘れて、疲れを感じないぐらい集中していましたから、気持ち的には充実感がありましたが、「やはり何かが違う」という自分の一番奥底の思いに気付き、フィールドを変えることを決めました。そして約12年間勤めた大学病院を離れ、在宅医療に力を入れているクリニックで2年間学びました。

病院の救急から在宅医療へというのは大きな方向転換ですね。

大学病院で患者さんと長いお付き合いをしていると、ご高齢になることで本人が診療に通って来られなくなるということを何度か経験しました。最初はご家族に付き添われてでも来院できていたのに、そのうちご家族だけがいらっしゃって「本人は足腰が立たなくて、お薬だけもらいに来ました」ということが増えていく。そうなると、自分がその方に対してちゃんと医療ができているのかわからなくなります。「そろそろ在宅の先生とバトンタッチですかね」なんて言いながら、何か物寂しい思いがありました。最後までお付き合いできない、自分はここにいるけれども、患者さんがここに来てくれないと対応できないというケースが何件かあり、在宅医療に目が向きました。

在宅医療は、まさに患者さんに寄り添う医療ですね。

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生活習慣病という病気のカテゴリーがありますが、僕の専門とする循環器内科でも、例えば心臓病などは、糖尿病や高血圧、動脈硬化など生活に根差した病気との関連性が高いんですね。そうすると病院に来てくれた患者さんに対して「しょっぱい物食べてないですか」「どんな運動をしていますか」といった生活に踏み込む話をするのも仕事の一つになるんです。僕の研修医時代の師匠が「心臓の医者は、その人の家に上がりこむぐらいのつもりで、その人の生活に踏み込んでいかないといけない」ということをおっしゃっていて、その言葉を思い出したことも、在宅医療を意識するきっかけの一つでしたね。

在宅医療はさまざまな職種が連携するフラットな輪

実際に在宅医療に転向されていかがでしたか?

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勤務医時代も週に1回、開業の先生のところで外来と往診のお手伝いをしていましたし、在宅医療に携わる前からいろいろな覚悟はしていましたが、実際に在宅医療のクリニックで働き始めた最初の頃は、やはり戸惑いましたね。実際に家にお邪魔して仕事をしてみて、想定を上回ることがたくさんありました。患者さんの中には、ご家族から親身に、温かな状況でお世話を受けている方もいれば、独居でごみ屋敷のような環境に住んでおられる方や、医療や介護を受ける場所がない、いわゆる在宅難民の状態の方も結構いらっしゃいます。病院で働いているうちは、こんなことはわかりませんでした。病院に来ることができずに困っている人がたくさんいるというのは、在宅医療に転向してから知った現実です。

開業は以前から考えておられたのですか?

僕はトップに向いていない人間だと思っていたので、開業ということは全く考えていませんでした。でも、今の院内を見ていただくとわかると思いますが、僕はトップでもなんでもなくて、ソロ、ピン芸人なんですよね(笑)。トップ感はなくてもいいんだな、というのが一つわかったことです。在宅医療は医者が患者さんの家に出向く仕事ですが、家で診察・治療をするだけでは、その人の問題が解決しないことが多いんですね。先ほどお話したごみ屋敷の問題などは、介護保険でカバーできたりしますが、そうするとケアマネジャーさんとの連携が必要ですし、それぞれのプロフェッショナルが患者さんのお家に集まって、それぞれの仕事をしてまとまっていくという感じになります。在宅医療はいろんな職種の人が連携するフラットな輪だと思いますね。

在宅医療では、多方面との連携が大事なんですね。

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介護の分野の方や病院との連絡も密に行わなければならないので、いろいろな病院にいつも行っています。東京慈恵会医科大学付属第三病院の緩和ケア科で行う回診にも参加させていただいているんですよ。自分一人で開業するにあたって一番心細いなと感じたのは、自分が業界から知識や技術の面で取り残されることです。常に新しいものを仕入れていくためには、本を読むよりもやはり現場を見て、現場の人から教えていただくのが一番確実なので、そういうご縁を大切にしています。あとは、狛江市内で在宅医療に携わっていらっしゃる先生と連携して、定例会という名の飲み会に毎月行ったりしています(笑)。皆さんとコミュニケーションを取りながら、自分が在宅医療の本質からズレていかないように修正をしています。

終末期ケアをはじめ、質の高い診療を満遍なく届けたい

こちらのクリニックの特徴は何でしょう?

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満遍なく、何でもお受けしますというのがこのクリニックなんですが、それでは特徴とは言えないかもしれないですね。終末期ケア・緩和ケアに対応した治療が可能で、がんの終末期ケアに特化したクリニックさんが行うような疼痛に対する注射を夜中でも行っていますし、そのための薬も常にここで厳重管理しています。このことは同院の特徴の一つですが、他の治療も同じように高度なレベルで提供していきたいと思っています。また、患者さんの容体は夜中に急変することが多く、呼ばれた時に「じゃあ治療は明日の朝にしましょう」とは言えませんから、夜中でもフルの治療を始められるよう24時間対応しています。

診療の際に大切にしていることを教えてください。

患者さんのおっしゃることをよく聞くことです。その方のお考えを大事にし、押し付けがましいことは一切しません。そこが病院で行う医療との大きな違いだと思いますね。在宅医療は柔軟性が必要で、型どおりの正解を押し付けるような医療ではいけないので、そこも仕事をしていてやりがいを感じるところです。オーダーメイドみたいな診療ですね。お酒を飲んだり、タバコを吸いながら僕とお話してくれる患者さんもいらっしゃいます。在宅医療は、体だけでなく心のケアにも大きな役割を担っていると思うんです。心身同一ということですね。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

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当院では、ご高齢の方だけでなく、高度な小児専門医療を必要とする方以外はお受けしています。お話しを聞くこと、ご希望を最優先することに注力し、ご満足いただけるよう心がけていますので、病院へ行くのが難しくなってきたら、まずはご相談ください。在宅医療は、まだまだ一般的な認知が足りていません。病院へ行きづらいな、ちょっと不便だなという時、どうしたらいいのか、どこに相談したらいいのかということが、まだまだインフラレベルにまで整備、認識されていないと感じています。電気ガス水道、在宅医療という感じになるためには、行政の働きかけも必要でしょうし、僕もカフェ活動など近隣の方々に知っていただけるような催しを仕掛けていくことを考えています。なるべくたくさんの人に在宅医療に携わっている先生方の存在を知ってもらって、広がっていけばいいなと思いますね。

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