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白 成栽 院長の独自取材記事

たいようさんさん在宅クリニック

(守口市/守口市駅)

最終更新日:2025/02/06

白成栽院長 たいようさんさん在宅クリニック main

2016年に開業した「たいようさんさん在宅クリニック」は訪問診療に特化したクリニックだ。高齢者や持病のある患者の一般的な内科診療はもちろん、自宅療養を希望する末期がん患者が穏やかな最期を過ごせるよう患者の尊厳に配慮した診療に力を尽くす。院長の白成栽(はく・すんじぇ)先生は、在宅医療の過疎地に適切な医療を届けたいという強い思いから、人口密度が高いにもかかわらず在宅医療が充実していないここ守口市に開業を決意。クリニックの名前のとおり温和な人柄で常に患者に寄り添う白院長の姿勢が患者とその家族を支えているのだろう。「後悔しないように常に全力を尽くします」と、穏やかな物腰からもぶれることのない芯の強さがうかがえる白院長に在宅医療への思いを聞いた。

(取材日2018年3月19日)

患者の生活に寄り添う在宅医療への道

訪問診療に特化したクリニックを開業されたきっかけを教えてください。

白成栽院長 たいようさんさん在宅クリニック1

大学院生の時に先輩の紹介で訪問診療のアルバイトをする機会があり、 その時に初めてこういう分野があるんだと興味を持ったのがきっかけです。最期は病院ではなくゆっくり自宅で過ごしたいなど、自分らしく穏やかに過ごしたいと願う患者さんの多さを目の当たりにしました。普段は通院をできている方でも、不調時は通院が困難なことが多いです。そういった時、訪問診療を受けていれば、採血検査や投薬、点滴など必要な治療を自宅で受けることができます。入院になるとそのまま寝たきりになることも多く、本人の生活の質を下げるのみならず、家族の介護負担も増えてしまうのでそれを防ぐためにも在宅医療の必要性を強く感じました。また、日頃の生活習慣の改善や持病の管理による予防医学としての側面もあり、主治医として全身の疾患を診ることができるところも魅力的に感じ、在宅医療に特化したクリニックを開業しました。

訪問診療と通常の外来の違いはどんなところにありますか?

外来の場合、時間が限られており、不調で来られた患者さんの対応になるので、最低限のコミュニケーションしかとれませんし、こちらからあまり踏み込んだ話をしづらい雰囲気はあると思います。また、担当医師が変わることも多いので、親密な関係になりにくく、ここは私自身も外来対応でもどかしさを感じる部分ではありました。他方で、訪問診療の場合は患者さんの生活空間に入るので身の周りのことを配慮したり、いろいろなお話をさせてもらったりと、より患者さんに寄り添った医療が提供できると考えます。普段の状態をよく知る主治医が日頃から診察することで、些細な変化にも気が付くことができるため、疾患の早期発見にも繋がります。また、患者さんの人生観や治療における価値観などをお伺いすることで、患者さん一人ひとりの希望に添ったオーダーメイドな診療ができると思います。

どうして守口で開業を決意されたのでしょうか?

白成栽院長 たいようさんさん在宅クリニック2

守口市は大阪市の隣ということもあり、府内でもかなり人口密度が高く、それに伴い高齢者や要介護の方もたくさんいらっしゃるので潜在的な在宅医療ニーズが高く見込まれる地域ですが、開業時は在宅医療過疎地とも言えるような状況でした。また、当時は守口市内に充実した在宅医療を提供できる機能強化型在宅支援診療所や緩和ケア充実診療所がほとんどありませんでしたので、「ないのであれば自分でやろう!」と思い立ち、開業を決めた次第です。厚生労働省の調査によると、人生の最期を迎えたい場所として半数近くの方が「自宅」と回答しており最も多いのですが、実際に自宅で亡くなる方は2割にも満たない程度だそうです。ここ守口をはじめとした北河内地域においても、一人でも多くの方に自宅での訪問診療という選択肢を提供できればと考えています。

放射線科での経験が今の診療に生きている

先生の開業までの経歴をお聞かせください。

白成栽院長 たいようさんさん在宅クリニック3

2010年に大阪大学医学部を卒業して医師となり、その後市立豊中病院で初期研修を受けました。地域の救急対応の中核を担う病院だったので、近隣の診療所から来るさまざまな急性疾患の対応ができ非常に勉強になりました。初期研修後は、全身のがんの治療ができる放射線治療科に興味を持ち、国立大阪医療センターや大阪大学医学部附属病院などで働き、がんの治療に関わる基礎研究で医学博士を取得しました。

大学時代のご専門を教えていただけますか?

もともとの専門は放射線治療です。日本人の2人に1人ががんになるとされる時代だからこそ、がん治療を専門にしたいと思い、外科よりも切らずに治療ができる放射線科に魅力を感じました。ひとつの臓器ではなく、脳から頭頸部、肺、肝臓、膵臓、前立腺、子宮などに至るまですべてのがん治療に携われるというのも魅力でした。すべての科の治療に関わるので大学病院時代はいろいろな科のカンファレンスに参加するのが大変でしたが、その経験は今でも在宅医療でさまざまながんの患者さんの診療に生きています。

今までの経験が現在の診療に生かされていると感じる時はどんな時ですか?

白成栽院長 たいようさんさん在宅クリニック4

普通は全身のさまざまながんを同じ医師が診ることはありません。例えば、肺がんであれば呼吸器科の医師、頭のがんであれば脳神経外科の医師といったように専門の医師が診ることが通常です。しかし放射線科が対象とするがんは幅が広く、さまざまながんを横断的に診ることができるのは放射線科ならではの強みだと思います。さまざまな科のカンファレンスでたくさんの症例を診てきましたので、「このがんで、このステージで、こういった治療をしている」と聞くとある程度のイメージがつかめます。あと、がんの痛みを取れるのも放射線治療科の専門分野の一つだと思っています。そのあたりは放射線科での経験が今の在宅診療で患者さんを診る時にも生きているなと感じますね。

主治医制で患者との信頼関係を密に築く

ターミナルケアの在り方について、考えをお聞かせください。

白成栽院長 たいようさんさん在宅クリニック5

「いかに死ぬか」は「いかに生きるか」と同じくらい大切なことだと考えています。何より患者さんの思いを尊重したいので、前もって最期の時に自分がどんな治療を受けたいか、あるいは受けたくないかについてしっかり患者さん、ご家族の方と話し合うことをしています。医師は医学的根拠に基づいて一番良いと考える治療方針を提示しますが、これをただ一方的に押しつけるのではなく、あくまでも主体である患者さんの価値観とすり合わせていくことこそが在宅医療の現場で求められることだと感じています。病院では点滴などの延命治療を推奨することも多いですが、在宅では本人の延命治療の希望などについて、より慎重にその意思をくんでいくことが大切だと思います。

訪問診療のやりがいや、印象に残っている患者さんとのエピソードはありますか?

一番のやりがいは困っている患者さんのお役に立てるところですね。訪問診療に携わってから特に印象に残っているのは、末期がんの患者さんで腹水がパンパンにたまって苦しんでいた方がいたのですが、薬を飲むのを嫌がってどうしても飲んでくれないと夜に担当の薬剤師から電話があったんです。そこで私が直接患者さんに説明し、最後は自分自身で決断してもらうように交渉したところ、以後はちゃんと飲んでくれるようになりました。そこから痛みを緩和しながら穏やかな日々を過ごされ、最期は奥さまに「生まれ変わっても一緒になろうね」と感謝の言葉を述べられたそうです。看取りに伺った時はご家族全員がそろって号泣されていましたが、感謝の言葉があふれるとても良い最期だったと思います。末期がんの苦しさを緩和することで患者さんの心身に余裕が生まれ、結果的に感謝に満ちた最期をサポートできたことはたいへんやりがいを感じましたね。

先生のモットーと今後の展望を教えてください。

白成栽院長 たいようさんさん在宅クリニック6

モットーは常に最善を尽くし、後悔しないようにすることです。患者さんが貴重な最期の時間をどこでどのように過ごすのか、悔いのない選択ができるように引き続き全力でサポートしたいです。そのためにも訪問診療においては患者さんとの信頼関係の構築が非常に大切であると考えています。学生時代に訪問診療のアルバイトをしていた時、診る患者さんが固定ではなかったため、信頼関係を密に築くことが難しいなと感じていました。だからこそクリニック開業当時から主治医制にすることには強くこだわってきましたが、これからもこのスタンスは変えずに患者さんとのコミュニケーションを大切にしていきたいですね。今後も地域の患者さんに必要とされる医療を提供し、少しでも地域医療に貢献できるクリニックとして尽力していきたいと思います。

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