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岩崎 直哉 院長の独自取材記事

いわさき小児科

(宮崎市/宮崎神宮駅)

最終更新日:2022/01/05

岩崎直哉院長 いわさき小児科 main

宮崎神宮駅の正面にある「いわさき小児科」。大きなガラス窓から外光が入る明るく広い院内には、木製のテーブルや長椅子が置かれ、温かい雰囲気だ。院内の掲示物には、絵画が好きな岩崎直哉院長自らが描いたイラストが添えられている。岩崎院長は京都府立医科大学を卒業後、愛媛大学医学部附属病院・京都府立医科大学附属病院を経て「国境なき医師団」に参加した経歴を持つ小児科のドクター。子どもの利益を最優先に考えながら、保護者の心身の健康にも心を寄せ、できる限りのサポートを提供。予防医学に基づいたワクチン接種を推奨し、抗菌薬の乱用に警鐘を鳴らす。「最終手段として使用されるべき抗菌薬を最初に処方するのではなく、抗菌薬を適正に使用する必要があります」と話す岩崎院長に、診療スタンスや力を入れている分野など、たっぷり聞いた。

(取材日2021年11月10日)

小児科診療と海外渡航のための外来を行う医院

開業にあたってこの場所を選んだ理由、特徴などをお聞かせください。

岩崎直哉院長 いわさき小児科1

ここは当院が2015年に開業する前は別の小児科医院があり、私はそこで働いていたのですが、医院が移転することになったので建物を引き継いで新しい医院として開業しました。当院の特徴として、開業当初から小児科と渡航のための外来を設けています。仕事や留学といった事情から海外で暮らす人などを対象に、現地特有の病気に備えた予防接種などを行います。また、高校生や大学生が留学する際に必要な健康診断書や予防接種の履歴を英文で作成したり、海外旅行する人に対して旅先での健康管理や現地の状況をお伝えしたり、必要に応じて薬を処方したりします。

子どもの成長をサポートする人が少しでも楽になるよう心がけているそうですね。

私は小児科の医師ですから、お子さんの利益が一番なのですが、その子の成長をサポートしている方、それはお母さんであることが多いのですが、その方がつらい思いをしていたら、少しでも楽になるようにお手伝いしたいと思っています。「子育てにスマホを使ってはいけない」とよく言われますが、子育ては大変です。丸一日拘束されますし、どうしても子どもと離れて何か用事をしなければいけない状況で泣かれたら困る場合など、そういう道具を使って少しでもお母さんの手が空いたり、あるいは問題なくその状況を過ごせたりするのなら、動画を見せたり、音楽を聞かせたりするのは悪いことではありません。一日中好き放題に動画を見せるのはいけませんが、例えば、スマホの動画で子どもが早く寝つくのなら使ってもいいでしょう。子どもも早く寝たほうがいいし、お母さんも休めます。プラスに働く手段を全否定する必要はないとお伝えしたいですね。

とてもおおらかに感じられますが、なぜそのようなスタンスでいらっしゃるのでしょうか?

岩崎直哉院長 いわさき小児科2

おおらかに見えるかもしれませんが、譲れないことは絶対に譲れません。例えば、先ほどのスマホを排除しようという考えは合理的ではないですから受け入れることはできません。しかし、お母さんに対する「母乳で育てろ」「妊娠中や授乳期間は脂っこいものを食べるな」「離乳食は手作りしろ」といったプレッシャーがありますが、例えば、既製品の離乳食は、専門家たちが栄養価、栄養バランスなどを調べ尽くして作り上げたものだと思います。全食それにするというのではなく、お母さんの息抜きや手間を省くために使うのは悪いことではありません。

医療を通じた国際活動をめざし「国境なき医師団」へ

医師をめざすきっかけなどありましたらお聞かせください。

岩崎直哉院長 いわさき小児科3

家系に医療関係者もいませんでしたし、小さい時に大病を患って入院したなどの経験もありませんでしたので、正直に言うと、特に医師になる動機はありませんでした。子どもの頃はパイロット、その後は物理学の研究者になりたいと考えていたのですが、高校3年生の夏休みくらいに物理の世界に行く才能がないと思って医学部を選びました。医学部も入っても2年間の教養課程があって医学の学習があまりなかったため、その頃は「医師になる」という実感がなく、フランス語やラテン語などの語学や美術、哲学の授業が面白かったですね。

ご専門に小児科を選んだのはなぜですか?

未来ある子どもたちの病を治したいと思ったからです。子どもは治療への反応も早いです。みるみるうちに回復に向かうこともありますし、一時期病気で苦しんだ子でも、回復すると信じられないような成長を遂げることもあります。研修医時代に新生児医療も経験し、小児循環器の分野に進みました。こちらに開業して6年ほどですが、赤ちゃんの時から受診している子がもうすぐ小学生です。それを思うと、「育ってきているな」としみじみと感慨深いものがありますね。

「国境なき医師団」に参加されたご経験もあるのですね。

岩崎直哉院長 いわさき小児科4

医療を通じていろいろな活動をしてみたいと思っていました。大学3年生から本格的に医学を勉強し始めたのですが、医学を学び始めるととても面白く、ちょっとずつ世界が広がりはじめました。その過程で国際的な医療活動を行う団体があることを知り、「いつかは参加したい」と思っていたのですが、実際に行動に移せるようになったのは結構後になってからでしたね。2008年から1年間「国境なき医師団」に参加して3ヵ国をまわり、その後2014年にも1ヵ月間ナイジェリアに行きました。

子どもの健やかな成長には、保護者の健康も大切

力を入れている分野がありましたら教えてください。

岩崎直哉院長 いわさき小児科5

病気を予防するためのワクチン接種です。さまざまな種類がありますが、中でもHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を予防する目的の子宮頸がんワクチンに力を入れています。これは、2013年に定期接種に組み入れられて2ヵ月ほどで、副反応の報告をきっかけに国が積極的に勧奨しない姿勢を取りました。しかし、名古屋市の要請を受けて行われた大規模な疫学調査「名古屋スタディ」によると、一部の人たちが副作用と考えている「さまざまな症状」についてはワクチン接種・未接種間で出現の頻度に差異はないとの報告もありました。そのような調査結果などを受け、厚生労働省の専門家による検討部会も接種を勧める「積極的勧奨」を再開することを正式に承認し、接種再開へと向かっています。

その他に力を入れている分野はありますか?

さまざまな薬の適正使用もお伝えしたいのですが、まずは抗菌薬についてお話しします。細菌にはいろいろな種類がありますが、最近の抗菌薬は作用する対象が広がってきています。対象が幅広い抗菌薬を使用すると必要な菌にまで作用してしまうのが問題です。対象の広い抗菌薬は、汎用性という観点に立つと使いやすいのですが、そればかり使うと耐性が出てきて本当に必要な時に作用しないという事態が生じる可能性があります。抗菌薬はウイルスには効きませんから、いくら鼻水や咳、熱が出ていても、細菌感染だという確証がなければ抗菌薬は使わないようにしています。

今後の展望をお聞かせください。

岩崎直哉院長 いわさき小児科6

今後も、正しい知識を積み重ねた、その時点での最善の治療である標準治療を意識した診療を行っていきたいですね。例えば、風邪の鼻水に抗アレルギー剤を経験に頼った判断で誤って処方してしまった場合、本来は効かないうえに副作用を心配しなければなりません。また、咳の症状があるというだけで安易に気管支喘息の薬を処方するといったケースも考えられます。医師は経験だけに頼らず、各種ガイドラインを遵守すべきです。もちろん、ガイドラインがすべてではありませんが、それを踏まえた上で経験を生かしながら、一人ひとりに合わせた治療を行いたいと思っています。

最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

当院の最優先は子どもですが、子どもが健やかに育つためには保護者の力が大切です。ですから保護者の方の健康も重要なんです。お母さんは疲れすぎてはいけませんので、スマホや既製の食品を子育てに使うのも良いことです。周りの人は、妊娠中の食べ物を多く制限して母親を苦しめないでほしいですし、父親はもっと育児に参加してほしいですね。当院では、子どもだけでなく、家族も予防接種を受けることができます。2021年の6月から新型コロナウイルス感染症のワクチン接種も始めました。インフルエンザも同じですが、子どもがいる家庭そのものも守られるべきだと思っていますので、子どものためになることを幅広く取り入れていきたいと考えています。

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