老若男女にできる「粉瘤」
自分で治そうとせず医療機関にかかろう
クリニーク大阪心斎橋
(大阪市中央区/心斎橋駅)
最終更新日:2023/10/19
- 保険診療
ほくろやイボと違い、皮膚の内部にできる“良性できもの”を粉瘤(ふんりゅう)という。皮膚科領域では一般的なもので普段は悪さをしないというが、何かの拍子に破裂して化膿したり、中にたまった垢・脂・汗などが飛び出して嫌な臭いを発したりと、痛みや不快感が出ることも。また、ごくまれに悪性腫瘍である可能性もあり、受診・除去手術に加え、検査も受けておきたいところだ。傷が目立ちにくくトラブルのリスクも低下させる「くり抜き法」を採用している「クリニーク大阪心斎橋」では、可能な限り傷痕が残りにくいよう丁寧に粉瘤を取り除き、全例病理検査を実施する徹底ぶり。同院の加藤健一理事長に、粉瘤とは何か、治療法の種類、同院で採用されている「くり抜き法」の詳細、診療で大切にしていることなどを聞いた。
(取材日2021年1月18日)
目次
中身を押し出す・潰すはNG。傷が目立たない「くり抜き法」で取り除き、病理検査で詳細を調べてもらおう
- Q粉瘤とは何ですか?
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A
粉瘤とは、ほくろやイボなどの次に多い“良性のできもの”です。ただ、ほくろやイボは皮膚表面にできるのに対し、粉瘤は皮下にめり込むように袋状になっているもの。皮膚の下に口のふさがった風船が埋まっているイメージで、その風船の中に垢や脂、汗などがどんどんたまって大きくなっていきます。普段は悪さをしないのですが、何らかの原因で圧迫されて風船が割れ、長年蓄積された垢・脂・汗が噴き出てきた時にとても嫌な臭いがしますし、内部は不潔ですからそこにばい菌が入り込んで化膿することも。また、表に出てこず内側で風船が破裂し、腫れて痛みが出ることもあります。私は乳児の頭大にまで膨れ上がった粉瘤の手術経験もありますよ。
- Qなりやすい人の特徴や、粉瘤ができたときの注意点は?
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A
粉瘤の原因は不明で、誰もがなり得るものです。「ウイルス性」「ぶつけた拍子にできる外傷性」「毛が抜け落ちた毛穴にできる」など諸説あるものの、何が原因かはわかりません。私はお子さんから高齢の方まで老若男女の粉瘤を診てきましたし、多発したり再発したりと繰り返す方がいらっしゃるのも特徴です。つい気になってご自身で中身を押し出す方がいらっしゃいますが、中身が出て一見ぺしゃんこになっても、袋があるので再発してしまいます。根本的な治癒にはつながりませんし、そうした行為が化膿する原因にもなりかねません。気になってもご自身で触ったり押したりせず、皮膚科を受診するようにしましょう。
- Qどのような治療法がありますか?
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A
外科的に取り除く以外に方法はないと考えます。塗り薬や内服薬での治療はできず、一部の膿だけを出すというやり方では根本的な治療にはなりません。一般的には、局所麻酔をしてメスを使って取り除くという方法が用いられることがほとんどです。私も勤務医時代にはこの方法で手術していましたが、例えば1cm大の粉瘤を除去するのに、倍ほどの大きさの傷を作らざるを得ない方法しかないのです。良性のできものである粉瘤の見た目を気にして切ったのに、傷痕が残っては本末転倒ですよね。ですから本院である当院と、東京・名古屋・福岡など分院においては、私を含む全医師が「くり抜き法」という手法を用いて粉瘤の治療を行っています。
- Q「くり抜き法」とはどのようなものですか?
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A
局所麻酔を使い、粉瘤に対し最大5mm程度の傷で、膿も内部の袋もすべて取り去る方法です。縫合が不必要なケースが大半で、ニキビ痕くらいの小さい傷で目立ちにくいのがメリット。さらに傷が小さいということは、そのぶん出血が少なく、ばい菌が入り込んだり腫れ上がったりするなどのトラブルのリスクを低下させるという利点もあります。また、私の経験上ではくり抜き法での手術のほうが痛みが少なく、治りやすいと感じています。くり抜き法を採用している医療機関は少なく、私も開業後に独自に学んで習得した技術です。なお、先ほど申し上げた乳児の頭大など大きな粉瘤にはできない術式であり、粉瘤が小さいほど傷はさらに小さくなります。
- Qこちらのクリニックが大切にしていることを教えてください。
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A
粉瘤をきれいに取り去るという治療結果にこだわるのは大切なことです。しかし取り除いた粉瘤が本当に“良性のできもの”なのかを検証すべきだと考え、全例病理検査に出して調べています。そのほとんどが良性とはいえ、ごくまれに悪性の腫瘍であったり、ある論文では粉瘤の影に隠れて悪性腫瘍が合併していたケースも報告されているのです。万が一悪性腫瘍であったら命に関わる可能性があります。きれいに除去して患者さんに満足していただくことはもちろん、良性か悪性かをしっかりと調べてお伝えしています。また、ただ検査に出すだけではありません。皮膚科を専門とする医師として、検査結果をきちんと「読み取れる」のも強みです。