内田 直 院長の独自取材記事
すなおクリニック
(さいたま市大宮区/大宮駅)
最終更新日:2025/10/10

大宮駅東口から徒歩で約3分、ビルの4階に位置する精神科、心療内科「すなおクリニック」。落ち着いた雰囲気の待合室では窓越しに街並を見渡すことができ、開放感が漂う。内田直院長は、長らく臨床活動、国内外で睡眠に関する研究活動、精神医学をめざす学生への教育活動などに携わり、これまでに培った知識や臨床経験をたくさんの人に提供したいと2016年10月に開院。薬物療法だけでなく、患者の生活全般を見据え、それぞれの原因や症状に応じた睡眠、食事、運動等の指導を行い快適な生活へと導いていく。睡眠に関する著書も多く、今後は認知症の治療にも積極的に取り組んでいきたいと語る内田院長に、開業までの経緯や診療方針、今後の展望などについて聞いた。
(取材日2017年5月24日/情報更新日2025年9月26日)
薬物療法だけでなく生活改善のための指導も
開業までの経緯を教えてください。

国立滋賀医科大学を卒業後、東京医科歯科大学神経医学教室などを経て、カリフォルニア大学精神科の客員研究員として睡眠の研究活動を行っていました。帰国後は老人医療センターで臨床を行いながら、都立松沢病院内の研究所で研究を続け、精神医学を志す学生の研究指導にも携わっていました。その後、学生たちとの関わりを通して「教育」にも興味を抱き、早稲田大学でスポーツ科学部が新設された際に、精神科の医師としてアスリートの精神的問題への取り組みや、うつ病、不眠症の運動療法の研究を行いながら、学生たちに指導してきました。医師として、教授として幅広い年齢層の人たちと関わる中、精神科のさまざまな疾患を治療するには、薬物療法はもちろん、その方の生活を見直し改善していくことが大切であるということを実感しました。自身がめざす医療をたくさんの方に提供していきたいと思い、2016年10月に開業しました。
開業にあたり、大宮の地を選んだ理由は? 院内設計のこだわりについてもお教えください。
私自身がさいたま市出身であることに加え、大宮駅は乗降客数が秋葉原や新橋と並んで多いこと、新幹線や京浜東北線をはじめ多くの路線が通っていることから決めました。これまでの知識や経験を臨床に生かす専門性の高いクリニックにしていくためにも、比較的広範囲のエリアから足を運んでいただきやすい場所であることは、大切な要素の一つでした。院内設計は、埼玉県内の住宅メーカーさんにお願いし、いわゆる「病院を作る」イメージでなく、「居心地の良い場所」をコンセプトに設計していただきました。ある大学院生の調査によると、ブルー系の部屋で寝る人は他の色の部屋で寝る人に比べて睡眠時間が長いそう。当クリニックでは、壁紙やクリニックのロゴにもブルーとグリーンを取り入れ、2021年に増設した6階もこのコンセプトに基づいて設計し、より快適で安心感のある診療環境を整えています。
診療内容と診療方針についてお聞かせください。

当クリニックは、「スリープ、メンタルヘルス、総合ケア」を掲げ、睡眠障害、うつ病、成人期の発達障害、認知症、不安障害、アスリートのメンタルヘルスなど幅広い疾患に対応しています。一般的な薬物治療を行うだけでなく、患者さん一人ひとりの生活サイクル、生活習慣をじっくり伺った上で、その方に必要な睡眠、食事、運動などについて指導を行います。症状の原因の一つが仕事にあるとしても、さまざまな事情から仕事を変えることができないケースも多くありますので、その場合は仕事以外の部分で改善できることを患者さんと一緒に考えるなどしながら、患者さんが快適な生活な実現できるようサポートをしていきます。
睡眠障害の背景に発達障害が潜んでいることも
どのような患者さんがいらっしゃいますか?

今のところ、年齢層では20〜50代の患者さんが多いですね。私は著書やホームページを通じて医療情報を発信していますが、それを見て静岡のほうからいらっしゃる患者さんもいました。近隣の先生からの紹介で来院されるケースもあります。20〜30代の患者さんは、日中眠くなる睡眠障害の方が多いのですが、問診すると、夜更かしによる睡眠不足が原因のこともあります。「夜中の1、2時でなく夜の10時くらいに寝る生活を、2週間試してみてください」と伝え、実践していただくと、薬を飲まずに症状が改善につながる方もいらっしゃいます。また、睡眠障害の背景には注意欠如多動症や自閉スペクトラム症など発達障害が潜んでいることもあります。その場合は発達障害の治療をすることによって、日中の眠気の改善が見込めるケースもありますよ。
高齢者の患者さんはどのような症状が多いのでしょうか。
不眠症で、「他の病院で睡眠薬を処方されて飲んでいるのに眠れない」と来院する患者さんもいらっしゃいます。そのような方は、睡眠薬の影響で日中に眠気が残ってアクテイブに動けなくなるなど活動性が下がり、その結果夜眠れなくなるという悪循環に陥ってしまうことがあります。高齢の方は、加齢によって運動器の障害や衰えが進んでしまうことにより「要介護」になるリスクが高くなる「ロコモティブシンドローム」になる可能性もあります。そのような患者さんに対しては今後、地域の訪問リハビリテーションセンターと連携し、患者さんのお宅に訪問してマッサージや歩行訓練などを行う訪問リハビリテーションにも力を入れていきたいと思います。自宅に訪問してもらうことで患者さんの生活にも変化が出て、メンタリティーの改善につながることもあります。
患者さんの生活全体をとらえ、問題点を明らかにして解決していくのですね。

診療においては、患者さんが、24時間どのような生活をしているのか、どんな人たちと会っているのか、その人たちはどのような人たちなのかなどを含めて広く把握した上で、生活の中で改善できることがあれば、それに向けてアプローチしていきます。現在の症状の原因の一つが、睡眠・食事・運動などの生活習慣によって改善できないか、また「あまり得意でない仕事をしているから」と判断した場合は、患者さんにそのことを自覚していただきながら、得意な仕事に就くチャンスを待つなどの対処法を提案するなど、患者さんに寄り添った指導を行います。「ドクターが自分のことをわかってくれている」と、患者さん自身が安心感を抱くことも大切ですので、なるべく無理強いせず、その時にできることや今後の治療方針についても対話を重ねながら治療を進めていきます。初診の際は1人の患者さんに60分以上の時間を取り、じっくり診察させていただいています。
認知症の診療にも力を入れていきたい
睡眠検査について教えてください。

睡眠検査について2021年には専用の検査室を増設し、こちらではフルPSG、MSLT検査など睡眠の専門検査を行っています。非常勤含めスタッフは10人在籍しています。
先生ご自身の健康法を教えていただけますか?
やはり、睡眠と運動ですね。睡眠については、毎日なるべく7時間の睡眠時間を確保するように心がけています。家が近いので、夜11時に寝ても朝6時起床で7時間。何とか達成しています。運動は、ジョギングをしたり、徒歩通勤するなどを心がけ、週に4日くらいはしっかり体を動かすようにしています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

今後は認知症の診療にも力を入れていきたいと思っています。地元周辺にお住まいの高齢の方やご家族の方々に向けて、当クリニックを会場に講演などを行い、専門的な医療情報を幅広く発信していきたいですね。また、学生の研究指導など教育の仕事にも携わってきたので、若手のドクターたちと一緒に取り組んでいけるようなプロジェクトも考えていきたいと思います。睡眠は、メンタルヘルスと深い関係があります。睡眠の背景にメンタルヘルスの問題が潜んでいる場合もあるし、その逆もあります。睡眠についてはもちろん、それ以外の症状についても、困っていることがありましたら、お気軽に足を運んでいただければと思います。