末定 弘行 院長の独自取材記事
田無循環器クリニック
(西東京市/田無駅)
最終更新日:2025/07/11

「田無循環器クリニック」は、2016年7月に開院。心臓血管外科の医師であった末定弘行院長は、総合病院に長く勤務し、外科診療のみでなく内科も含めた循環器疾患全般に携わる傍ら、医師会活動でも地域医療に従事してきたベテランドクターだ。複数の研究会の幹事として症例検討を行うとともに、医療機関の連携にも尽力してきた。「専門は説明」というほど、患者の“病気への理解”にこだわり、診療時間はたっぷり確保している。西東京市循環器医会の会長として講演会の開催を企画し、高血圧・動脈硬化・心房細動・心不全など多くの人に関わる病気に対する診療現況を学び、ガイドラインを読み解き、「根拠に基づく医療」の実践をめざして時代に即した診療の普及に努める。そんな末定院長に、説明へのこだわりや診療方針など話を聞いた。
(取材日2025年6月9日)
「専門は説明」。何よりも”理解”を重視する
クリニックの特色を教えてください。

開業前は西東京中央総合病院の副院長を務め、東京都CCUネットワーク加盟施設として多くの循環器救急患者に対応してきました。退職までの5年間は毎日外来診察をする中で「担当していた患者さんたちの受け皿をつくりたい」と考え、定年後に当院を開業したという経緯があります。病院で行ってきたのと同じ診療を、という強い思いがあり、高血圧・動脈硬化・不整脈・心不全などの疾患が中心の循環器領域に特化した専門診療を行っています。また、循環器の疾患は医療機関にかかり続ける慢性疾患がほとんどであることから、ご自身の病気がどのようなものでどんな状態なのかをきちんと理解してもらうことが何より重要だと考えて、説明の時間を十分に確保するよう努めています。
「専門は説明」というほど、疾患への理解を重視されているそうですね。
例えば「高血圧症」と診断されて薬を処方されても、何のために高血圧を治療しているのかご存じの方はほとんどいらっしゃらないのが現実です。まずは治療の前に、高血圧がどのような状態で、放置しておくとどうなるのかを理解してからでないと、服薬治療も栄養指導も、その必要性がわからないはずです。当院では初回の説明は1時間程度かけ、検査の結果が出たときは再度ご説明の時間を設けます。繰り返し解説をしてしっかりと理解してもらいながら、慢性疾患の継続的な治療に取り組んでもらうことを第一としています。例えばよくメディアなどで話題になるコレステロールの“善玉”“悪玉”も、2種類だけが体に作用して健康に影響が出ているわけではなく、悪玉がなくなれば良いという単純な話でもないのです。こうした説明の際にはイラストなどの資料を用いながら、一つずつ詳細をお伝えすることで、どなたにもわかりやすい解説を心がけています。
私たちが勘違いしている「健康の常識」も多そうですね。

例えば、「上が140mmHg、下が90mmHg以上だと高血圧」とされていますが、これは“安静時”の血圧であることをご存じでしょうか。血圧は怒ったり、緊張したりしても上がるもの。高くなることは誰にでもあることなのに、140を超えたからといって、「あなたは高血圧なので薬を出します」というのはおかしなことなんです。しかし、ここを多くの方が誤解しているんですね。私が知りたいのは安静時の血圧です。よく起床時・就寝時に測りましょうといわれますが、これもその時間が安静の可能性が高いからであって、朝忙しくバタバタしている人なら、測るのに適した時間とはいえません。それを知っていれば、ご自身が本当にリラックスしている時間に、正しい血圧を測ることができるんです。
塩分摂取量を数値化し、わかりやすい栄養指導を
診療・説明の中で特にこだわっていることはありますか?

各疾患には毎年のように改正されるガイドラインが設けられており、そのガイドラインに即したかたちでご説明することを大切にしています。ただし、ガイドラインを通り一遍にお話ししても仕方がないので、そのガイドラインが何を言いたいのかを私なりに解釈してかみ砕き、患者さんにわかりやすくお伝えするようにしています。また、例えば高齢者に多い不整脈である心房細動の治療方法には、血栓の原因となる凝固因子の働きを抑えるために薬を投与する方法と、カテーテルアブレーションといって心房細動の原因になっている部位を焼き切る方法があるのですが、薬の種類によっても一長一短があります。その選び方も含め、患者さんやご家族にも丁寧に説明してご理解いただいた上で、治療方法を決めています。必要があれば疾患ごとに得意な病院にご紹介し、治療が終わったら再び入院加療が必要にならないよう当院で管理していきます。
栄養指導にも力を入れていらっしゃるとお聞きしました。
日本食はとても優れた食事である一方、塩分が高いのが特徴です。高血圧治療には塩分摂取量を控える必要がありますが、減塩効果は目に見えにくく、どのくらい減っているかはわからない人がほとんどではないでしょうか。当院では1年ほど前から尿で塩分摂取量がわかる検査を取り入れ、減塩への取り組みが数値でわかるよう環境を整え、「以前は1日15gでしたが9gに減りましたよ、頑張りましたね」と、説得力あるお声がけが可能となりました。最終目標が6gだとすれば、どうすればそこまで摂取量を減らせるのか、どこに気をつければ目標が達成できるのかは、当院の管理栄養士による栄養指導へとつなげています。栄養指導は「2回目以降は同じことしか言わないからもう受けたくない」との声も多かったのですが、こうして課題がわかった上で改善方法を提案できるため、「何をすればいいのかがわかった」という声が聞かれるようになりました。
説明に注力するために工夫されていることがあるそうですね。

当院では診察室を2室設け、1室を検査結果の説明や結果待ちの患者さんのために使用し、もう1室で別の患者さんの診察を進めていきます。電子カルテを導入し、私が患者さんとお話をする傍らで、メディカルクラークのスタッフが私の所見をカルテに打ち込んでいくスタイルを取っています。そうすることで患者さんとお話しする時間が長く取れ、診察に集中することができるわけです。専門的な診療に慣れたスタッフだからこそ、カルテ入力もスムーズに行うことができます。当院では検査を行うスタッフと私、2人体制で検査を行っています。私一人では限られた量の検査しか行えませんが、スタッフが担当してくれることで多くの検査が可能となりました。何か異常箇所が見つかった場合は私も検査に立ち会い、スタッフとともに画像を見ながら診断を行います。
「病気を知りたい」理解が深まるクリニックへ
こちらの医院は予約制だそうですね。

当院は新患・再診ともに完全予約制です。特に新たに受診される方には十分に時間を割いており、ご説明だけで1時間程度の時間を要すため、予約制としています。場合によっては初来院時に簡単な説明と検査を行い、詳細説明は次回来院時に行うことも。予約やお問い合わせは電話にて受けつけていますので、まずは気軽にご相談ください。なお当院はオールバリアフリー設計で段差がなく、車いすでの使用を考えて各部屋の入り口も広めに設計しているほか、トイレは感染防止も兼ねて、手を触れることなく開閉する自動ドアを採用しています。
今後の展望を教えてください。
これまで通院してくださっていた患者さんが高齢になり、中には通えなくなってしまった方もいらっしゃいます。そこで現在、金曜日・隔週月曜日の午後は患者さんのご自宅に伺う訪問診療も行っているのですが、その時間はクリニックでの外来診療は閉めている状態です。今後はそのような時間帯に外来診療に入ってもらい、現時点ではかかりつけの患者さん以外は受けつけていないインフルエンザや風邪といった感染症などの患者さんの診療をお任せできるパートナー医師を見つけることができたらと考えています。
地域の方にメッセージをお願いします。

近年、増えているのが医療介入が必要な不整脈の患者さんです。実際には狭心症や心不全との区別が必要ですが、「心配ないですよ」で済まされてしまっている患者さんも少なくないと感じています。そうした患者さんに疾患についてしっかりとご説明させていただくのはもちろん、必要があれば専門診療を行う大きな病院をご紹介しています。現在ご自身の病気で疑問に思うことや、医療機関の説明や対応に満足しておらず、もっと詳しく知りたいと思っている方がいらっしゃいましたら、ご理解・ご納得いただけるお話ができるよう努めたいと考えています。