矢野 真人 理事長の独自取材記事
矢野矯正歯科クリニック
(渋谷区/渋谷駅)
最終更新日:2025/08/27

おしゃれな大人の男女が行き交う表参道。その青山通り沿いのビルの中に「矢野矯正歯科クリニック」はある。矢野真人理事長は、日本の矯正歯科の先駆者的存在だった父とともに、矯正専門の歯科医院を立ち上げ、長年にわたって地域に根差した診療を行ってきた。2023年には渋谷区内の繁華街から現在の場所に移転。さらに充実した診療の実現に向けて、スタッフとともに、気持ちも新たに診療に臨んでいる。渋谷区や東京都の歯科医師会の活動にも熱心に取り組み、矯正についての正しい知識の普及にも力を注いでいるという。そんな矯正のスペシャリストである矢野理事長に、矯正治療にかける思いを聞いた。
(取材日2024年1月23日)
2代、3代と世代を超えて患者が通う矯正歯科医院
1998年に開院とのことですが、前身はたいへん歴史のある歯科医院の分院だったそうですね。

もともと当院は、東京医科歯科大学の初代矯正科教授である高橋新次郎先生が開業した歯科医院の分院でした。高橋先生が創設された矯正歯科専門の歯科医院で、弟子として働いていたのが僕の父、矢野由人です。そしてその歯科医院を退職した父と僕の2人でスタートしたのがこの「矢野矯正歯科クリニック」になります。父は2020年に亡くなりましたが、新型コロナウイルス感染症が流行する前までは現役で、週に1回診療に来ていました。今でも父の代からの患者さんが、年に一度のチェックに通ってくださっていますし、そのお子さんやお孫さんなど2代目、3代目となる患者さんも来てくださっており、ありがたいことだと思っています。
新型コロナウイルス感染症の流行中は受診控えが問題になっていましたが、こちらはどうでしたか。
流行中はやはり歯科医院を避ける方が少なくありませんでした。一方でマスクが必須になり、「口元を隠せるうちに矯正を受けよう」とお考えになられた患者さんが多かった印象です。また矯正への関心が高まった分、患者さんの知識レベルも上がったように思います。当院では特に成人矯正の患者さんが増え、中には50代、60代の方もいらっしゃいました。大人の方の場合、骨と歯が矯正に耐えられるかの検査が必要ですが、それをクリアできれば年齢は関係ありませんので、ぜひ一度ご相談にいらしてください。流行が落ち着いてからは、もともと矯正に興味があったものの控えていたという方が、外出できるようになったことをきっかけに受診されるケースが増えたと感じています。丁寧な説明と患者さんに寄り添うことを重視した診療を提供していますので、頼りにしていただけましたら幸いです。
2023年に今の場所に移転されたそうですね。

以前は渋谷の繁華街の中にありましたが、入っていたビルが建て替えになり、移転することになりました。同じ渋谷区内で、患者さんが通いやすく、駅からなるべく近い所を探しているうちに、この場所が見つかったのです。青山学院大学や表参道が近い落ち着いた町並みで、前の場所とはかなり雰囲気も変わりました。そのことからより気軽に受診しやすくなったと、僕だけではなく患者さんにも感じていただけるようです。お子さんの矯正相談なども増え、心機一転、スタッフともども思いを新たに診療に取り組んでいます。
密な信頼関係を築き、足並みをそろえてゴールをめざす
治療の際に心がけていることは何ですか?

矯正は患者さんと長い時間をともに歩んでいくものです。患者さんと信頼関係を築きながら一緒にゴールをめざせるよう、コミュニケーションをしっかり取るようにしています。簡単に言えば、楽しく診察を終えて、楽しく帰っていただければいいなと。ですから治療が10分、おしゃべりが20分のようなときもあるかもしれません。また、矯正歯科の道に進んでからというもの、正しい矯正治療の普及に努めたい気持ちが根底にあります。僕の考えが絶対に正しいと言うつもりはありませんが、患者さんの不安を解消し、希望に最大限お応えできるよう新しい知識の吸収も欠かさないようにしています。
矯正法もいろいろあるそうですね。
めざすゴールは同じでも、スタート地点が違えば、そこにたどり着くまでの方法もさまざまです。歯科医師の経験値や患者さんのご希望、口腔内の状態や年齢など患者さんそれぞれの条件によってアプローチ方法が異なります。当院では矯正装置のバリエーションを豊富にご用意。目立ちにくい矯正装置が必要な方には、歯の裏側に装置をつける舌側矯正もご提案しています。矯正法も矯正装置も日進月歩ですから、精度の高い矯正を追求しています。診療ではまず患者さんのご希望を伺い、それにお応えできるよういくつかの矯正法をご提案し、患者さんに選んでいただくようにしています。各方法のメリット・デメリットのご説明と併せて、歯科医師としてここだけは譲れない点をお話しすることも。矯正は奥が深く、やはり専門の歯科医師のところで治療を受けることをお勧めしたいですね。
矯正歯科で歯科技工室があるのは珍しいのでは?

父の代から歯科技工士が常駐しています。初代の歯科技工士は経験豊富なエキスパートで、今の2代目の歯科技工士も、初代歯科技工士の弟子として指導を受けており、矯正専門の歯科技工士としてとても信頼しています。歯科技工士が常駐するメリットは、何か装置に問題が起きたとき、その場で修理してその場でお返しすることができる点です。普通は一度お預かりしてラボに外注し、患者さんには再度1週間後に来ていただくことが多いのですが、当院では出直す必要がないんです。さらに、午前中に診察して午後までに装置を作り上げることも可能で、他県など遠方からおいでの患者さんにもスピーディーな対応が可能です。スタッフといえば、当院は皆元気で明るいのが自慢なんですよ。長く勤めてくれているスタッフが多く、診療後に患者さんとスタッフで話が弾んでいるのは僕にとってもうれしいことです。
「歯並びを治したい」と思ったときが適齢期
矯正の分野で先駆者的存在だった父を持ち、プレッシャーもあったのでは?

学生時代はどこに行っても「矢野の息子だ」と言われ、悩んだこともあります。でもいつの頃からか、その立場をうまく使えばいいと前向きに考えるようになりました。父の指導は厳しかったです。でも誘導もうまくて(笑)。僕は子どもの頃から手先が器用で、プラモデルの大会で優勝したこともあり、それを生かせるようなフランス料理のシェフや特殊メイクの仕事にも興味がありました。そんな僕は父に、「歯科医師という仕事も向いていると思うよ」「嫌なら辞めればいいんだから、取りあえず歯学部に入ってみたら」と巧みに誘われたものです。入学後は補綴を専門にと考えていた時期もありましたが、矯正ができると補綴治療の幅が広がると知り、矯正の勉強を始めたら、奥の深さを実感して。東京医科歯科大学歯学部歯科矯正学科に入局しました。そこでも「矢野先生にはお世話になった」とよく声をかけられ、改めて父のしてきた仕事の重みを知りましたね。
お忙しい中、休日はどのように過ごされていますか?
船釣りにはまっていて、厳冬の中でも釣りを楽しんでいます。自分で作った疑似餌で大物が釣れた時は喜びもひとしおです。学生時代は剣道部で頑張っていましたが、あいにく自慢できるような成績はありません。得たものといえば「仲間」でしょうか。歯科医師になってからも歯科医師会や校医、商店街のイベントといった地域の交流で多くの方とのつながりを築けています。そうして出会った仲間やスタッフ、患者さん。僕は本当にすばらしい人々に恵まれていると思いますね。これからも皆さんと一緒に、楽しみながらゴールをめざしていきたいです。患者さんがお友達や恋人を紹介してくださるのもありがたく思っています。今後も父が教えてくれたように、患者さんが患者さんを呼んでくれる、地域に根差した歯科医院を続けていきたいです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

矯正は、気になった時がやり始めるタイミングだと思っています。「もう少し仕事が落ち着いてから」などと先送りにすると、結局機会を逃しがちです。僕は地域の歯科医師会でも活動していて、先日も「10020」、つまり100歳で20本歯が残っている方の表彰式に出席したのですが、お口に問題のない方は寿命が長いと統計にも出ています。きちんとした歯列と噛み合わせをキープすることは、食事がおいしく食べられるだけでなく、健康寿命の延伸も期待できます。興味をお持ちになったら、ぜひご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とは目立ちにくい装置を用いた矯正/93万5000円、舌側(裏側)矯正/154万円、小児矯正/38万5000円