全国のドクター9,132人の想いを取材
クリニック・病院 161,254件の情報を掲載(2020年7月09日現在)

  1. TOP
  2. 京都府
  3. 京都市中京区
  4. 丸太町駅
  5. おかやま在宅クリニック
  6. 岡山 容子 院長

岡山 容子 院長の独自取材記事

おかやま在宅クリニック

(京都市中京区/丸太町駅)

最終更新日:2020/04/01

180188

京都市営地下鉄烏丸線の「丸太町」駅から徒歩約3分、両替町通竹屋町上ル東側のビル2階に「おかやま在宅クリニック」がある。訪問診療を専門とするクリニックで、看取りにも対応している。院長の岡山容子先生は学生時代に終末期医療の考え方に共鳴し、終末期の痛みを緩和すべく麻酔科を専攻。およそ15年間の病院勤務を経てクリニックを開業した。「治す」というより、そばで「力になりたい」「助けたい」という思いで患者に接するのが、岡山先生のポリシー。死を忌むべきものとして捉えず、患者と家族がしっかりと最後の時をともに過ごして、より良い最期を迎えられることをめざす。岡山先生に在宅医療、終末医療に注ぐ思いや診療におけるポリシーなどについて話を聞いた。
(取材日2018年12月4日)

終末期医療と出会い、自らが進む道を発見

大学では麻酔科を専攻されましたね。

20181221 1

終末期医療との出会いが麻酔科を選ぶきっかけになりました。当時、生物、人間の体の仕組みに興味があって医大に入ったものの、病気を治すということにあまり興味を持っていませんでした。ただ、治療の難しい病気を抱えた患者さんに対して、医師が何かケアするという意識が低く、入院されている患者さんがあまり幸せそうに見えないことに疑問を抱いていました。そんな時、終末期医療のことを知ったのです。たとえ治すことはできなくても、お亡くなりになるまで医療が患者さんを見放さないという考え方は、私にとって「これがやりたかった!」と思えるもので、終末期医療をめざすなら痛みを緩和する麻酔科がいいと思ったのです。

麻酔科には15年ほど在籍されました。

麻酔学は生理学の理論をそのまま臨床に応用したものです。生理学では、例えば、尿が出ないというときには、脱水のせいなのか、交感神経が興奮している影響なのかといった理由を考えます。診断が正解であれば問題はたちどころに解決しますが、不正解だとまったく解決できません。医療の場面では、週単位、日単位など長いスパンで物事を考えますが、秒、分単位ですぐに結果が出るところが生理学はすごくおもしろいですね。麻酔科を勉強すればするほど、その知識を麻酔の技術に生かせることも魅力で、長く母校の附属病院に勤めました。

どんな方がこちらのクリニックを利用されますか?

施設訪問も行っていますが、個人のお宅へお伺いすることが中心ですね。訪問の際は、体調のチェックや薬の処方、定期的な血液検査などを行います。麻酔科以外でも幅広い経験があり、ご自宅でのさまざま処置に対応できるので、頻繁に病院に通う手間を省くことも可能です。でも、私がすべて対応してしまうより、地域全体でサポートするほうが良い場合もあります。例えば、胃ろうカテーテルの交換を自宅でせず、病院にお願いすれば、介護しておられるご家族が一息つく時間をつくれます。

認知症がある場合、どの段階から訪問診療を検討すべきなのでしょう。

20181221 2

通院が困難になったら在宅医療を検討される時期だと思います。通院できる段階なのに、利便性だけを考えて在宅医療を利用されると、費用がかかって継続が難しくなることもあるのでお勧めできませんね。通院されながら月に一度、「見守り」という形で訪問させていただくことも可能ですので、お気軽にご相談いただければと思います。

最後の時を家族できちんと迎えられるようサポート

どのような思いで在宅医療、終末期医療に携わっておられますか。

3

医師として、「治したい」という意識ではなく、たとえ何もできなくても、その方のそばで「力になりたい」「助けたい」という意識を持っています。苦痛の緩和など医師として行うべき処置は行いますので、結果として「治したい」と考えている医師と同じ行動を取ることもあると思います。しかし、自分が何でもできるわけではない、自分は無力であるという考え方が基盤になっていて、行動を起こす際の気持ちのありようが違うと思います。もし、治したいという思いが強かったり、自分なりの死生観を持っていなかったりすると、この仕事をするのはとてもつらいと思います。

先生の死生観について教えてください。

命あるものは必ず寿命があります。だから、死は悪いもの、忌むべきものではありません。しかし、苦しんでいるのに放置されたり、存在を無視するかのような態度を取られたり、愛する人たちから引き離されたりするのは悲しいことです。事故や事件で亡くなるなど準備のできていない死、闘病期間が予想を遥かに超えて短くなった死などは、悲劇的にならざるを得ないと思いますが、そうでなければ死は決して悲劇ではありません。だからこそ、しっかりとお別れをするための準備のお手伝いをさせていただきますと、患者さんやご家族にいつもお話しします。家族に「大好きだったよ」「ありがとう」などと口に出しにくいし、「お別れみたいで嫌」と言われますが、やはり最期のお別れはやってくるのですから、きちんと思いを伝え合うことが大事です。こういうお話をすると「先生、お坊さんみたい」と言われます(笑)。

終末期医療での医師の役割について、先生の考えをお聞かせください。

痛みや苦痛を和らげる医療行為はもちろん必要ですが、それ以上に行くべき道に案内することが大事で、私は自分をエベレスト登山の案内人のような存在だと思っています。案内人なしで登ると危険で険しい山を、患者さんやご家族と一緒に登り、山頂からしか見ることのできない景色をともに見させていただきます。下山して無事に送り届けたら二度と会うことはないので、寂しくないですか、つらくないですかと聞かれたり、悲しいことを積み上げるお仕事ですねと言われたりします。でも、私にとってみれば、得難い経験を積み上げていく仕事で、寂しさや悲しさはありますが、それはむしろ温かいものです。

やはり自宅で最期を迎えるのが理想とお考えですか。

4

基本的にはご自宅での最期をめざしており、ご自宅の場合はお看取りをさせていただきます。しかし、一番大切なのはご本人とご家族の気持ちです。病院に行きたいとご希望の場合は、信頼できる病院にご紹介します。自宅にいたいけれどご家族に気を使っておられるという場合には、ご自宅で過ごせるようにさまざまなアイデアや情報を提供します。

原因のはっきりとしない症状にもきちんと向き合う

診療に漢方を取り入れておられますね。

5

私自身が鼻炎で悩んでおり、漢方薬を使ってみたことがきっかけです。現在は便秘症状のある方に対してよく漢方を処方しますね。西洋の便秘薬は腸を刺激するタイプが主流で、腹痛を伴ったり便秘を繰り返したりしやすいのですが、それと比べると漢方の便秘薬は効きが穏やかとされています。漢方の便秘薬の多くは精神的なイライラを鎮める作用も期待でき、便秘を訴える認知症の患者さんに処方することもあります。

便秘以外ではどんな時に漢方を処方されますか?

診断名がつかないと西洋薬は処方が難しいのですが、漢方は元気がないといった訴えにも対応できます。また、複数の不調を抱えておられる方にも適しています。こうした診断名がつきにくい訴えは「不定愁訴」と呼ばれますが、はっきりしない症状を不定愁訴と片づけてしまうのではなく、患者さんの訴えを一つ一つ丁寧に診ることが大事だと恩師に諭されたことがあります。不調を訴えているのにしっかり対応してもらえないというのは患者さんにとってとてもつらいことなので、明らかな診断がつかない場合も処方できる漢方を活用しています。

読者にアドバイスやメッセージをお願いします。

6

親御さんと離れて暮らしている方は、親御さんが弱られると「実家に戻らなくては」と思われます。その際に、細かいお世話をするために戻ろうとは考えないほうがいいと思います。日々のお世話はプロのヘルパーさんなどに任せて、費用面でサポートすることを優先するとともに、指揮官をめざしてください。指揮官なので常に現場にいる必要はありませんが、ケアマネジャーがプロとして良いと判断したプランが、ご本人やご家族に適しているとは限らないので、しっかりと舵取りをしてもらいたいと思います。遠く離れていると、この次会うまでに何かあったらと心配になると思いますが、別れがつらいという気持ちがあるのは、親御さんのことをしっかり覚えていられるということです。きちんとお別れができるということでもあるので、むしろ良いことと考えましょう。

Access