岡本 美世子 院長の独自取材記事
岡本歯科医院
(狛江市/和泉多摩川駅)
最終更新日:2023/10/05
和泉多摩川駅から徒歩30秒、モダンな外観のビル2階にある「岡本歯科医院」は、1992年の開業以来、長年にわたり地域に貢献する歯科医院だ。院内には常に四季折々の生花が飾られており、待合室に置かれたポップな赤いソファーと相まってリラックスできる雰囲気。「神田で開業していた父の歯科医院には常に生花が飾られていました。当院の生花は父からのリレーです」と話すのは、明るい笑顔が印象的な岡本美世子院長。診察室には患者からのハンドメイド作品が飾られており、岡本院長と患者の温かな交流がうかがえる。気軽に足を運んでもらえる雰囲気づくりを心がけ、東京都立心身障害者口腔保健センターと連携し障害のある子どもたちの歯科診療にも取り組む岡本院長に、診療方針や注力する治療について話を聞いた。
(取材日2022年9月7日/更新日2023年8月31日)
口腔だけでなく全身の健康に関わるアドバイスを
まずは、歯科医院の概要や開業の経緯をお聞かせください。
一般歯科はもちろん、小児歯科、口腔外科、予防歯科など歯科全般に対応しています。患者さんの層は、小さなお子さんからご高齢の方までと幅広く、狛江市に加え、川崎市多摩区や東京都世田谷区、東京都調布市などからも来院されています。開業したのは1992年。父が開業していた神田の歯科医院で5年間勤めた後、育児と仕事を両立するために、自宅のある狛江で開業しました。子どもが小さかった頃は、実家が近かったので母にとてもお世話になりましたね。今は亡き母に感謝です。
歯科医院ではどのような診療に力を入れていらっしゃいますか?
歯科全般に対応していますが、中でも予防歯科には力を入れています。小さなお子さんには「できるだけむし歯にならないこと」、ご高齢の方には「できるだけ長く食べられるお口の状態を保つこと」をめざすようにとお話ししています。そのために診療の際には、一人ひとりの患者さんに毎日のケアの大切さを理解してもらえるよう努めています。口腔ケアの基本は歯磨きですので、当院ではお一人お一人に合わせて歯科衛生士が歯磨きの仕方をお話しします。まず、患者さんのお口の中を見て今の状態をチェックし、その後、歯科衛生士が患者さんの歯を実際に磨きます。きれいになったことを体感してもらい、患者さん自身に歯磨きの気持ち良さを感じてもらうようにしています。
さまざまなアドバイスをされるのですね。
以前は「自分の歯を残せるように頑張りましょう」とお伝えしていましたが、「人生100年時代」を迎えた今、90歳を超えてから抜歯せざるを得ない状況が生じることもあります。そのため、今は患者さんに対して「親知らずの抜歯などは元気なうちになさったほうがいいですよ」とアドバイスしています。また、健康で丈夫なお口の環境をつくるために、食習慣を見直すことや、やわらかい食べ物ばかりでなく噛み応えのある食べ物を取ることの大切さなどについてもお話ししています。さらに、舌を上手に動かせないと嚥下障害を引き起こす可能性もありますので、「あいうべ体操」など、お口の健康維持のための運動もお勧めしています。
最近、気になる傾向はありますか?
ずっとマスクをしていることに対する弊害を危惧しています。マスクをしていると、口元の表情を作らなくなり緊張感がなくなってポカンと口が開いてしまう方がいらっしゃいます。人間は基本的に鼻から呼吸をして空気を循環させることが望ましいのですが、マスクの着用期間が長くなり口で呼吸をするほうが楽になっているように思います。そのことによって、口が乾く、雑菌を取り込みやすくなってしまう、顎が安定しないなどの弊害が出てしまうことが考えられます。マスクをしていると気がつきにくいのですが、口元の機能が低下し、顎が痛くなる、噛む位置が左右にずれる、嚥下機能に支障を来すなども起こり得るので注意が必要です。鼻呼吸することで感染症の予防にもつながりますから、時々セルフチェックして、口が開いていたら鼻で呼吸することを意識してほしいです。
快適な院内環境と通いやすい雰囲気づくりに注力
診療の際どんなことを大切にされていますか?
父は常々、「患者さんの話をよく聞くように」と教えてくれました。今でもその言葉を心にとめ、患者さんの話をよく聞いて、わかりやすく説明し、ご納得いただける治療を施すように努めています。また、患者さんに気軽に足を運んでいただけるような温かな雰囲気づくりも心がけています。例えば、歯科を苦手とする方が不安を抱いていらっしゃるようなら、優しくお声をかけたり、治療以外の会話を交えたりするなど、患者さんがリラックスして治療に臨めるよう気を配っています。通院ペースなども、状況に応じて柔軟に対応するよう心がけています。また、それぞれの患者さんの情報をスタッフと共有するようにもしています。そうした情報をもとに率先して患者さんに温かく接してくれるスタッフたちには、とても感謝しています。
快適な院内環境づくりを重視されているようですね。
空気清浄機を備えるとともに、加湿器も設置しています。治療中はずっとお口を開けていなければならないことも多いため、空気が乾燥しているとお口の中がカラカラになってしまいます。暖房を使う冬の間は、特に院内の湿度に気を配っています。また、院内感染対策の一環として、細かい粉塵や飛沫などを吸い込む口腔外バキュームを導入しています。新型コロナウイルスの感染予防のため、入れ歯やかぶせ物を調整するときはもちろん、歯を削る際にも常時口腔外バキュームを使用するようになりました。
自閉症や発達障害のある子どもたちの診療についても教えていただけますか?
自閉症や発達障害の子どもたちの場合、削ったり詰めたりといった治療は専門の医療機関で行うことが多いのですが、口腔ケアやメンテナンスは、地域の歯科医院でも行うことができます。当院では、東京都立心身障害者口腔保健センターと連携しながら、そうした子どもたちの歯科診療にも対応。診療の際には、一連の治療の様子が描かれたカードを見せて、これからどんなことをするのかを子どもたちに理解してもらうよう心がけています。その絵カードは、小さなお子さんを治療する際にも活用させていただいています。
口の健康のため生涯にわたって途切れのない健診を
先生が歯科医師を志したのはなぜですか?
神田で歯科医院を開業していた父への憧れから、尊敬する父と同じ、歯科医師をめざすようになりました。大学卒業後は父の体調が思わしくなかったため、すぐに父の歯科医院に勤務。それから2ヵ月ほど一緒に働いていたのですが、私が歯科医師免許を取得したと同時に、父は入院してしまいました。末期の肺がんだったため、その後父が現場に戻ることはありませんでした。しかし、父が生涯をかけて大切に歯科医院を育ててくれたおかげで、父が亡くなった後も、たくさんの患者さんが継続して通ってくださいました。患者さんに対しても父に対しても、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。父の歯科医院では、常に生花を飾っており、週に1回お花屋さんが届けてくれていました。父の歯科医院にならい、当院でも待合室に常に生花を飾るようにしております。
今後の展望をお聞かせください。
新型コロナウイルスの流行が始まった頃、歯科医院は難しい状況に置かれました。当時は、歯科医師とは何だろう、この先どうしたら良いのだろうと考えることもありました。厚生労働省による新型コロナウイルスの位置づけが5類感染症になり、「3年ぶりに来ました」という方や、新型コロナウイルスに罹患したり濃厚接触者になってしまい来院できなくなった方も、また今まで通り来院してくださるようになりました。3年たっていろいろ形は変わりましたが、通常通りの治療を行うことができるようになっています。今後もいろいろな環境変化があると思いますが、その都度状況に合わせて対応できるよう準備していかなくてはいけないのだなと心から感じており、今後の方向性を模索中です。
読者へメッセージをお願いします。
お口の健康を保つためには、就寝前や食後の歯磨きを毎日の習慣にする自宅でのセルフケアに加えて、定期的に歯科健診を受けることも大切です。専門家に診てもらうことで、問題点が見つかることもあるからです。厚生労働省の方針として、歯科健診を後押しする流れになっていることは歯科医師としてはうれしいです。口は体への入り口、「家の玄関」のようなもの。お口の環境を整えれば、ウイルスなどへの感染リスクを減らすことにも役立つと思います。生涯にわたって途切れのない健診をお勧めします。