松田 和之 院長の独自取材記事
まつだこどもクリニック
(伊勢市/五十鈴川駅)
最終更新日:2026/09/02
県道32号沿いにある「まつだこどもクリニック」は、木のぬくもりが感じられる落ち着いた雰囲気の小児科クリニックだ。感染症のある患者と予防接種や健診で来た患者で入り口から待合室、診察室までを完全に分離。それぞれに授乳室やキッズスペースも備え、親子が安心して過ごせる環境をめざした。院長の松田和之先生は、地域から尊敬を集める内科医の父の背中を見て医師を志し、子どもが好きだったことから全身を診られる小児科の道へ。勤務医として16年間、うち9年間をNICU(新生児集中治療室)での診療に捧げた日本小児科学会小児科専門医だ。「自分が育ててもらった場所で、弱い立場の子どもたちを守りたい」と2015年に開業。子どもの声なき声を拾い上げる丁寧な診療を行う松田院長に、歩みや診療への思い、今後の展望について聞いた。
(取材日2026年8月19日)
父と恩師の背中を追い、地元で子どもの未来を守る
まずは開業に至るまでの経緯をお聞かせください。

私の父は伊勢市で内科医をしていました。自宅と診療所が一体になった環境で育ちましたので、地域の方々から尊敬を集め、頼りにされている父の姿は幼い頃からよく目にしていました。その背中に憧れて医師を志し、医学部を卒業する際に小児科を選びました。全身を診ることができる科に進みたいという思いがあったことと、子どもが好きだったことが決め手です。勤務医として16年間働く中で、NICUには9年間携わり、重症の赤ちゃんや未熟児の治療に力を注ぎました。その経験を通じて、社会的にも肉体的にも弱い立場にある子どもたちの医療をより幅広く行いたいと考えるようになり、育ててもらった地元で今度は自分が弱い立場の人たちを守りたいという思いから、2015年に開業しました。
医師としての姿勢に影響を与えた方はいますか。
伊勢赤十字病院で2度にわたりご指導いただいた先生の存在がとても大きいですね。知識や技術はもちろん、新しいことも柔軟に取り入れながら、患者さんのためにいい医療をしようと努力を続ける姿勢を心から尊敬していました。特に印象に残っているのは、定年が近くなっても日直の前にけいれん対応のメモを見直し、医学書で新しい治療法を学んでいる姿です。ベテランになっても緊急対応への備えを怠らず、常に前線で走り続ける先生でした。私自身、教えていただいたことをできるだけ実践しようと心がけていますが、まだまだ及ばないと感じる場面も多いです。それでもその背中を追い続けることが、自分の診療を支える力になっていると思っています。
勤務医時代にはどのような診療をされていたのですか。

NICUでは、自分たちがしっかり治療することで子どもたちの未来につなげていけるというやりがいがありました。同時に力が及ばなければ将来に影響を残すこともあり、責任の重さを常に感じていました。大学病院では小児がんの全身管理や化学療法に携わり、小児循環器として心臓病の診療も経験しました。日本小児科学会小児科専門医としてさまざまな疾患を診てきた経験は、当院の診療でも確実に生きています。当院には小児がんの治療後の方や、肝移植など臓器移植を経た方、在宅で酸素を使いながら通う心臓病の方もいらっしゃいます。診療でできものなどを見つけた際に、重症の方や精密検査が必要だと疑われる方には、状況に応じて病院へ紹介することもあります。勤務医時代に幅広い疾患を診てきた積み重ねが、こうした判断を支えてくれていると感じます。
温かな空間で、子どもの「声なき声」に耳を傾ける
院内の雰囲気や来院される患者さんについて教えてください。

木のぬくもりにこだわった建物で、床は無垢材を使用し、床暖房を内蔵しています。子どもたちが「また来たい」と思えるような、病院らしくない温かみのある空間をめざしました。感染症の方と、予防接種や乳児健診などで受診される方とでは入り口から完全に分け、待合室・診察室・授乳室・キッズスペースもそれぞれに設けています。おもちゃが充実したキッズスペースでは、帰りたくないと泣いてしまう子もいるほどです。患者さんは0歳から中学生ぐらいまでが中心で、伊勢市の方が最も多いですが、玉城町や鳥羽、志摩、松阪、明和町、度会町などの近隣からも来院されます。伊勢神宮に近い小児科ということもあり、観光中のお子さんが受診されることもありますね。親御さんが風邪や花粉症でつらいという場合には、お子さんと一緒に診ることもできます。
お子さんの診療で心がけていることはありますか。
なるべく子どもの目線に立って、何に困っているのか、何を伝えたいのか、「声なき声」を拾い上げることを大切にしています。子どもは自分の不調をうまく言葉にできないことが多いですから、親御さんの話にしっかり耳を傾けるのはもちろん、NICUで培った観察の力も生かしています。診察室に入る前の泣き声や咳の音、表情や仕草を五感で感じ取れることもあるんですよ。もう一つ心がけているのは、まず子どものペースを受け止めること。好きなおもちゃを持ったまま診察を始めたり、キッズスペースから離れたがらない子にはおもちゃを一つ持ってきてもらったりと、その子に合わせた対応をしています。スタッフにも「明るく丁寧に」を日頃から伝えていますし、育児経験のあるスタッフが在籍しているのも心強いですね。
力を入れている診療について教えてください。

受診されるお子さんの大半は、発熱や風邪、胃腸症状といった感染症です。10年以上同じ地域で診療を続けてきた蓄積を日々アップデートしながら対応しています。加えて力を入れているのがアレルギーの分野で、食物アレルギーや喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎と幅広く診ています。喘息であれば飲み薬から始めて、ステロイドの吸入薬、さらにコントロールが難しい方にはステロイドと気管支拡張剤を合わせた吸入薬へと段階的に進めます。どんなタイミングで症状が出るかを丁寧に聞き取ることも大切にしています。アトピーは症状に応じて塗り薬の強さを調整し、保湿剤やかゆみ止めを組み合わせて対応しています。スギやダニに対する舌下免疫療法にも取り組んでおり、子どもの病気には何でも対応するという気持ちで日々の診療にあたっています。
子どもの成長を見守り、子育てのパートナーとして歩む
小児科医としてやりがいを感じるのはどんな時でしょうか。

NICUで一番大変な時期に関わった子どもたちの中に、開業してから当院に通ってくれている子がいるんです。元気に成長していく姿を親御さんと一緒に見届けられるのは、本当にうれしいことですね。開業から10年ほどたつと、当初から診ていた子の成長した姿にも出会います。最初は小さかった子が高校野球の四番バッターとして活躍していたり、かつて腹痛で通っていた子がお母さんになって自分の赤ちゃんを連れてきてくれたり。そうした姿を見届けるたびに、小児科医を続けてきてよかったと実感します。地域の方々が病院なのに遊び場のような感覚で楽しそうに何度も足を運んでくださるのもありがたいことで、めざしていたクリニックの形に少しずつ近づいているのかなと思っています。
今後、力を入れていきたいことはありますか。
子どものアレルギーは年々増えていますので、舌下免疫療法にさらに力を入れていきたいと考えています。スギやダニが原因のアレルギーに対して行う治療で、日常生活への影響を抑えることをめざしています。診療以外では、休診日に園医として保育園や幼稚園、学校医として小学校に関わったり、企業の保育所健診や看護学校での講義を担当したりもしています。地域の子どもたちの健康を幅広く支えていくことも大切にしたいですね。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

子育ては楽しいことですが、同時にとても大変なことでもあります。最近ではSNSで情報を集めて、かえって不安が募ってしまう方にもよく出会います。ただ、子ども一人ひとりはみんな違いますから、体や心のことで困ったらまず私たち小児科医に相談してほしいですね。当院では、朝学校に行けないという心の悩みや、緊張するとおなかが痛くなるといった相談にも対応しています。まずしっかりお話を聞いて、必要であれば何度か通っていただく中で一緒に考えるようにしています。赤ちゃんのピクピクした動きやミルクの量、吐き戻しが気になるといったご相談も多いですので、気になることがあれば気軽に受診してください。子育てを無事に成功させるパートナーとして一緒に支えていきますので、ぜひ頼っていただけたらと思います。

