石井 聡 院長の独自取材記事
九段下駅前ココクリニック
(千代田区/九段下駅)
最終更新日:2024/09/02
患者の8割が30~50代。働き世代に向けて質の高いプライマリケアをめざす「九段下駅前ココクリニック」。内科や生活習慣病の相談だけでなく、心療内科、精神科、循環器内科、内分泌・代謝内科と診療範囲は幅広い。石井聡院長が掲げるテーマは「続けられる治療」。患者一人ひとりの症状だけでなく背景や思いまで考慮しながら、その人にとって無理なく続けられる治療計画を立てている。九段下駅の目の前という好立地で、さらにオンライン診療にも対応。遠方に住む患者などに対しオンライン診療も交えて治療計画を立てることもあれば、ずっと対面を希望して通院する患者にも応じている。「どのような悩みでも、まずは相談してほしい」と気さくな笑顔で話す石井院長に、同院の特徴や診療方針について聞いた。
(取材日2024年4月11日)
働き世代に向けた、質の高いプライマリケアをめざす
働き世代のかかりつけ医をめざしているそうですね。
はい。働き盛りの方が通いやすく、充実したプライマリケアを提供できるクリニックをめざして開業しました。おかげさまで思い描いていたことが提供できている手応えを感じています。アクセスの良さや平日夜8時までの診療などハード面での通いやすさは大事にしていて、利便性は確保しつつ、医療の質は損なわないように努めています。「とりあえず」ではなく、もっと落ち着いて、安心してご相談いただけるクリニックであるように心がけています。予防接種で受診した方を例に取ると、最初は予防接種を受けにいらした方が、その1回の注射だけで診療が終わるのではなく、次は風邪をひいたとおいでになり、その次は健康診断で引っかかったとご相談に来てくださる。そんなふうに、患者さんと長いお付き合いのできるクリニックでありたいです。
体の不調と併せてメンタルの悩みも相談できるのですか?
もちろんです。何かご相談があったときに「これは当院の専門ではありませんから、他院へ行ってください」といった対応はいたしません。働き盛りの世代にとって医療ニーズは実にさまざま。風邪や発熱といった体の不調、不眠症などメンタルの悩み、それらが組み合わさって胃痛や咳として表れることもあるんです。また、うつ病などの場合、それほど重い症状ではなくても、患者さん自身も何が起きているかよくわからず混乱していらっしゃることが多いです。専門的な診療が必要か見極めながら、当院で対応可能な症状ならば薬の処方や行動療法で改善を図っていきます。「大きな病院に行くほどではないけれど、気にかかる」という症状は多いと思いますので、しっかり対応していきたいですね。もちろん専門的な所見や処置が必要なときは、迅速に専門の医療機関を紹介します。
先生は製薬会社で新薬販売における医学的戦略の策定に携わってこられたのですね。
開業前は外資系の製薬会社に勤務し、医学的な知見とマーケティングを融合し医薬品の売上を伸ばす業務を専門としていました。当時は膨大な薬のデータを扱っていたので、臨床では到底経験できないほどの多くの情報に触れることができたんです。その経験から「薬とどのように向き合っていくべきか」について、多くを学びました。実際の臨床ではやはり数が限られますから、医師として実際に患者さんに薬をお出しする前に、徹底的にデータを理解する経験を積めたのは今役立っています。開業した今は、その経験を生かしながら一人ひとりの患者さんに合わせた薬を処方し、よりわかりやすい説明ができていると自負しています。やっていることや立場は変わっても、追いかけている目標は製薬会社に勤務していた当時と同じです。「いかに患者さんの未来を病気から守るか」を目標に走り続けています。
何より大事なのは、続けられる治療であること
ご専門は生活習慣病で、特に心血管疾患の予防に注力していると伺いました。
はい。糖尿病でも高血圧症でも脂質異常症でも、その疾患自体で死に至ることはあまりありません。でも糖尿病から脳梗塞を起こして寝たきりになり、肺炎で亡くなるといったケースがあるように、生活習慣病のケアがちゃんとされていないと、最終的には命が脅かされていきます。だからといって「脂質異常症だから、コレステロール値を下げるために薬を飲みましょう」と伝えるだけでは言葉足らずです。脂質異常症には痛みもないのですから服薬の意義を実感しにくいのも無理はありません。当院では、生活習慣病の先にある脳梗塞・心筋梗塞などの将来的なリスクをご説明した上で、血圧や血糖値の数値目標を立てるようにしています。「目標に向かって努力する」ことは、日頃のビジネスに通じるものもあってか、ご理解くださる患者さんが多いですね。モチベーションをもって前向きに治療に取り組んでいただくためには、長期的な信頼関係も大切だと考えています。
「続けられる治療」は、クリニックのテーマでもありますね。
特に働き盛りの世代では大病を防ぐ予防の役割も大きいですからね。ただし、どんなに良い治療も続けなければ意味がありません。まず治療から脱落せずに通っていただくためにはどうすべきかを考え、私も患者さんも日々少しずつ努力を積み重ねて改善をめざしていくんです。目の前の患者さんに何を提案したら適切なのか。「教科書的にはこれが正しい」と言っても、現実的には続けられない患者さんもいらっしゃるわけです。でも、次善策としての別の治療で一定の効果が見込め、患者さんも継続できるのであれば、そちらを選んだほうがいいでしょう。そこは現場のさじ加減で、私たち臨床医の腕の見せどころでもあると思っています。
早い時期からオンライン診療にも取り組まれていますね。
オンライン診療の良いところは、受診にあたっての時間的・地理的制約が軽減されることです。ただこれは、あくまで治療継続のためのツールの一つに過ぎません。当院では2017年初め頃からオンライン診療を取り入れていますが、遠方にお住まいでオンライン診療も交えて治療計画を立てる患者さんもいれば、ずっと通院のみで利用されている患者さんもいらっしゃいます。九段下駅の目の前だから通いやすい、オンライン診療も可能だから受診しやすい。どちらが利用しやすいかは患者さんによって異なりますが、選択肢の多さは利便性に、またその先の治療継続につながります。治療内容も受診の方法も柔軟に、これは患者さんに無理なく治療を続けていただくための工夫です。
かかりつけ医だからこそできる丁寧な医療を
オンライン診療はどのような方に向いている方法でしょうか?
遠方で定期的な通院が難しかったり、忙しくて通院の時間が取れなかったりする方など、ライフスタイルなどを伺いながらオンライン診療を取り入れた治療計画を立てることがあります。オンライン診療を使うことで「通院の往復時間が不要で仕事をしながら待てる」なら、忙しい方でも診察を受けやすくなりますよね。また例えば血圧を下げるためのお薬を3ヵ月分出してただ「飲んでくださいね」とお願いするよりは、1ヵ月か1ヵ月半に1度はオンライン診療をして「体調はどうですか」「お薬、飲んでますか」などと状況を伺ったほうが、患者さんはモチベーションを保ちやすくなると思うのです。
治療を続ける上でモチベーションの維持は大切ですね。
そうですね。ご自身の健康に目を向けて、前向きに治療に取り組んでいただきたいと思います。医師が必死になってもご本人が健康に無関心では、受け身の医療になってしまうからです。この数年、未曾有の感染症に直面して、皆さんの健康意識が変わったように感じています。医師からの提案にきちんと耳を傾けたり、しっかりと考えてから答えを出したりする患者さんが増えてきました。大変な事態ではありましたが、多くの人が健康に意識を向けるきっかけになったのではないでしょうか。
読者へメッセージをお願いします。
数字を見るだけならばAIにもできること。当院は患者さんの悩みや背景にしっかりと向き合い、無理なく継続しやすい治療計画を立てています。薬についても必要なものを見極めて、むやみに処方することはありません。幅広くプライマリケアを提供するのが、私たちのめざすところ。どのような悩みでも、まずはお聞かせください。また、時代に合った受診しやすい環境づくりのため、オンライン診療だけでなく、ウェブ予約やウェブ問診表なども取り入れています。加えて、キャッシュレス決済にも対応できるようにしました。こうした環境づくりもしながら、これからもかかりつけ医だからこそできる、質の高い丁寧な医療を提供していきたいと思います。