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白 成栽 院長の独自取材記事

たいようさんさん在宅クリニック

(守口市/守口市駅)

最終更新日:2020/04/01

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2016年に開業した「たいようさんさん在宅クリニック」は訪問診療に特化したクリニックだ。高齢者や持病のある患者の一般的な内科診療はもちろん、自宅療養を希望する末期がん患者が穏やかな最期を過ごせるよう患者の尊厳に配慮した診療に力を尽くす。院長の白成栽(はく・すんじぇ)先生は、在宅医療の過疎地に適切な医療を届けたいという強い思いから、人口密度が高いにもかかわらず在宅医療が充実していないここ守口市に開業を決意。クリニックの名前のとおり温和な人柄で常に患者に寄り添う白院長の姿勢が患者とその家族を支えているのだろう。「後悔しないように常に全力を尽くします」と、穏やかな物腰からもぶれることのない芯の強さがうかがえる白院長に在宅医療への思いを聞いた。
(取材日2018年3月19日)

患者の生活に寄り添う在宅医療への道

訪問診療に特化したクリニックを開業されたきっかけを教えてください。

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大学院生の時に先輩の紹介で訪問診療のアルバイトをする機会があり、 その時に初めてこういう分野があるんだ、と興味を持ったのが最初のきっかけです。末期がんなど看取り期の近い患者さんの中には最期はゆっくり自宅で過ごしたいなど、不必要な通院をせずに自宅で穏やかに過ごしたいと願う患者さんの多さを目の当たりにしました。心不全や腎不全などで普段通院をされている方でも、不調時は通院が困難なことが多いです。そういったとき、普段から訪問診療を受けていれば、採血検査や投薬など不調時、自宅で必要な治療を受けることができます。つまり、継続して診療しておくことが大切なのです。ちょっとした対応で症状が良くなり入院せずに済むケースなどを見てきたこともあり、在宅医療の必要性を強く感じました。また、特定の病気だけでなく、主治医として全身の疾患を診ることができるところも魅力的に感じ、在宅医療に特化したクリニックを開業しました。

訪問診療と通常の外来の違いはどんなところにありますか?

まず、訪問診療の場合は患者さんの生活の空間に入るので身の周りのことを配慮したり、いろいろなお話をさせてもらったりと患者さんに、より寄り添った医療が提供できると思います。外来の場合、時間が限られているので最低限のコミュニケーションしかとれませんし、他の外科や内科などの先生から依頼されて治療するだけになることも多く、こちらからあまり踏み込んだ話をしづらい雰囲気もあります。また、毎回担当医師が変わることも多いので、親密な関係になりにくく、医師としてもどかしさを感じていました。訪問診療の場合、がんだけでなく、糖尿病や高血圧症など全身のさまざまな病気を主治医として1人の医師が診ることができます。もちろん、必要な時はきちんと良いタイミングで専門の先生に紹介できるように日々勉強しています。

どうして守口で開業を決意されたのでしょうか?

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守口市は在宅医療の過疎地域であると言えます。大阪市の隣にある市なので人口密度は高い地域なのですが、充実した在宅医療を提供できる機能強化型在宅支援診療所や緩和ケア充実診療所が開業時はありませんでした。「ないのであれば自分でやろう!」と思い、医療のないところに適切な医療を届けたいという思いからここ守口の地で開業を決めました。

放射線科での経験が今の診療に生きている

先生の開業までの経歴をお聞かせください。

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出身は韓国のソウルなのですが、中学生の時に父の仕事の関係でオーストラリアに移り、中学、高校、大学と20歳まではオーストラリアで育ちました。家族に医療従事者がいたわけではないのですが、持って生まれた才能がなくても後から学んだ技術で人の役に立てるのが魅力的だな、と感じ中学に入った頃には医師をめざしていましたね。もともと日本に興味があったことから日本の大学に行くことを決め、大阪大学医学部へ進学しました。その後大学院で博士号を取得し、いくつかの病院で研鑽を積んだのち開業しました。

大学時代のご専門を教えていただけますか?

専門は放射線治療です。日本人は2人に1人ががんになる時代だといわれていますよね。がんで亡くなる患者さんが多いのも事実です。だからこそがんの治療を専門にしたいと思い、外科よりも切らずに治療ができる放射線科に魅力を感じました。大学院生の時は、がん細胞の研究に携わっており、がん細胞に放射線を当てながらどうすればがん細胞が死ぬのかを日々研究していました。

今までの経験が現在の診療に生かされていると感じるときはどんな時ですか?

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普通は全身のさまざまながんを同じ医師が診ることはありません。例えば、肺がんであれば呼吸器科の医師、頭のがんであれば脳神経外科の医師といったように専門の医師が診ることが通常です。しかし放射線科が対象とするがんは幅広いです。日本は腫瘍内科というものが盛んではないので、そのさまざまながんを横断的に診ることができるのは放射線科の強みだと思います。さまざまな科のカンファレンスでたくさんの症例を診てきましたので、「このがんで、このステージで、こういった治療をしている」と聞くとある程度のイメージがつかめます。そのあたりは放射線科での経験が今の在宅診療で患者さんを診るときにも生きているなと思います。

主治医制で患者との信頼関係を密に築く

ターミナルケアの在り方について、考えをお聞かせください。

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「いかに死ぬか」は「いかに生きるか」と同じくらい大事なものだと思います。まずは何より患者さんの思いを尊重することを一番大切に、アドバンス・ケア・プランニングといって、前もって最期の時に自分がどんな治療を受けたいか、受けたくないかについてしっかり患者さんご自身、もしくはご家族の方と話し合うことをしています。医師が医学的根拠に基づいてどれが一番良い治療かを決定するのではなく、あくまでも主体は患者さんという考え方が在宅医療では最も大事だと考えます。病院の場合は延命治療のために点滴するなど何かしらの治療をしますが、在宅の場合は、本人が点滴などの延命治療を望まない場合は患者さんの意思を尊重することが大切だと思っています。

訪問診療のやりがいや、印象に残っている患者さんとのエピソードはありますか?

一番のやりがいは困っている患者さんの役に立てるところですね。訪問診療を始めてから一番印象に残っているのが、末期がんの患者さんで腹水がパンパンにたまって苦しんでいた方がいたのですが、薬を飲むのを嫌がってどうしても飲んでくれないと夜に薬剤師から電話があったんです。そこで直接私が患者さんにしっかり説明し、最後は自分自身で決断してもらうように交渉したところ、ちゃんと飲んでくれるようになりました。そこから最期まで痛みを緩和できて穏やかに過ごすことができ、最期は奥さまに「生まれ変わっても一緒になろうね」と感謝の言葉を述べるほど穏やかな日々を過ごされました。看取りに伺ったときはご家族全員がそろって号泣されていましたが、とても良い最期だったと思います。苦しさが緩和されると心に余裕が生まれ、末期がんでありながらも最後はありがとうと感謝の言葉を分かち合えたこと、そのときにはとてもやりがいを感じましたね。

先生のモットーと今後の展望をお聞かせください。

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モットーは後悔しないことです。後悔しないように常に全力を尽くすことはいつも心がけていますね。私が主治医制にして1人の患者さんを1人の医師が続けて診ることにこだわっているのは、学生時代に訪問診療のアルバイトをしていた時、毎回診る患者さんが固定ではなかったので、信頼関係を密に築くことが難しいなと感じていたからです。とにかく訪問診療において患者さんとの信頼関係はとても大事です。だから主治医制にするのはクリニック開業時から決めていました。このスタンスはこれからもずっと続けていき、患者さんとのコミュニケーションを大切にしていきたいと思います。今後も地域の患者さんに必要とされる医療を提供して、少しでも地域医療に貢献できるクリニックとして尽力していきたいと思います。

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